転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
654 / 1,259

六百三十三話 敵がバカで助かった四人

しおりを挟む
三体のセンチネルが襲撃してきた後、三人は同業者たちの悲鳴を聞いた。

「……行くか」

「「了解」」

聞こえてしまったのはしょうがない。
三人は悲鳴が聞こえた方向へダッシュで向かった。

「おいおいおい……こりゃヤバいな」

悲鳴の元へ向かうと、そこには多数のソルジャーアントが冒険者を襲っていた。

(今がチャンスだな)

幸いにもソルジャーアントは冒険者を囲う様に襲っておらず、冒険者を嘗めているのか……数の暴力で潰す様な攻撃はしてない。

ソウスケが駆け出したタイミングとほぼ同じタイミングでミレアナとザハークも地面を蹴り、四人の冒険者を回収して大きく下がった。

突然現れたソウスケたちの存在に気付かず、速さにも反応することが出来ずにソルジャーアントたちは獲物を取り逃がしてしまった。

「えっ、へ!?」

「おい、生きてるか?」

「は、はい! 生きてます!!」

目の前にいたソルジャーアントが離れた場所にいる。
そして目の前の少年やエルフの美女やオーガ? に助けられた。

それを四人は即座に把握した。
即座に状況を把握した点はさすがプロと言えるだろう。

「問題無く走れるか」

「お、おう。そりゃ大丈夫だが」

「それなら今すぐ全力で走って逃げろ。こいつらは俺たちがなんとかする」

そう言いながら自分たちの獲物を奪ったと認識したソルジャーアントたちが、一斉にソウスケたちの方に向かって襲い掛かってくる。

だが、ソウスケたちは焦らずに全員が無詠唱で攻撃魔法を発動し、ソルジャーアントたちを蹴散らす。

「分かったら全力で逃げるんだ」

「わ、分かった!!」

これ以上は会話をする時間もソウスケたちにとっては無駄。
それを理解した四人は一斉に全速力で逃げだした。

「随分と物分かりの良い方達でしたね」

「こちらとしては有難い限りだ。ただ……なんぜこんなに大量のソルジャーアントがいる場所にあの四人はいたのか……」

彼らがバカではない。
それはなんとなく分かった。

だからこそ、何故あんな絶体絶命の状況に身を置いていたのか直ぐに答えが出なかった。

「……ソウスケ様、あそこに宝箱があります」

「ん? ……本当だ」

大量のソルジャーアントがいる中で、ミレアナは即座に例外である存在を発見。
ソウスケもその例外を確認した。

「つまり、あの四人の斥候は宝箱の解錠に失敗して、罠が発動してしまったってことか」

「その可能性はありそうですね。それか……宝箱の周りに罠が仕掛けられていたか」

「そっちの可能性もありそうだな。宝箱を目の前にして、警戒心が緩んでしまったといったところか」

ザハークの的確な言葉に対し、ソウスケはその気持ちが解らなくもなかった。

(その気持ちは解るな~~~。やっぱりこう……宝箱を目の前にしたら、ウキウキ気分になってしまうよな)

ソウスケの場合は仲間である二人が常時しっかりとしているので、そのような罠に引っ掛かることは滅多にない。

「それにしても…………本当に数が多いな」

「確かに超多いな。でも、全員馬鹿みたいに一直線で俺たちに襲ってくるし……ただただ大掃除してるだけって感じだよな」

「大掃除、ですか。その通りかもしれませんね」

ソルジャーアントのランクはCランク。
甲殻は固く、爪や牙は剣の様に鋭い。

しかしそんなソルジャーアントも三人の総攻撃を食らえばひとたまりもない。
ソウスケは風、ザハークは水、ミレアナは氷の矢や槍をどんどん放ち、そして的確に仕留めていく。

ソルジャーアントもセンチネルと同じくしぶとい生命力を持っているが、体に大きな穴が空けば十秒程度で命を落とす。

全て魔石を砕かずに仕留めるというのは不可能だが、それでもこのままソルジャーアントを倒し続ければ鍛冶や錬金術を趣味とするソウスケにとって良い戦利品となるのは間違いなかった。
しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

虹色のプレゼントボックス

紀道侑
ファンタジー
安田君26歳が自宅でカップ麺を食ってたら部屋ごと異世界に飛ばされるお話です。 安田君はおかしな思考回路の持ち主でわけのわからないことばっかりやります。 わけのわからない彼は異世界に転移してからわけのわからないチート能力を獲得します。 余計わけのわからない人物に進化します。 作中で起きた事件の真相に迫るのが早いです。 本当に尋常じゃないほど早いです。 残念ながらハーレムは無いです。 全年齢対象で男女問わず気軽に読めるゆるいゆる~いストーリーになっていると思いますので、お気軽にお読みください。 未公開含めて30話分くらいあったのですが、全部行間がおかしくなっていたので、再アップしています。 行間おかしくなっていることに朝の4時に気づいて右往左往して泣く泣く作品を削除しました。 なかなかに最悪な気分になりました。 お気に入りしてくださった方、申し訳ありません。 というかしょっちゅう二行も三行も行間が空いてる小説をよくお気に入りしてくださいましたね。 お気に入りしてくださった方々には幸せになってほしいです。

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

処理中です...