転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
548 / 1,259

五百二十七話 半分こしよう

しおりを挟む
確かにソウスケ達も戦った。
ぶっちゃけた話、後から来たが三人が七割方のモンスターを倒していた。

だが、ソウスケとしては十人の方が先に来て苦労して戦っていたので、今回は教師陣に渡しても良いと思っている。

(だって、どんなに優秀でも生徒達は所詮、まだ生徒。戦っている様子を見る限り、先生たちはモンスターの討伐をメインで動きながらも、生徒達が重傷を負わないように、死なないようにサポートしていた)

勿論、三人が生徒達の先生だからという理由ではあるかもしれない。

しかしそれでも、七人の生徒達をサポートしながら戦うというのはどれだけ大変なのか……少しは感じ取れた。

「俺としては……先にこの場所にいたのはあんた達だ。この宝箱は、あんた達にも受け取る権利があると思っている」

「……実力は桁外れなのに、随分と優しいんだな。その気持ちは有難い。でも……この宝箱は受け取れない。お前らもそう思うだろ」

「そうね。ダイアスの言う通り、この宝箱は受け取れないわ」

「俺達より、君達の方が明らかに多くのモンスターを倒した。宝箱を受け取る理由は、それだけで十分だ」

三人共自分達が受け取るべきではないと、答えは一致していた。
生徒達の中には何人かが明らかにレア度の高い道具が入ってそうな宝箱を、ソウスケたちに譲ることを不満に思っている者もいる。

だが、自分たちよりもソウスケたち三人の方が圧倒的にモンスターを倒していた。
それは認めざるを得ない事実。

何故自分達とそんなに歳が変わらないソウスケが、あそこまで桁外れの強さを持っているのか……小さな不満等はなこるが、宝箱をソウスケたちに渡すことに異論はない。

「……分かった。それじゃあ、こいつは貰うよ」

豪華な装飾が施された宝箱を受け取り、亜空間の中へと入れる。

宝箱に関してはこれで終わり。
だが、まだ決めなければならいことがあった。

「なら、この素材は半分ずつ分けようか」

「……いや、あのな。その気持ちは嬉しい。嬉しいんだが……ちょっと優し過ぎないか?」

単純な感想だった。

目の前の少年が優し過ぎる。
自分達も多くのモンスターに囲まれながら戦った。

だが、ソウスケたち三人の方が圧倒的な数を倒していた。
自分達が倒した数など、ソウスケたちに比べれば大した数ではない。

素直にそう思ってしまう。命あっての儲け物だ。
何かを望むのは良くない。

そう思ってしまう程に……ダイアスたちは危機的状況に陥ってしまったのだ。

「そうか? ……あれよだ。二人が優秀だからさ、ある程度強いモンスターでも怪我を負わずに倒しちゃうんだよ。だから依頼を受けてなくても素材や魔石を売れば結構なお金が入ってくるんだ」

「因みに俺は実戦が好きだ」

「そうなんだよ、ザハークは殺気を溢れさせて襲ってくるモンスターと戦うのが好きなんだ。だから結果的に一日で結構な数のモンスターを倒すんだよ。だからランクが低くても、結構貯えはあるんだ」

自分の実力は関係無いという嘘を混ぜているが、十分な貯えがあるのは事実。
モンスターの素材を売却した金、リバーシやチェス、エアーホッケーを売ったお金で懐は潤っている。

なので今回他の大乱闘で得た素材を売った代金を折半しても、特に思うところはない。

「そ、そうなのか……若いのにしっかりしてるんだな」

「……ソウスケ君の気持ちは嬉しいわ。えぇ、本当に嬉しい。でもね、この大量の素材を上に持って帰ることが出来ないのよ」

とりあえずソウスケからの提案を受け入れることにした。
教師陣にとって、生徒にとっても臨時ボーナスが入って嬉しいのは間違いない。

だが、これだけの素材を地上に持って帰ることが出来ない。
残念だが、ギルドまで素材を運ばなければ換金することは出来ないのだ。

「あぁ、なるほど。それに関しては問題無いですよ。俺の空間収納に入るんで」

「それはどういう、こと…………」

事前にミレアナが今回の大乱闘で得た素材を洋紙に書き終えているので、どんどん亜空間の中に素材と魔石を入れてしまう。

その本来ならあり得ない光景を観て教師陣だけではなく、生徒達も全員口をポカーンと開けて固まってしまった。
しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」 勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、 ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。 追放すらできない規約のせいで、 “事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。 だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。 《超記録》―― 敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。 生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。 努力で《成長》スキルを獲得し、 記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。 やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。 対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、 記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。 一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。 さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。 街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。 優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。 捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。 爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...