転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
599 / 1,259

五百七十八話 そっちの話はまだあまり広まっていない

しおりを挟む
「さて、今日も潜りましょう」

先日、エルダートレントを倒したミレアナは美味しい夕食を食べ、一晩ぐっすりと休んだ翌日……なんと再び中級者向けダンジョンに入り、二十一階層に転移。

そこから猛スピードで階層を駆け下りていく。
先日トレントやエルダートレントの素材を手に入れたが、個人的にはもう少しエルダートレントの素材が欲しいと思っていた。

というわけで、今回もせっせと階層を降りていく。
四回目の探索となればそれはもう速い速い。

たまたますれ違う冒険者たちがモンスターなのか同業者なのか、判断できない速度で降りている。
今回は圧倒的な速度で駆け下り、たった二日で最下層まで辿り着いてしまった。

そして今回もミレアナは一人で受けるつもりなのだが、ボス部屋の前に辿り着くと数組の冒険者が順番を待っていた。
その冒険者たちはミレアナが一人でここまで降りてきた実力に驚くが、ソロでボスに挑むのは危ない……加えて、自分たちのパーティーに一時的に入ってもらえば複数のトレントとエルダートレントを倒せる可能性が上がると思い、ミレアナに自分たちと一緒にボスと戦わないかと誘う。

(…………前回も誘いを断ってソロでボスに挑んだのですが、同業者の方々は学習しないのでしょうか)

このように考えてしまうのは仕方ない。
だが、学術都市には多くの冒険者が滞在している。

ソウスケ、ミレアナ、ザハークという凸凹なパーティーがやって来たという話は徐々に広まっているが、ミレアナは他の冒険者の誘いを断って一人で三十層のボスに挑むという話はまだあまり広まっていない。

という訳で、ミレアナという美人で強い冒険者がソロでダンジョンを潜っていると分かれば、初見で誘わない者はいない。

今回も凍てつく様な空気を発し、同業者たちに自分の方があなたたちより上だと解らせた。
そして前回と同じく一人でボス部屋の中に入り、特に戦いを楽しむことはなくささっとボスを倒して地上へと戻った。

(これでエルダートレントの素材が二体分。杖を造る素材としては申し分ないでしょう。いや、どうせなら弓を作るのもありでしょうか……しかし弦となる糸がありませんね。ひとまず弓を作るのは後回しにしましょう)

ダンジョンから返ってきたミレアナはホクホク顔のまま泊っている宿に戻り、早速杖づくりを始めた。

杖の素材となるのは木……だけがメインだけではなく、鉱石なども素材として使える。
加えて、錬金術のスキルがあれば習得者の熟練度にもよるが、モンスターの素材を木に組み込むことが出来る。

ミレアナのレベルではまだそれがようやく出来るようになったばかりなので、組み込むにはそれなりに時間がかかるが、諦めずに根気よく素材となる木を強化していく。

そして杖の源となる部分の玉には鉱石、モンスターの魔石、かわった素材で言えばモンスターの眼玉を使う場合がある。

しかし今回は自身が倒したモンスターの魔石を使用し、杖を造り上げいく。
初めて杖作りを始めてから一時間半後、ようやく杖を造り終えた。

「ふぅーーーーー、随分と時間を使ってしまいましたね」

ポーションを造るのであれば、一本分造るのに大した時間は掛からない。
だが、ポーション一本分を造るのと比べて杖一本を造るほうが大きな達成感があった。

「……ランクは三。攻撃魔法の威力上昇、詠唱速度の上昇。そして魔力量の増加。それとウィンドカッター、ブレードが使用できる……ランク三なので、あまり大した効果は期待できなさそうですね」

造り終えた武器に不満を抱くミレアナ。
しかし一定の魔術師には需要がある武器だった。

装備するだけでウィンドカッターとブレードが使える。
それだけでも魔法をメインで使う者にとっては需要がある。

だが、ミレアナはボスモンスターであるエルダートレントを倒した時に手に入れた宝箱に入っていた杖と見比べると、自分が作った杖はやはり劣っていると感じる。

ミレアナはソウスケの解錠光景を見ながら、自身の氷魔法を使って独自の解錠方法身に着けていた。

「こちらの杖はランク五……おそらく造るのに使われたであろう素材を考えれば、大きな差が生まれるのは当然ですが……やはり回数を重ねて頑張るしかありませんね」

ダンジョンから戻ってきた時間は昼過ぎであり、夕食の時間になるまでミレアナは延々と杖を造り続けた。
しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

虹色のプレゼントボックス

紀道侑
ファンタジー
安田君26歳が自宅でカップ麺を食ってたら部屋ごと異世界に飛ばされるお話です。 安田君はおかしな思考回路の持ち主でわけのわからないことばっかりやります。 わけのわからない彼は異世界に転移してからわけのわからないチート能力を獲得します。 余計わけのわからない人物に進化します。 作中で起きた事件の真相に迫るのが早いです。 本当に尋常じゃないほど早いです。 残念ながらハーレムは無いです。 全年齢対象で男女問わず気軽に読めるゆるいゆる~いストーリーになっていると思いますので、お気軽にお読みください。 未公開含めて30話分くらいあったのですが、全部行間がおかしくなっていたので、再アップしています。 行間おかしくなっていることに朝の4時に気づいて右往左往して泣く泣く作品を削除しました。 なかなかに最悪な気分になりました。 お気に入りしてくださった方、申し訳ありません。 というかしょっちゅう二行も三行も行間が空いてる小説をよくお気に入りしてくださいましたね。 お気に入りしてくださった方々には幸せになってほしいです。

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」 勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、 ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。 追放すらできない規約のせいで、 “事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。 だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。 《超記録》―― 敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。 生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。 努力で《成長》スキルを獲得し、 記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。 やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。 対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、 記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。 一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。 さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。 街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。 優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。 捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。 爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

処理中です...