転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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六百三十七話 目的にピッタリのマジックアイテム

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「はぁ~~~~、ある意味重労働だったな」

「そ、そうですね」

「同感だ」

ミレアナとあまり汚れなどを気にしないザハークもソウスケと同じ様に腕に魔力を纏ってグローチの魔石を回収。
そしてグローチの死体はその場で解体せず、亜空間の中に放り込んだ。

(解体士の人たちには悪いけど、あとは頼もう)

普段なら戦ったモンスターの死体はなるべく自分たちで解体しているが、グローチの死体だけは解体しようという気が起きなかった。

(マジでなんでこんなにイレギュラーがいきなり……恐怖感で言えば、パラデットスコーピオンの上位種と戦った時よりも凄かったな)

虫系モンスターの中で、グローチよりも圧倒的に強い力を持つパラデットスコーピオンの上位種。
だが、そんな強力な力を持つモンスターよりも、ソウスケはグローチに恐ろしさを感じた。

他人とそういった話になったとしても、虚勢を張ることなくグローチの方が恐ろしいと答えられる。
そこまでの自信がソウスケにはあった。

「お疲れ様です、ソウスケさん」

「二人ともお疲れ様。さて……ちょっと移動したら休憩しよっか」

「そうですね」

体力的にはまだまだ動ける。
しかし精神的な面でガッツリダメージを受けたので、今の三人には少し休息が必要だった。

大量のグローチがいた場所で休憩する気にはなれず、三人は少し移動した場所で腰を下ろして休息を取った。

そんな窮地から逃れて休息を取っているソウスケたちと場所は変わり、先日ミレアナを勧誘しようとして恥をかかされたギリスはあの時一緒にいた仲間と共に、ソウスケに襲い掛かる計画を立てていた。

「しかしギリスさん、直ぐに動いて大丈夫ですか? もう少し時間が経ってからの方が……」

「バカを言うな。今回の一件、私たちだけではなく……氷結の鋼牙がそこら辺の一冒険者に馬鹿にされたのだ。この屈辱は直ぐに返す」

ミレアナは氷結の鋼牙を侮辱したつもりはなく、ギリスだけに脅迫したつもりだった。
しかしギリスの中で都合良く脳内変換されてしまい、ギリスは自身の為という理由に加え、クランの為にという大義名分が加わっていた。

個室に集合しているメンバーは普段からギリスと共に行動していることもあり、少し思考が貴族っぽくなっていた。
実際のところ、取り巻きには貴族の令息が数人ほどおり、ギリスの考えに激しく同意している。

「ですが、奴らはダンジョンに潜っています。そう簡単に発見することは出来ませんよ」

「ふっふっふ、安心しろ。それについてはなんとなかる。しかし……ダンジョンに潜っているとは、なんとも幸運なことだろうか……こんなにも早く始末できる機会が来るとは」

ダンジョンの中で人が殺されようと、その死体は時間が経てばダンジョンに吸収されてしまう。
襲撃された人物が地上に戻らなければ、犯人捜しをすることすら出来ない。

「先日、運良く導きの書を手に入れたのだ」

ギリスが収納袋の中から取り出したマジックアイテムを見て、メンバーたちは驚き固まった。

導きの書とは絶対にダンジョンの宝箱からしか入手できないマジックアイテム。
ランクは導きの書の質によって変わるが、メンバーたちはギリスの自信満々な表情を見る限り、低ランクの導きの書とは思えなかった。

そして仮に低ランクの導きの書であったとしても、欲している者。
探している人物の情報などの情報がハッキリとではないが、手に入る。

ソウスケとその他のメンバーの居場所を見つけ出し、襲撃する。
その目的を果たす道具としてこの上なく役立つ道具といえる。

「さ、流石ですギリスさん!! こんなマジックアイテムを用意していたなんて」

「ふっ、偶々だ偶々。だが……これさえあれば、奴らの居場所など丸裸だ」

ギリスが本当に運良く手に入れた導きの書のランクは四。
使用すれば、ソウスケの居場所……つまり、上級者向けダンジョンの何階層。そして時間制限付きではあるが移動している周辺の道が分かる。

ギリスたちは数十分ほど襲撃について話し合い、翌日早速上級者向けダンジョンに出発することを決めた。
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