転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
544 / 1,259

五百二十三話 実戦で使う時間を増やそう

しおりを挟む
毒液や粘着性の糸を使って相手を弱らせ、獲物を喰らおうとするポイズンスパイダー。
そしてその群れには長であるクイーンポイズンスパイダーがおり、統率のスキルでポイズンスパイダーたちの身体能力が上昇。

決して肉体派ではない蜘蛛系のモンスターだが、素早く動けるというのはそれだけで厄介だ。

「ほぉ……意外と速く動きますね」

初手の弓を外したミレアナはその速さに少々驚いたが、直ぐに弓の速度を調整して的確に捉え始める。
正確に急所を穿ち、一射一射でポイズンスパイダーを仕留めていく。

「ふむ、やはり弓はどれほど訓練してもミレアナには敵いそうにないな」

水弾を空中に浮かべ、ポイズンスパイダーを一撃ではなく……脚を止めてから手に持つ水球で仕留めるという方法を繰り返している。

ザハークの得意分野は接近戦での殴り合い。
あまり遠距離攻撃は得意ではないが、それでも搦手が得意な相手と戦う時になるべく慣れておこうと水弾や水球を使って急所を狙い撃つ。

(良いペースで仕留められている……だが、昆虫系だからか、急所を貫いた後も動くな。まぁ、俺達にとっては特に問題無いが……初めて戦うルーキーなどは油断してやられそうだな)

昆虫系のモンスターはかなりしぶとく、例え脳を潰されても少し時間であれば動ける。

そういった知識を持っていない者はルーキーやベテランなど関係無しに、手痛い一撃を食らってしまう。

「水の魔力以外も使ってみるか」

肉体派の見た目に反して魔法の才も持ち合わせているザハークが使える魔法は水だけではない。

水弾の次は風の刃を生み出し、ポイズンスパイダーの脚を両断して動きを止め、キッチリ急所を潰していく。
だが、全ての攻撃が成功している訳ではなく、まだまだミレアナやソウスケほど魔力操作の腕は高くない。

「むっ……やはり日頃から訓練すべきか。この街にいる間は接近戦と同じぐらい遠距離戦で戦うようにしてみるか」

まだまだ慣れていない部分もあるが、着実に討伐を増やしていくスーパーエリートオーガ。

「……人や毒液は厄介だけど、攻撃の速さ自体はやっぱりそんなにって感じだな」

二人とは違ってソウスケは接近戦でポイズンスパイダーの群れを攻めていく。
両手には風の魔力が刃状に伸ばされ、ネット状の糸や毒液、毒弾をサラッと躱して胴体を切断、もしくは刺突で仕留めていく。

周囲にはミレアナの弓やザハークの水弾や水球、風刃が飛んで来るが、一度もぶつかることなく踊るように戦場を駆ける。

(これぐらいの相手なら、手こずることは全く無いけど……やっぱり糸って厄介だよな。粘着性があって、個体によっては普通の糸を毒糸に変えられる。それに糸の性質を変える個体もいるし……まっ、何はともあれスパイロードの制作素材が手に入るのは嬉しいことだな)

基本的に売るつもりはない、ソウスケが造ったオリジナルのマジックアイテム。
だが、暇なときにエアーホッケーと並行してちょいちょい造っている。

(てか、ポイズンスパイダーの糸だったら本人の魔法センス関係無しに、跳び出す糸を毒糸に出来るよな……やっぱり多様性抜群だよな、糸って……ちょっと俺も使ってみようかな)

蛇腹剣で喰ったモンスターの中には蜘蛛系がいるので、ソウスケはポイズンスパイダーたちと同じように、手のひらや脚から糸を出すことが出来る。

「よっ、ほっ!!」

スキルレベルがある程度高ければ、ソウスケの修練時間など関係無しで上手く扱うことが出来るので……ソウスケはササっと四本の脚を糸で縛ってしまい、頭部を切断。

「良いね、やっぱり体の一部を縛ればどうしても隙が生まれるよな」

気分が乗ってきたソウスケはその後も糸を使用しながら討伐を続ける。
自分達とは全く見た目が違う敵が糸を使った事に多少驚きはしたが、直ぐに三人の殲滅に戻る。

ポイズンスパイダーたちは最後まで三人を殺そうと懸命に戦い続けたが……あまりにも質が違い過ぎる。
その結果、三人はいつも通り傷一つ負うことなく、クイーンを含めてポイズンスパイダーの討伐を終えた。

だが……まだ戦いは終わっていなかった。
しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」 勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、 ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。 追放すらできない規約のせいで、 “事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。 だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。 《超記録》―― 敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。 生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。 努力で《成長》スキルを獲得し、 記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。 やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。 対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、 記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。 一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。 さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。 街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。 優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。 捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。 爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

【めっさ】天使拾った【可愛ぃなう】

一樹
ファンタジー
酔っ払いが聖女を拾って送迎する話です。

処理中です...