転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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五百二十九話 成長期嘗めんなよ

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「は、ははは……まさかとは予想していたけど、本当にダンジョンの中でこんな美味い料理が食べられるなんてな」

既に日は沈み、空は暗くなった。
十三人の腹はグ~グ~なってしまうほど、空腹だったので丁度良い野営地を見つけたら、直ぐに料理を作り始めた。

直ぐに作れて、工程も大したことはない料理だが、いつも通りダンジョンで食べられると考えれば、高級料理に変わりない。

学生達も目の前に置かれた料理を見て、腹の音が止まらないほど食欲が刺激されている。

「遠慮なく食べてくれ。おかわりもあるからな」

その言葉に成長期真っ只中の男子は勝てず、意地を張っていた生徒達も負けて夕ご飯に食らいついた。

「お前ら……もう少し落ち着いて食べろよ」

「ダイアスだっていつもは勢い良く食べてるじゃない。とりあえず腹を満たすって感じで」

「うっ、今その話は別にしなくて良いだろ。俺は恩人の前なんだし、少しは落ち着いて食べろよ、ってことだ」

「……ダイアス、お前そう言いながらも超早く食べてるじゃないか」

所作は綺麗だが、それでも尋常ではない速度で胃袋に料理を入れていく。
勿論飲み込まずにしっかりと噛んでいる。

だが、そのスピードがあまりにも早過ぎるのだ。

「だってよ……むっちゃ美味いじゃねぇか。食べる手が、止まらねぇよ」

「確かにその気持ちは解る。ダンジョンの中で食べられる料理の中では最上級の味だ。ソウスケ君はよく料理をするのか?」

「そうだな……野営の時は結構作ってるかもしれない。まぁ、そんな大した料理は作ってないけどな」

「謙遜を。これだけの料理を作れれば十分過ぎる」

ソウスケが容量無限大、時間停止の効果を持つ空間収納を持っているお陰というのもあるが、ソウスケが作った料理は本当に美味しいと感じる。

(俺の腕というよりは、素材の味が元々良いから美味いって感じてるだけだと思うんだけどな……まっ、この世界に来たころと比べればサクッと簡単な料理は作れるようになったし、腕はちょっとは上達してるのかもな)

地球で生活していた頃は、全くと言って良いほどに料理をしてこなかった。
その頃と比べれば、確かに料理の腕は上達している。

(……どうせなら、今度餃子でも作ってみるか。作り方一覧とか無くても、餃子ならだいたい作れる筈だ)

餃子の美味さを思い出した途端、急激に餃子が食べたくなり、料理を食べている筈なのに腹が鳴ってしまった。

しかし全員が食べるのに夢中になっているので、ミレアナぐらいしかゼルートの腹の音に気付かなかった。

(でも、餃子を食べるならやっぱり米が欲しくなるよなぁ……うん、お米を食べたい)

この世界に来てから一度も食べられていない。
そもそもこの世界に米という食い物が存在するのか分からない。

だが、ソウスケとしては是非とも見つけて買い占めたい食料だ。

(米があれば、それだけでご飯のレパートリーが増える……この学術都市での冒険が終われば、米を探す旅に出るのもありか……)

米を探す為の冒険……自分が食べたい食料を求める旅、それも面白いと思えた。

「ソウスケさん、そろそろ料理が無くなってきました」

「えっ、マジか……わぁ~~。追加で作るか」

「手伝います」

「サンキュー」

いつもの三人に加えて、十人分の量が必要になるのでかなり多めに作ったつもりだった。

だが、そんな山盛りの量もそろそろ尽きる。

急ぎめで追加の料理も作り、再び食事タイム。
結局ソウスケとミレアナが作った追加の料理もあっという間に全員の腹の中におさまった。

「……やば、食べ過ぎた」

「だな、ちょっと食い過ぎたな」

「あぁーーー、美味かった」

成長期の学生たちもかなり食べたが、ダイアスたち教師陣もかなり食べていた。

「果実のデザートまであって……もう本当に最高だった」

「そうねぇ……ダンジョンの中でこんな贅沢な料理を食べたら……罰が当たりそうね」

「いつも頑張っているご褒美だと思えば良いだろ」

全員食欲は満たされ、ちょっと動きたくない状態が十分ほど続いた。

「うし、体が軽くなってきた……なぁ、ソウスケ君。ちょっと俺と模擬戦しないか」
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