転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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六百十三話 トップの実力はどれほどか

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「さぁ、好きな物を頼んでください。今日は私の奢りです」

「えっ! い、良いんですか?」

「勿論です。今日は私のせいであなた達には不快な思いをさせてしまいましたからね」

冒険者ギルドから出たミレアナたちは中の上ほどの飲食店に入り、メニューを頼み始めた。

(全く……たかがCランク程度であそこまで偉そうに出来るなんて……自分がクランのリーダーになったつもりなのでしょうか?)

Cランクの冒険者。
世間一般的には、Cランクまで上がることができれば十分に成功者と言える。

だが、ミレアナからすればCランクまで上がれたからといって、善人を上から見下ろすことになる理由にはならない。

「本当にカッコ良かったです、ミレアナ先生! でも、その……本当に大丈夫ですか?」

先程大丈夫だと言われたが、それでも生徒たちは心配に思ってしまう。
衝突した者たちが所属しているクランのランクはB。

ミレアナやザハーク、ソウスケがずば抜けて強いのは知っているが、組織力では向こうの方が上。
本人が問題無いと断言しても、生徒たちが心配してしまうのは無理ない。

「ふふ、本当に大丈夫ですから安心してください。あの者たちは愚か者でしたが、氷結の鋼牙だったかしら? そのクランのトップがバカでない限り、私たちとぶつかることはありません」

組織として面子か、それとも存続できる未来が大事か。
基本的にはどちらも大事だが、本当に賢明な者であれば後者を選ぶ。

ただし、ミレアナの言う通り未来を見通せないバカであれば、堂々とは仕掛けないかもしれない。
しかし裏で暗躍し、ミレアナたちを亡き者に……もしくはあらゆる手段を使って自分たちの道具にしようと動く可能性がある。

「ただ、私は氷結の鋼牙のトップがどういった人物なのか知りません。実際のところはどうなのですか?」

元々氷結の鋼牙というクラン名は耳に入っていたが、詳しい内情は知らなかった。
というわけで、一応今後の為に自分よりも知ってるであろう生徒たちに尋ねた。

「えっと、トップの人はBランク冒険者のフルード・ガルザックです。年齢は二十五歳ですが、まだまだ実力は伸びているらしく、いずれAランクになるかもしれないと言われています」

「なるほど。それなりの強者というわけですね」

それなりではなく、とんでもない強者というのが一般的な見方。
しかし本人の強さもあれだが、今まで戦ってきたモンスターたちの強さが強さなので、BランクやAランク冒険者程度でいちいち驚くことはない。

「そして氷結の鋼牙というクラン名の由来となる、氷魔法を得意としてる。基本的な情報はこんな感じです」

「氷魔法、ですか……いずれAランクになるということは、ある程度の実績は持っているのですよね」

「そ、そうですね。ミレアナ先生と同じく、中級者向けダンジョンのラスボスを一人で倒したり、ワイバーンの群れを倒したり……二十五歳という年齢を考えれば、本当に素晴らしい功績を持っています」

「ふむ……そうですね。その話が本当なら、強者と呼べる部類に入る者でしょう」

含みのある言い方に生徒たちは首を傾げる。
この言葉に、ターリアだけはミレアナが何を言いたいのか分かった。

氷魔法は珍しい属性魔法。
そして属性的には接近戦よりも、遠距離戦に向いている。

もちろん、使い手によっては接近戦が得意かもしれないが……そもそもな話、魔法が得意な人物は必然的に遠距離戦がメインになりやすい。

「ミレアナさん。フルード・ガルザックはロングソードを振るうことも出来ます。氷属性の魔剣を持っているので、それなりの万能タイプです」

「ターリアさんがそう言うなら、本当にそれなりに戦えるのでしょうね」

「ただ……複数のトレントエルダートレント、そしてワイバーンの群れを一人で倒したのか……その部分を疑うのは分かります。広範囲魔法を使うのであれば、発動するための盾が必要ですからね」

フルードの攻撃だけで倒した。
その可能性は十分にあるとターリア、ミレアナも信じているが細かい部分を考えると一人だけの功績ではないのではないかと疑っている。

「将来的にAランクになるにしても、現段階では私やソウスケさんと敵対するにしてもさほど脅威ではないでしょう。私やソウスケさんも多くの敵を殲滅するのは得意ですが、ザハークは一対一でアシュラコングを倒すようね傑物ですからね」

ワイバーンの群れやエルダートレントを一人で倒せたとしても、ミレアナにとっては結局取るに足らない相手であることに変わりない。
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