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五百八十七話 ギルドからの頼み
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「どうだ、気に入っていたか?」
「あぁ、気に入ってくれたよ」
鍛冶場に戻り、もう一作品造ってから本日の鍛冶は終了。
「これから多くの生徒たちがソウスケに制作依頼をしてくるかもしれないな」
「そうだな……まっ、ちゃんと制作料金を持ってくる人は大事な客だ。頼まれた品を誠心誠意込めて作らせてもらうさ。それに、杖に関してはミレアナに任せたからな」
ジュリアスは学院に戻ってからクラスメートに造ってもらったロングソードを自慢しながらも、杖はミレアナに頼めば造ってくれるかもしれないという話を既に広めていた。
「そ、そうか。それにしても、今ミレアナは何をしてるのだろうな」
「元気にダンジョン探索をしてるか、もしくはギルドの依頼を受けてるかのどちらかだな」
「……そういえばソウスケさん、最近ギルドの依頼を受けていないのではないか?」
「そういえば……そうだな。うん、確かに受けてない」
学園から指名依頼された臨時教師の依頼を受けて以来、ソウスケはギルドからの依頼を受けていなかった。
「一応冒険者なのだから、少しぐらいはギルドからの依頼を受けた方が良いのではないか」
「そうだな。一応冒険者だからな……よし、明日はとりあえずギルドで適当な依頼を受けよう」
最近は朝から夕方まで鍛冶作業を行い、偶にダンジョンで魔石集め。
そして余った時間でエアーホッケーの作製を勧める。
そんな生活を繰り返していたので、ギルドのクエストを受けるという考えは全く頭の中になかった。
翌日、二人はギルドに向かって適当なクエストを選んでダンジョンに向かった。
そしてミレアナといえば……何故かギルドにダンジョンで手に入れた使わない素材を売っていると、職員の一人に声を掛けられた。
「ミレアナさん、少しお時間宜しいでしょうか」
「……えぇ、構いませんよ」
受付嬢はミレアナがギルドに持ってきた素材などから、ランク通りの人物ではないことは把握していた。
噂では、中級者向けダンジョンのラスボスを一人で倒している。
その戦闘光景を実際に見たことはないが、その話を他の冒険者に話す者が意外と多い。
それらの理由から、ミレアナにはBランクかAランク相当の実力があるとギルドを認識している。
「ミレアナさんの力を見込んで、是非ともルーキーのダンジョン探索に付き添って頂きたいのです」
「……ベテランやトップの冒険者と組んで欲しいという内容ではなく、ルーキーの付き添い……ですか?」
高ランクの冒険者と組み、とある素材を入手して欲しい。
そんな内容を頼まれるかと思っていたが、受付嬢の口から出た内容は全く違った。
「そうですね。勿論ギルドから報酬は出します」
「初めてダンジョンに潜るルーキーが無茶をして死なないように監視をしてほしい、ということですね」
「簡単に言うとその通りです。ギルドでもダンジョンについての講習は行っていますが、その……」
受付嬢の言葉が詰まるのを見て、だいたい事情は察した。
「もしかしてですが、そもそもダンジョンに潜るのにも拘らず、ギルドが行っている講習を受けない冒険者が多いのですか?」
「はい、その通りです。こちらとしてはできるだけ受けてほしいんですけどね」
頭が回るルーキーは講習を受けず、先輩冒険者に飯を奢って情報を聞きだす。
そういったことが出来るのであれば、ギルドとしては何も言うことはない。
しかし、冒険者になって一年ほどしか経っていないルーキーはダンジョンに潜る。
その冒険者として王道的な展開に胸を高鳴らせ、先走ってしまう者が多い。
ギルドの好意を無下にした結果、ダンジョンのトラップやモンスターに殺されてしまう。
(別に受けても構わないのですが……どう考えてもメリットは少ないですよね)
時間は好きなように使って良いと言われている。
だが、明らかに自分にとってメリットが少ない仕事だと感じた。
「その、もし受けて頂けるのであればギルドからの評価も当然上がります」
ギルドが直接ミレアナに依頼しているので、その特典は当然。
