転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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四百十九話 迂闊に手が出せない

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「ガルルルルァアアアア!!!!!」

「シッ!!!!」

コボルトファイターは吼えながら駆け出し、グランは冷静な表情のまま突っ込む。

「……」

「何かしようと思ってるのなら、止めとけよ」

後方で待機しているコボルトメイジ。
後衛である役目を果たそうと攻撃魔法を唱えようとするが、それをソウスケが短剣による投擲で牽制。

その一撃だけで自分が詠唱を完成させるのは無理だと悟らせる。

「今、コボルトファイターはグランにとって丁度良い相手なんだからよ」

パワーは今一つ足りない相手ではあるが、素早さだけで言えばオークよりも上であるコボルトファイター。
そんなコボルトファイターに対してグランは上手くヒット&ウェイを決めている。

「人に比べれば、やっぱり攻撃が大雑把だな」

「グッ、グルルルルッ!!!!」

グランとしてはコボルトファイターの事を馬鹿にしたつもりは無く、冷静に分析しただけ。
しかしコボルトファイターは馬鹿にされと思ったのか、後先の事を考えずに動き回る。

それだけ動けばいくらモンスターと言えどスタミナが底に着くのではと思えるほどの連撃を放つ。

「慌てずに攻撃をみてろよ。頭を使って戦う様なタイプじゃ無いんだ」

「分かりました!!」

ソウスケの言葉こそコボルトファイターを馬鹿にしているのだが、既にグランへと標的を完全にロックオンしており、全く耳には入っておらず攻撃を続ける。

拳に蹴りに爪による斬撃に咬みつき。
それらの攻撃を全て躱し、防御しながらカウンターを決めるグラン。

その様子を歯ぎしりしながら見続けるコボルトメイジだが、自分が魔法の詠唱を唱えようとした瞬間に頭が弾け飛ぶイメージが浮かび上がる。

(コボルトファイターの方は勇敢にもグランに挑み続けているけど、コボルトメイジの方は意外と冷静みたいだな)

意外にも冷静。コボルトメイジが無茶をしない理由の一つではある。
しかしコボルトメイジは単に冷静なだけでは無く、勘が鋭かった。

ソウスケが腰に帯剣しているグラディウス、それから自分達の上位種であろう同族の気配を感じ取った。

「ふんッ!!!」

「グバッ!!?? ガ、ァ・・・・・・」

「よし、そんじゃこっちも終わらせるか」

グランがコボルトファイターを倒し終えた事を確認したソウスケは直ぐに持っていた短剣を投擲した。
仲間であるコボルトファイターが殺されたことに気を取られていたコボルトメイジはそれに反応することが出来ず、あっけなくその頭を貫かれた。

コボルトの牙や爪を回収した後、日が暮れるまで森の中を散策し続け、モンスターを倒し続けた。
遭遇したモンスターの中にはグランが相手にするには厳しい相手もいたのでソウスケが倒すこともあったが、基本的にはグラン一人でか、ソウスケのサポート有で戦い続けた。

今日一日で一週間分ほどのモンスターと戦い続けたグランのレベルは元より三も上がっており、一日中動き回って戦い続けたグランだが不思議と疲れは殆ど無かった。

そして日も暮れた頃、流石にこれ以上は良く無いだろうと思い、二人は街へと戻る。

「ソウスケさん、今日は本当にありがとうございました。色々と教えて貰ったうえに沢山の道具まで」

「いいっていいって、別に手に入れるのに金が掛かった訳でも無し、情報に関してもまだ冒険者になって一年も経ってない物だからな」

確かにソウスケは冒険者として活動を始めてから一年も経っておらず、グランの方が冒険者歴は長い。
だが、冒険による経験値に関してはソウスケの方が圧倒的に高いので、グランとしては為になる話ばかりだった。

そして街に辿り着いてからお互いの宿に戻るので別れるのだが、二人は思ったよりも早く再開する事になる。
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