転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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百十二話アウェイ

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宿屋の女将に商人ギルドの場所を聞いた二人は、寄り道をせずに真っ直ぐに向かった。

「ソウスケさん、作った娯楽は幾らぐらいで売るんですか?」

「そうだな・・・・・・原価は銅貨十枚ってところかな」

銅貨十枚・・・・・・日本円にすると千円になり、少し高いかとソウスケは思ったがこの世界の娯楽の無さを考えれば妥当だと考えた。

だが、どうやらソウスケが作りだした娯楽の道具の楽しさを考えると、銅貨十枚では全く足らないのではミレアナは感じた。

「銅貨十枚ですか? 私はもう少し値段が高くても良いと思いますけど。この・・・・・・オセロとチェスと言うボードゲームの面白さを考えれば、銀貨十枚ぐらいでも可笑しくはないですよ」

「う~~~~ん。確かに原価をそれぐらいにしても良いかもしれないけど、俺はどちらかと言えば出来るだけたくさんの人に楽しんで貰いたいんだよ。勿論金も欲しいけど、そっちにはそこまで執着はしてないんだよ。俺の本職は冒険者だからな」

自分が考えた値段にすると、定価がおそらく銀貨一枚かもしくは十枚なるだろうと考え、それぐらいの値段だと一般人でも多分手が届くと予想した。

「なるほど・・・・・・立派な考えですね」

「別に立派ってもんじゃなぇよ。さっき言った通り、金は必要だ」

ソウスケはミレアナに立派だと言われて照れながらも、自分の考えをミレアナに伝えた。目を逸らしながら。

「でも、それは冒険をする中で必要な金だ。俺はな、ただ毎日ぐーたらするだけの生活ってのは死んでるのと一緒じゃないかって思うんだよ。前の世界では娯楽が腐るほどあったからそんな生活に寧ろ憧れていたけどな。でも、大して娯楽が無い、前世程の楽しさを感じる娯楽を望めないこの世界で、毎日大した事もせず飯食って風呂入って寝るだけの生活なんて・・・・・・どこにも楽しさや、生きてる実感みたいなのが無いだろ」

ソウスケの説明を頭の中で想像したミレアナは直ぐにソウスケの考えが納得出来、何度も頷いていた。
ミレアナも何も刺激が無い、今自分が生きていると実感出来ない日々を延々と過ごすのは嫌だと確かに思った。

「だからそこまで働かなくても生きていける程、お金が欲しいとは思わないんだよ。だから、このボードゲームの値段も高くする必要もない」

自分の考えを言い切ったソウスケに対して、ミレアナはやっぱりソウスケさんは立派だと言おうと思ったが、先程自分の言葉でソウスケが照れているのが見ていたので、言わなかった。

そして二人が宿を出てから二十分後、ようやく二人は商人ギルドに到着した。

「さて、Fランクの昇格試験の時に絡んできたアホみたいな奴はいないと思うけど、あんまり俺から離れるなよ」

「はい、勿論です」

傍から見ればバカップルの様な会話だが、二人には全くその自覚がなかった。

商人ギルドの中に入った二人の目に映ったのは、昼間の冒険者ギルドと比べ人数が四倍ほどおり、あちらこちらで会話が飛び交っている光景だった。

「・・・・・・凄いな。昼間の冒険者ギルドの様子とは大違いだな」

「確かにそうですね。冒険者は基本的に勝負時は昼で場所は外、商人にとっては勝負時は常に。そして場所は中と言った所でしょう。そう考えればこの様子は必然じゃないのかと思います」

二人は周りを見渡しながらも受付に向かっていた。
周囲を珍しそうにキョロキョロと見ている二人は、冒険者を想像させる見た目もしていることもあり、周囲の商人達からは珍しい目で見られていた。

「すみません、ちょっと良いですか?」

「はい! えっと・・・・・・商人ギルドへの登録でよろしいでしょうか?」

ソウスケの服装からして商人に全く見えないため、受付の女性は戸惑いながら言葉を返した。
だが、ソウスケはとりあえず自分の名前と用件だけを女性に伝えた。

「いいえ。俺の名前はソウスケって言います。歓楽街にある娼館のオーナー、セルガ―さんから依頼された品を持ってきました。セルガ―さんからは品が出来たらまずは商人ギルドに来て、自分の名前を出せば話が通ると言っていたんですけど・・・・・・」

普通ならソウスケの説明にまずは頭の上にクエスチョンマークが浮かぶのだが、数日前に上司からとある説明を聞いていた受付の女性は直ぐに聞いた話と、目の前のソウスケの事がつながった。

「しょ、少々お待ちくださいませ!!!」

それだけ言うと女性は直ぐに目の前から消え、ある人物の部屋へと向かった。

新作の屑野郎が成り上がるのもありじゃないかもよろしくお願いします
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