だが、ミレアナはその評価がいつか使えるかもしれないと思い、受付嬢から頼まれた依頼を気分転換も含めて受けることにした。
「あぁ、気に入ってくれたよ」
鍛冶場に戻り、もう一作品造ってから本日の鍛冶は終了。
「これから多くの生徒たちがソウスケに制作依頼をしてくるかもしれないな」
「そうだな……まっ、ちゃんと制作料金を持ってくる人は大事な客だ。頼まれた品を誠心誠意込めて作らせてもらうさ。それに、杖に関してはミレアナに任せたからな」
ジュリアスは学院に戻ってからクラスメートに造ってもらったロングソードを自慢しながらも、杖はミレアナに頼めば造ってくれるかもしれないという話を既に広めていた。
「そ、そうか。それにしても、今ミレアナは何をしてるのだろうな」
「元気にダンジョン探索をしてるか、もしくはギルドの依頼を受けてるかのどちらかだな」
「……そういえばソウスケさん、最近ギルドの依頼を受けていないのではないか?」
「そういえば……そうだな。うん、確かに受けてない」
学園から指名依頼された臨時教師の依頼を受けて以来、ソウスケはギルドからの依頼を受けていなかった。
「一応冒険者なのだから、少しぐらいはギルドからの依頼を受けた方が良いのではないか」
「そうだな。一応冒険者だからな……よし、明日はとりあえずギルドで適当な依頼を受けよう」
最近は朝から夕方まで鍛冶作業を行い、偶にダンジョンで魔石集め。
そして余った時間でエアーホッケーの作製を勧める。
そんな生活を繰り返していたので、ギルドのクエストを受けるという考えは全く頭の中になかった。
翌日、二人はギルドに向かって適当なクエストを選んでダンジョンに向かった。
そしてミレアナといえば……何故かギルドにダンジョンで手に入れた使わない素材を売っていると、職員の一人に声を掛けられた。
「ミレアナさん、少しお時間宜しいでしょうか」
「……えぇ、構いませんよ」
受付嬢はミレアナがギルドに持ってきた素材などから、ランク通りの人物ではないことは把握していた。
噂では、中級者向けダンジョンのラスボスを一人で倒している。
その戦闘光景を実際に見たことはないが、その話を他の冒険者に話す者が意外と多い。
それらの理由から、ミレアナにはBランクかAランク相当の実力があるとギルドを認識している。
「ミレアナさんの力を見込んで、是非ともルーキーのダンジョン探索に付き添って頂きたいのです」
「……ベテランやトップの冒険者と組んで欲しいという内容ではなく、ルーキーの付き添い……ですか?」
高ランクの冒険者と組み、とある素材を入手して欲しい。
そんな内容を頼まれるかと思っていたが、受付嬢の口から出た内容は全く違った。
「そうですね。勿論ギルドから報酬は出します」
「初めてダンジョンに潜るルーキーが無茶をして死なないように監視をしてほしい、ということですね」
「簡単に言うとその通りです。ギルドでもダンジョンについての講習は行っていますが、その……」
受付嬢の言葉が詰まるのを見て、だいたい事情は察した。
「もしかしてですが、そもそもダンジョンに潜るのにも拘らず、ギルドが行っている講習を受けない冒険者が多いのですか?」
「はい、その通りです。こちらとしてはできるだけ受けてほしいんですけどね」
頭が回るルーキーは講習を受けず、先輩冒険者に飯を奢って情報を聞きだす。
そういったことが出来るのであれば、ギルドとしては何も言うことはない。
しかし、冒険者になって一年ほどしか経っていないルーキーはダンジョンに潜る。
その冒険者として王道的な展開に胸を高鳴らせ、先走ってしまう者が多い。
ギルドの好意を無下にした結果、ダンジョンのトラップやモンスターに殺されてしまう。
(別に受けても構わないのですが……どう考えてもメリットは少ないですよね)
時間は好きなように使って良いと言われている。
だが、明らかに自分にとってメリットが少ない仕事だと感じた。
「その、もし受けて頂けるのであればギルドからの評価も当然上がります」
ギルドが直接ミレアナに依頼しているので、その特典は当然。
だが、ミレアナはその評価がいつか使えるかもしれないと思い、受付嬢から頼まれた依頼を気分転換も含めて受けることにした。
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