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二百七十話奇手二連発
しおりを挟む「敵は七体ですか・・・・・・特に問題はありませんね」
手足が異常に長いフォレストモンキー達は普段、敵をおちょくりながら戦う事が多い。
その戦闘スタイルはバスケットのストリートプレイを思わせるものであり、冷静さを保てない冒険者やモンスターは直ぐに彼らの挑発に乗ってしまい、痛い目を見る。
だが、そんなお調子者のフォレストモンキーの上位種達の眼が一切笑っていない。
挑発する様な態度もなく、笑い声も無い。
完全にミレアナを倒すべき敵だと見定めている。
「バカでは無いようですね。ですが、関係ありません」
既に何時でも放てる状態にしてあった風の矢が放たれる。
風の矢は明確に誰かを狙ってはおらず、それを感じ取ったフォレストモンキーの上位種は疑問に思いながらも二次災害を受けない様に避けようとする。
しかしミレアナが放った風の矢は只の矢では無く、敵が攻撃を避けようとした瞬間に弾けて小さな矢へと姿を変えて七体のフォレストモンキーの上位種に襲い掛かった。
手傷を負いながらも矢を弾く者、矢の速度より反射神経が勝り回避に成功する者、ダメージ覚悟で矢をガードする者。いずれもその一撃で勝負が着く事は無かった。
だがそれでも矢を避け切る事が出来ず、目や横っ腹に太ももなどに突き刺ささってしまった個体もいた。
「「「「ウキャアアアアアアアッ!!!!!」」」」
仲間がやられた事に怒りを抱き・・・・・・と言う訳では無く、何時もの狩りの気分を消す為に声を上げた。
両手には木の槍が握られている。
長い腕を精一杯使っての投擲、それが四本。もう四本とミレアナに襲い掛かる。
ソウスケが上層で行ってた投擲よりも速く、貫通力が高い。
「当たれば無事では済みませんね」
自身の防御力では当たれば傷を負ってしまう。
そういいながらもミレアナは表情を崩さず八本の槍を冷静に躱してもう一度風の矢を放つ。
しかし放たれた矢は先程の矢よりも遅く、例え弾けても自分達に被害は及ばない方向に放たれている。
「曲がれ」
一言、ミレアナは放った矢に命令する。
指示を受けた風の矢は弧を描き、急加速する。
的外れな方向に放たれた矢に意識を奪われていたフォレストモンキーの上位種はその不意打ちを貰ってしまう。
二体の上位種が体に風穴を空けられてリタイア。
しかし多数の者が風の矢に注意を引かれている瞬間を見逃さず、ミレアナは腰から短剣を抜いてまずは一体を刺殺し、引き抜いてから今度は風で加速させての投擲で喉に刃を貫通させる。
この時点で四体のフォレストモンキーの上位種がリタイア。残るは後三体。
だが残りはミレアナの矢によって怪我を負った三体であった。
普通に考えれば逃亡を考えても可笑しくは無い状況。
だがこの短時間で作戦を考えた三体は意を決してミレアナに挑む。
「ウッ、キャアアア――――ッ!!!!」
一体の上位種が姿勢を低くしながらミレアナへ突っ走る。
弓に矢を装填させて放つには時間が足りないと判断したミレアナは矢を背中に背負って接近戦に乗る。
長い手足による攻撃を躱しながらミレアナはアクセルウィンドを発動させ、一気にスピードあげる。
攻撃のリーチはフォレストモンキーの上位種が上だが、それでも相手より早く動けなければ意味を為さない。
「はッ!!!」
気合いを入れての一蹴、アクセルウィンドの効果も相まって上位種の自慢の腕を切断。
しかしその攻撃に表情を歪めるも、攻撃を一切途切れさせずに続ける。
(私を倒す為にただただ必死。それともグラップラーフォレストコングの脅迫を受け、それを達成させるための焦燥・・・・・・いえ、どちらも違う気がします。何か考えがあっての形相でしょうか?)
これ以上は目の前の上位種に構う必要はないと思ったミレアナは一瞬だけギアを上げ、回し蹴りでフォレストモンキーの上位種の首蹴り斬る。
「・・・・・・それはちょっと大きいですね」
首を蹴りで切断した上位種が力なく倒れ込む後ろには二体の上位種が全魔力を込めた木の大玉が生み出されていた。
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