転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
606 / 1,259

五百八十五話 永遠に採れる

しおりを挟む
「風の魔剣をご依頼、ということで良いか?」

「は、はい。よろしくお願いします!!!」

「任せろ。受け取る時間は……明日、学校が終わったらまたここに来い。その時に渡そう」

「えっ!? そ、そんなに早くて良いんですか!」

「あぁ、鍛冶は趣味でやってるだけだから、特に何かを造るために急いでないんだ」

偶にこんな武器を造るのはありだなと思う時があるが、生徒から……ではなく、客からの依頼がきたのだ。
それを最優先にするのは当然のことだろう。

(鞘もそれらしいのを造らないとな)

材木やモンスターの角、皮や毛皮などから造ることができ、ロングソードや短剣を造る度に制作しているので造るのにそこまで時間は掛からない。

「分かりました。明日学校が終わったら直ぐに来ます!!!」

「張り切るのは良いが、慌てて転ぶなよ」

ジュリアスと別れたソウスケは素材と魔鉱石を亜空間に入れ、ザハークが作業を続ける鍛冶場へと戻った。

「休憩中か?」

「あぁ、休憩中だ。さすがに少々疲れた。そっちはあれか。生徒から依頼されたのか?」

「しっかり素材を持ってきて、風の魔剣を造ってほしいと頼まれたよ」

「ほぅ、素材を用意したのか。それは立派だな」

材料を用意せずともソウスケの空間庫には大量の素材や魔石、鉱石が入っているので金さえ用意すれば望みの物はある程度造れる。

しかし、素材をソウスケが用意する分料金は割高になるので、ソウスケとしては素材を用意した方が生徒たちの懐的に良いのでは考えていた。

「それで、直ぐに取り掛かるのか?」

「いや、今日はもう造らないよ。火も傾いてきたし、今日は切り上げようと思う」

「そうか。丁度良いタイミングだったな」

一旦鍛冶ギルドに戻って鍛冶場のカギを返し、ザハークも一緒に夕食が食べれそうな場所を探す。

「やっぱり見た目が鬼人族に近いのと、人の言葉を喋れるのが有利に働くな」

「中身は立派なオーガだがな」

鬼人族の中にはザハークの様に血の気が多い者が多数存在するので、結局のところ外見も中身もあまり大差ない。

「そういえばソウスケさん、鉱石の量はまだ大丈夫なのか?」

「まだかなり余裕はあるよ。それに、ダンジョンの宝箱からも鉱石のインゴットが手に入るし、ダンジョンに潜ってれば案外鉱石には困らないかもしれないな」

鉱石は物によって値段は当然変わるが、それなりの値段で売れることが多い。
基本的に売ってしっまう者が殆どが、ソウスケはそれらを全て手元に残している。

とはいえ鍛冶を毎日続けていれば、たとえ宝箱から手に入った分があったとしても、いずれは底を尽く。

(そういえば、上級者向けのダンジョンには鉱山地帯になってる階層があった筈だよな……一旦作った武器を売り終わったら、ミレアナと合流して採掘を中心的に行うか)

地上の鉱山はいずれ鉱石が尽きて廃鉱になってしまうが、ダンジョン内の鉱山はモンスターと同じく鉱石が採掘されても時間が経てば復活する。

そこまで速いスパンで元通りにはならないが、永遠に採掘できるというのは稼ぎたい冒険者、武器を造るのに鉱石が欲しい鍛冶師などには好都合な場所。

街を治める領主も鉱石を永遠に採掘できるというだけで大きな手札になる。

「鍛冶が一段落したら、上級者向けダンジョンに潜るか」

「俺は魔石集めの為に潜っても良いぞ」

「ん~~~~~…………俺としては楽しみは取っておきたいから、上級者向けダンジョンに潜るのは後で良いかな」

「なるほど、楽しみを取っておくのは大切だな。しかし、ソウスケさんの実力ならば三十層以降ぐらいからでなければ、ダンジョン探索に楽しみは感じないと思うぞ」

ソウスケにとっては大半のモンスター雑魚だが、本人はモンスターとの戦いにもそれなりに魅力を感じているが、ダンジョン探索じたいが楽しいと感じている。

なので、そこら辺に関しては全く問題無い。

「ザハーク。前に言ったかもしれないが、俺はダンジョンを探索することに楽しさを感じている。まぁ……ちょっぴり? ほんの少しぐらい退屈と感じる瞬間はあるかもしれないけど、探索できればそれで良いんだよ」

「……ふむ、そういえばそうだったな」

主がそう言うのであれば、これ以上は口出ししない。
ザハークとしては中級者向けであろうが上級者向けであろうが、ダンジョン内で暴れられたらそれで良いのだから。
しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

虹色のプレゼントボックス

紀道侑
ファンタジー
安田君26歳が自宅でカップ麺を食ってたら部屋ごと異世界に飛ばされるお話です。 安田君はおかしな思考回路の持ち主でわけのわからないことばっかりやります。 わけのわからない彼は異世界に転移してからわけのわからないチート能力を獲得します。 余計わけのわからない人物に進化します。 作中で起きた事件の真相に迫るのが早いです。 本当に尋常じゃないほど早いです。 残念ながらハーレムは無いです。 全年齢対象で男女問わず気軽に読めるゆるいゆる~いストーリーになっていると思いますので、お気軽にお読みください。 未公開含めて30話分くらいあったのですが、全部行間がおかしくなっていたので、再アップしています。 行間おかしくなっていることに朝の4時に気づいて右往左往して泣く泣く作品を削除しました。 なかなかに最悪な気分になりました。 お気に入りしてくださった方、申し訳ありません。 というかしょっちゅう二行も三行も行間が空いてる小説をよくお気に入りしてくださいましたね。 お気に入りしてくださった方々には幸せになってほしいです。

【めっさ】天使拾った【可愛ぃなう】

一樹
ファンタジー
酔っ払いが聖女を拾って送迎する話です。

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。 魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。 でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

処理中です...