転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
618 / 1,259

五百九十七話 それで満足なのか

しおりを挟む
「その……ちなみに、ミレアナさんたちは今後、どう動くんですか?」

「どうとは……この街のダンジョンを攻略するか否かということですか?」

「えっと、それもそうなんですけど。これからミレアナさんたちがどういった冒険をするのか気になって」

ミレアナの中でソウスケとザハーク、この三人で上級者向けのダンジョンを攻略するというのは決まっている。
だが、上級者向けのダンジョンの攻略が終わってからの予定は特に考えていない。

「パーティーのリーダーはソウスケさんですからね。上級者向けのダンジョンを攻略してからどうするかは、ソウスケさん次第です」

「そ、そうなんですね。ミレアナさんはこういった場所に行ってみたいとかは、ないんですか?」

「……特にありませんね」

いずれ、一度故郷に寄りたい。
贅沢を言うならばそれだけ。

それ以外は、特に何かを望むつもりはない。

「ソウスケさんが行きたい思った場所に私もザハークも付いて行くだけです」

「……ミレアナさんは、それで満足なんですか?」

バータは疑問に思った。
ミレアナほどの実力を持つ人物が、一人の冒険者にただただ付き従い生きて……それで満足なのかと。

「バータ、それはどういう意味ですか?」

特に怒ってはいない。
冷静に怒気を放ってもいない。

ましてやバータに対して殺意を抱くこともない。
ただ、その言葉はどういう意味なのかと聞き返した。

だが……聞き返されたバータの両肩には重い重い鉛が圧し掛かった。
勿論、ミレアナからは一切圧は放たれていない。

両肩に鉛が乗っかった。
それは完全にバータの錯覚。

しかし、ここで返答を間違えてはいけないというプレッシャーが不意に襲い掛かった。

「そ、その……ミレアナさんはソウスケさんが行きたい場所に付いて行くだけで、満足なのかと思って。もっと、ミレアナさんの意志を表に出さないのかと、思って」

バータだけではない。
自分たちのリーダーが言い終わるまで、フィーネとクレアラも食事の手をいつの間にか止めてしまっていた。

「ふむ……バータが言いたいことは何となく分かりました。ただ、私としてはソウスケさんやザハークと一緒に冒険が出来るだけで幸せなのです」

自身を奴隷という立場と呪いから解放してくれたという恩もあるが、ソウスケと一緒に行動していれば暇だと感じることがあまり。

大抵、いつも刺激的な日々を送っている。
ソウスケと一緒に行動していない時間も、一人でダンジョンを潜る感覚は悪くない。

一人で動いていたからこそ、今回の件を受けてバータたちの面倒をみたのかもしれない。

一緒に行動していても、まさかのダンジョン内で転移トラップに引っ掛かり、モンスターが大量にいる部屋へと強制的に飛ばされた。
そして、そこで知り合った教師との縁で臨時ではあるが教師として活動した。

この街に来るまでも刺激がない日々は少なかった。

「ソウスケさんはあまり目立つことを好みませんが、最近は周囲の目を気にせず行動しています。元々好戦的な性格だからか、強敵との戦いを好んでダンジョンに潜り……強敵の情報が手に入れば、わざわざ危険な場所に向かうこともあります」

「ミレアナさんも強敵と戦うのは好き、ということですか?」

フィーネの問いに少し考え込み、頷いた。

「そうですね。自分がそれなりに強いと分かっているので、強敵との戦いは自分が生きているのだと実感する瞬間でもあります。おそらくソウスケさんやザハークも同じような感覚を持っているでしょう」

その言葉通り、ソウスケはこの世界に転移した瞬間から膨大な才能を得て、モンスターと連戦連勝している。
神の計らいで得た武器の効果も相まって、確かな実力を得た。

自分が滅多なことでは負けないという自信という名の傲慢さを得たことにより、命が懸かったモンスターや盗賊との戦いで、無意識の内に笑みを浮かべることが多い。

ザハークは強者と断言出来る力を手に入れたから、などの理由は関係無しにゴブリンの頃から戦闘を好む性格だった。
淡々と武器を造る時間も好きだが、それと同じぐらい……もしくはそれ以上に強者との戦いを好む。
しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」 勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、 ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。 追放すらできない規約のせいで、 “事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。 だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。 《超記録》―― 敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。 生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。 努力で《成長》スキルを獲得し、 記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。 やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。 対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、 記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。 一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。 さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。 街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。 優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。 捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。 爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...