転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
461 / 1,259

四百三十話 様々な客

しおりを挟む
「まぁ……知ってる人は知ってるかもしれないってレベルですよ」

ソウスケの言葉は間違っておらず、仲間であるミレアナとザハークの姿を見れば一目で覚えるが、ソウスケ達のパーティーはギルドの依頼をそこまで受けているわけでは無いので名がそこまで広まる実績が無い。

「この店にはやっぱりそこそこ有名な人が来ますか?」

「そうねぇ~~、それなりにこの街では有名な人が来るわね。太っ腹な人もいればちょっと心配になるような人もいるし」

「心配な人とはどんな人ですか?」

なんとなくは解るが、それでも興味があるので生の嬢から聞いてみたいという気持ちが強い。

「まずはそんなのお酒が強く無いのにたくさん頼んで飲んでしまう人ね」

「それは……でも、ミリウスさん達からすれば良いお客さんでじゃないんですか?」

金払いが良い客は基本的に嬢にとっても店側にとっても嬉しい。
ただ、最終的に潰れてしまう客は少々厄介なのだ。

「そうね、たくさんお酒を頼んでくれるのは確かに嬉しいわ。でも、お酒がそんなに強く無い人がたくさん呑んだらどうなるかしら?」

「酔っぱらって暴れるか……もしくはそのまま酔い潰れるかのどちらかですかね」

「大抵はそうなってしまうの。酔い潰れてしまうならまだ良いのだけど……暴れられると本当に面倒なのよ。だって、このお店のボーイ達はそれなりに強いけど、それでも敵わない人の方が多いじゃない」

「……そう、かもしれませんね」

実際に鑑定を使って調べた訳では無いが、それでもボーイ達の強さは中級レベルには及ばない。
この店に冒険者として有名な者がやって来るならば、ボーイ達だけで対処するのは難しい。

(そもそもそんな事をすれば出禁になると思うんだが……そこら辺はそう出来ない事情があるのか? いや、もしかいて出禁は出来るけど初めてやって来た相手だとどういう性格なのか分からないし、そこら辺を見抜いて事前に防ぐのは無理か)

ソウスケの考えは全く間違ってはいないが、そういった被害に合うのは最初の一店舗のみ。
その一店舗で問題を起こせば即座に歓楽街中にその者の名と特徴が広がる。

「それと、ソウスケ君みたいにまだ幼い子供がこういった店に来るのもちょっと心配ね」

「自分と同じぐらいというと……貴族の子息ってことですか」

「そうよ。基本的にソウスケ君と同じぐらいの歳の子で来るのは貴族の子息か……もしくは大きい商会の子供ぐらいね」

「なるほど。確かにそういった人達しか来れなさそうですね。あれ、でも……普通に考えてそんな人達が歓楽街に来ることじたい、ちょっと危なく無いですか?」

「そこは護衛の人達が付いて来てるから問題無いわ。その子が酔い潰れても護衛の人達が持って帰ってくれるし」

こういった店にやって来る子供は当たり前だがまだまだアルコールに耐性が無く、遺伝的に強く無ければ潰れる事が多い。
ただ、やっぱり貴族や商会の子供ということだけあって金払いは良いので、嬢達にとっては有難い客である。

「でも、その子達にはこれからまだまだ楽しい人生が待っている筈なのよ。人によっては大丈夫だけど、ハマってしまって抜け出せなくなる子もいるのよ」

「それは何と言いますか……お気の毒ですね」

「まっ、その場合は親に無理やり更生させられるか、追い出されるらしいのだけどね」

(そ、それはそれでお気の毒というか、ご愁傷様だな)

年齢が低ければ低い程、女性とのコミュニケーションが少なければ少ないほど、男はこういったお店にハマってしまう。

「それで一番心配というか……これは厄介なお客さんね」

「厄介なお客さん……それはそれで興味ありますね」

ミリウスの表情からしてただ厄介な客では無いという事を察し、それがどんな客なのか更に興味が湧く。

「それはねぇ……私達に本気で恋をしてしまう人よ」

「えっと……それは、悪い事なんですか?」

この世界には確かに身分の差によって叶わない恋がある。
ただ、嬢と貴族の子息や商人の息子が嬢に恋するのが悪いとソウスケは思わなかった。

「諦めてくれるのなら問題無いのよ。ただ……向こうが本気で恋していると、色々と面倒なのよ。少しの間恋人でいるぐらいなら大丈夫だけど、結婚するのは基本的に無理なのよ」

「結婚……な、なるほど。それは流石にハードルが高いですね」

無理な理由にソウスケは完全に納得出来た。

(貴族の子息や商会の息子が嬢と結婚……商会の息子はまだ可能性がありそうだけど、貴族の子息はどう考えても無理だろうな)
しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

虹色のプレゼントボックス

紀道侑
ファンタジー
安田君26歳が自宅でカップ麺を食ってたら部屋ごと異世界に飛ばされるお話です。 安田君はおかしな思考回路の持ち主でわけのわからないことばっかりやります。 わけのわからない彼は異世界に転移してからわけのわからないチート能力を獲得します。 余計わけのわからない人物に進化します。 作中で起きた事件の真相に迫るのが早いです。 本当に尋常じゃないほど早いです。 残念ながらハーレムは無いです。 全年齢対象で男女問わず気軽に読めるゆるいゆる~いストーリーになっていると思いますので、お気軽にお読みください。 未公開含めて30話分くらいあったのですが、全部行間がおかしくなっていたので、再アップしています。 行間おかしくなっていることに朝の4時に気づいて右往左往して泣く泣く作品を削除しました。 なかなかに最悪な気分になりました。 お気に入りしてくださった方、申し訳ありません。 というかしょっちゅう二行も三行も行間が空いてる小説をよくお気に入りしてくださいましたね。 お気に入りしてくださった方々には幸せになってほしいです。

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」 勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、 ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。 追放すらできない規約のせいで、 “事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。 だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。 《超記録》―― 敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。 生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。 努力で《成長》スキルを獲得し、 記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。 やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。 対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、 記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。 一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。 さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。 街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。 優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。 捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。 爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

処理中です...