転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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五百七十七話 造ることに興味はある

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「ザハーク、明日はダンジョンに潜って試し斬りしないか」

「うむ、ありだな。売る前に性能を試すのは重要だ」

一日中鍛冶に没頭し、作業を終えた二人は晩飯を食べる店を探していた。

「場所はどこが良いと思う?」

「そうだな……初心者用のダンジョンでは意味がない。中級者向けダンジョンの十層以降が相応しいと思うぞ」

「十層以降か……うん、確かにその辺りが丁度良さそうだな」

現在ソウスケたちが作っている武器の多くはランク三やランク四。
それ相応の素材を使っていないということもあるので、目玉が飛び出るほど高値が付く武器はいまのところ造り出せていない。

なので数日間の間に造った武器を試す場所を考えるに、ザハークが提案した場所が丁度良い。

「そういえば、ザハークはどういった武器を造ってたんだ」

最初の数作品はお互いに確認していたが、途中から作業に没頭し過ぎてあまり覚えていなかった。

「俺は大剣にロングソード、長槍や短剣。あとはハンマーやクレイモアだな」

「おぉ~~、結構重量装備が多いな」

「使うのが得意である武器を無意識の内に多く造ってしまったな。ソウスケさんはどういった武器を造ったんだ?」

「俺は大剣、ロングソード、長槍、二つセットの短剣。あとはサーベルだな」

「ほぅ、サーベルか……もしや騎士道精神に目覚めたのか?」

騎士の中にはサーベルなどの細剣を使う者が多い。
だが、もちろんソウスケがサーベルを造った理由はそんなことではなく……そもそも理由など特に無かった。

「そんなわけないだろ。たまたまだ、造った理由なんて特にない。偶にはそういう武器を造ってもいいなって思っただけだ」

「ふふ、そうか……しかしソウスケさん、お前は鍛冶だけではなく錬金術もできる。杖を造ったりはしないのか?」

二人の会話をチラッと聞いてる人はザハークが何を言っているのか全く理解出来なかった。

通行人たちはザハークの隣を歩いているソウスケがまともな武器を造る様には見えず、ましてや鍛冶と錬金術の腕が一定水準以上あるとは微塵も思えない。

そんなことはあり得ない。
あんなチビがまともな武器を造れるはずがない。
嘘をつくのは一丁前なやつか。

などなど心の中で呟く者はいるが、誰一人として声に出す者はいない。
何故ならソウスケの隣に立つザハークが恐ろしいからだ。

鬼人族に近い見た目のオーガだが、他者が強者と感じるに相応しい体格と雰囲気を持つ。
そして実際に超強いので態度だけは一丁前なボンクラたちが生意気な口を叩けば、一瞬で体に風穴を空けられる。

「杖か……魔法は使うけど、今まであんまり意識してきたことなかったんだよな」

「杖を持って魔法を放てば威力が上がるが……確かにソウスケさんが放つ威力を考えれば、あまり必要ないかもしれないな」

持てば威力の増加、魔力量の拡張や魔力回復速度促進などの効果を所有者に与える杖だが……あまり魔法に頼った戦い方をしないソウスケには持つ意味が殆どなかった。

だが、杖づくりに興味がゼロという訳ではない。

「商品が武器や防具だけってのもつまらないよな……よし、次からは杖も造ってみるか」

「俺は錬金術の腕はまだまだ素人に毛が生えたレベルだから、武器や防具の制作に集中しよう」

「ザハークも実験を積めばそれなりの腕になると思うんだけどな……おっ、良さそうな店だな。ザハーク、ここにしないか?」

「それは良いが……俺はおそらく中に入れないのではないか?」

「ちょっと聞いてみる」

ここ最近で人の言葉を喋るオーガ……ザハークの存在はかなり広まっていた。
見た目が鬼人族に近いということもあり、店によってはオーケーを出してくれる。

ソウスケとしては現在ミレアナがいないので、できればザハークと一緒に夕食を食べたいと思ってる。

「ザハーク、大丈夫だって」

「そうか。それなら是非中で食べるとしよう」

しっかりと常識的な衣服を身に着けているので、何も言わなければ本当に鬼人族に思われても仕方ない。
実際にザハークの姿を見た店員は思わず本当にオーガなのか二度見してしまった。
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