転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
441 / 1,259

四百四十話 とりあえず似合わない

しおりを挟む
全てのゴブリンを倒し終えた瞬間、安堵では無く更なる恐怖が襲い掛かって来た。

「な、あ、あぁあああ……な、なんなんだよ、あれ」

Eランク冒険者のうちの一人が恐怖のあまり地面に尻をつき、戦意喪失してしまう。
しかしそれは無理もなく、殆どの者達がもう自分達は助からないと本能的に思ってしまった。

「おい、おいおいおい、なんだよあれは」

現れた三体のゴブリンに対して恐怖こそ抱いていないが、それでも全く見た事が無い三体に驚きが隠せないソウスケ。

「二人共あんなゴブリン見た事あるか?」

「……一体はおそらくゴブリンウィザードだと思われます」

「ゴブリンウィザード、つまりゴブリンメイジより魔法に特化した存在って事か」

「そういう事になりますね」

ソウスケが鑑定で調べると、ミレアナの言った通り一体の名はゴブリンウィザード。
スキルを確認すると死体として転がっているゴブリンメイジと比べて優秀な魔法スキルを有している。

(ゴブリンメイジって確かEかDランクだよな。あれって絶対にBランクに近い実力だと思うんだが)

ソウスケの予想は正しく、ゴブリンウィザードはBランクに位置づけられるモンスター。
ただ、Bランクの枠組みの中でも実力が下の中といったところ。
しかしそれでもBランクのモンスターであることに変わりは無く、ソウスケ達三人を除く面子では到底立ち向かえない実力を持っている。

「……ザハーク、左のゴブリンはプログラップラーって奴らしいぞ」

「プログラップラー……つまりは接近戦が得意という事か?」

「そういう事だな。オーク程度ならあっさりと殺せそうだ」

三体の中でも一番大きく筋肉が発達しているゴブリンプログラップラー。
その体はオークに迫る程大きいが、オークの様にデブという訳では無い。

この個体もBランクであり、レアレス達が敵う可能性はゼロ。
殺すのに対して時間も掛からない程の力と速さを持つ。

「そして最後が……正直なんでだよって思うんだが、ゴブリン……パラディン。って名前だ」

「ぱ、パラディン……ですか? それは人族が優秀な騎士に与える聖騎士と言う名と同じでは」

「だろうな。でも、スキルに聖剣術まであるんだ。それにご丁寧に鎧を身に付けて長剣と盾まで持ってる。あれは完全に聖騎士と言えるスタイルだろ」

失礼かもしれないが、顔面だけを見れば全く聖騎士には見えない。
暗黒騎士の方がまだそう見えるかもしれない。

だが、ソウスケの鑑定結果通り、ゴブリンパラディンは限られた者のみが得られる聖剣術のスキルを有している。

(ゴブリンが聖騎士って……騎士ってだけでも色々とおかしいのに、聖騎士って……駄目だ、ちょっと笑ってしまう)

あまりにも合わない組み合わせにソウスケは必死に笑いを堪える。

「はぁ~~~~、マジで本当に似合って無いな。でも、俺らが戦う相手としては十分か。レアレスさん、アーガス達の事をお願いしま……あのアホが」

レアレス達、Dランク組にアーガス達の面倒を任せようと思い、声を掛けようとしたソウスケ。
だが、その前にまだまだルーキーの域を抜けていないアーガスがその場から声を上げて駆け出した。

「うおおおおおおおおおおおッ!!!!!!」

身体強化のスキルを使用し、全速力で三体のゴブリンに突撃。
その無謀過ぎる突貫にレアレス達三人は絶対にアーガスは死ぬと思った。

それはグランも、他のEランクの冒険者達も同じ事を思った。

そしてソウスケ達ですからあいつは絶対に終わったと思っていたが……だが、元々ゴブリン達の標的がアーガスでは無かったからか、軽く蹴飛ばされるだけで終わった。

「グボぁッ!!!???」

しかし軽くとはいえ、Bランクのモンスターの蹴りを受けてEランクの冒険者が無事な訳が無く、アーガスは後方へ大きく吹き飛ばされ、木に背中が激突する。

そして吐しゃ物まき散らしながら転がる。

「運の良い奴だな。レアレスさん、ちょっと言い換える。もう一回ああいう馬鹿な事が起こらない様に見張っといてください」

「あ、あぁ。分かった。済まないが、頼む」

「任せてください。グランもお前も下がっていてくれ」

「……分かりました。気を付けてください」

「おう」

レアレス達の後退が終わると、ようやく三体のゴブリン達がソウスケ達に向かって歩みだした。

「そんじゃ、俺がパラディンでザハークがプログラップラー、ミレアナがウィザードで良いか?」

「あぁ、それで構わない」

「私もです」

こうして三体のゴブリンとソウスケ達の戦いが始まった。
しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

虹色のプレゼントボックス

紀道侑
ファンタジー
安田君26歳が自宅でカップ麺を食ってたら部屋ごと異世界に飛ばされるお話です。 安田君はおかしな思考回路の持ち主でわけのわからないことばっかりやります。 わけのわからない彼は異世界に転移してからわけのわからないチート能力を獲得します。 余計わけのわからない人物に進化します。 作中で起きた事件の真相に迫るのが早いです。 本当に尋常じゃないほど早いです。 残念ながらハーレムは無いです。 全年齢対象で男女問わず気軽に読めるゆるいゆる~いストーリーになっていると思いますので、お気軽にお読みください。 未公開含めて30話分くらいあったのですが、全部行間がおかしくなっていたので、再アップしています。 行間おかしくなっていることに朝の4時に気づいて右往左往して泣く泣く作品を削除しました。 なかなかに最悪な気分になりました。 お気に入りしてくださった方、申し訳ありません。 というかしょっちゅう二行も三行も行間が空いてる小説をよくお気に入りしてくださいましたね。 お気に入りしてくださった方々には幸せになってほしいです。

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」 勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、 ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。 追放すらできない規約のせいで、 “事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。 だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。 《超記録》―― 敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。 生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。 努力で《成長》スキルを獲得し、 記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。 やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。 対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、 記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。 一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。 さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。 街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。 優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。 捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。 爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

処理中です...