転移したらダンジョンの下層だった

百九十一話一応真面目に

見張りの交代時間となり、ミレアナを起こした後ソウスケは直ぐに寝間着に着替えてベットにダイブした。

「あぁ～～～～・・・・・・超疲れた。これが後数日続くのか・・・・・・出来るだけ早く何かしらモンスターをテイムして従魔にするか、魔石や鉱石にモンスターの素材を使ってアルスターを造るかしないと辛いな」

ブラック企業に勤めて二日や三日の徹夜はざらだという経験が無いソウスケにとって、やはり野営の見張りは普通に辛いと感じた。

しかしその代わりに一気に睡魔が押し寄せて来るため、ソウスケは三十秒と掛からずに意識を落とした。


そして二日目、見張りを交代して朝まで起きていた者達は荷台の中で仮眠を取り、深夜から朝まで寝ていたソウスケは周囲を警戒しながらランカースと商品を護衛していた。

(見張りと一緒で荷台から降りて護衛をするのもつまらないな。いや、護衛依頼なんだからランカースさんと商品を守るのが主な仕事ってのは分かってるんだけど、ただ歩くだけってのはなぁ・・・・・・景色は森ばっかりで味気ないし)

見張りの時の様に短剣をジャグリングするなどして退屈凌ぎにしようかと考えたが、仕事中にそれは良くないなと思ったソウスケは一応真面目に護衛をしている。

(しっかり周囲を警戒していても、商人の人にそこら辺は分からないだろうからな。ギルドにこいつは真面目に仕事をしていない、やる気を感じられないみたいな報告書を出されたら困る。別に頑張ってランクを上げたいって訳じゃ無いんだけど、ギルドからの評価が悪いってのはそれはそれで嫌だしな)

いざという時にギルドからの信頼が重要という場面もあるかもしれないと考えたソウスケは、なるべく真面目に頑張って見えるように護衛の仕事を行う。

(でも、正直護衛の依頼はランク昇格試験の試験内容の時や、報酬が俺やミレアナの望む物だった場合。後は・・・・・・強制ミッション的な感じ時以外は受けないと決めよう。中々に息苦しい)

ソウスケ達だけならば休憩しながらある程度の速度で進む事が出来、食事は熱々の料理を食べる事が出来る。
そのため自らの利点を縛って行動しなければならない護衛依頼は極力避けたいのがソウスケの本音だった。

「退屈、って顔をしてるわね」

リーナからほっぺに指を突きつけられ、図星だったソウスケは苦笑いになってしまう。

「まぁ、なんという・・・・・・確かにそうですね。何もない事が護衛の最中にとって一番良い事だとは分かっているんですけど、景色も変わらず味気ないんで少し気が緩んでますね」

「その気持ちは分からなくないわ。初めて護衛依頼を受けた冒険者は大抵そう感じてしまうものなのよ。だからソウスケ君がそう思ってしまうのは良い事ではないけれど、仕方ない事よ」

口では仕方ない事だといっているが、リーナはソウスケがようやく新人という枠から抜け出した冒険者とはレベルが違うと分かっており、特に心配はしていなかった。

(昇格試験の時、それとゴブリンとグレーウルフを倒した時の戦いぶりから実力はルーキーの枠を完全に超えている。正確には分からないけど、ベテラン並みの実力はありそうね。それはミレアナさんにも言える事ね)

ソウスケとミレアナの二人はこの先壁にぶつかる事は当分ないだろうとリーナは二人の実力から判断した。
それが良いのか悪いのかリーナには分からない。

「ソウスケ君はあまり目立ちたくないけど、戦うのは好きなの？」

「えっと・・・・・・戦いがと言うより、冒険するのが好きって感じだと思います」

ソウスケの答えを聞いたリーナは目を丸くして驚くも、純粋で良いなと思い優しい笑みを浮かべる。

(羨ましいわね。冒険者は冒険をしてはならないと新人の頃によく言われたけど、二人には全く不要な言葉みたいね)