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六百九十二話 心中は御免

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(クソが、クソが、クソガァァアアアアアアアアッ!!!!!! なんで、俺の攻撃が当たらねぇんだ!!!!)

今まで……間違いなく、過去最凶の強さを振るえている。
その自覚はあるが、自分の攻撃が全くクリーンヒットしない。

偶に掠ることはあるが、相手に呪いを与える斧での攻撃は全く当たらない。
それだけではなく、パズズが意識して動かしているサソリの尾や……鷲の翼による攻撃も殆ど当らない。

なのに敵の……ザハークの攻撃だけはそこそこ自分に当っている。
ランナーズハイなどに近い状態である今のバンディーに痛みはないが、自身が放つ攻撃は当たらず……相手の攻撃は自分に命中している。

その事実が加速度的にバンディーをイライラさせる。

(このオーガは、一体何なのだ!? 過去を見返しても……こんな個体はいない筈だ!!)

バンディーとどうかしたバズズは苛立ちこそしていないが、ザハークの身体能力は魔法に……諸々の戦闘力を容易に受け入れられなかった。

悪魔の中で上位、最上位に位置する個体ではないが、一般的なオーガ……その上の上位種であれば一人でも勝てる。
キングなどになってくると話は変わるが、それでもバンディーの中に入り、一つになればキングにすらも勝てる自信があった。

だが、目の前のキングではないオーガを相手に……自分たちは有効な一打すら与えられていない。
見た時から亜種か希少種だというのは解っていた。

とはいえ所詮通常のオーガでの話。
それを考えればこの状態になった自分たちが負ける筈はない、そんな驕りがあった。

オーガキングにも勝てるという自信は間違っていない。
実際に戦えば勝利はかなりのもの。

「はっはっは!!! どうした、これで終わりではないだろう!!!」

まだ何か力を残しているのではないか。
さくっと潰さなければならないということは、ザハークも理解している。

しかしまだ相手が強力な一撃を持っているなら……使ってみてほしい。
そしてそれを全力で打ち砕きたい。

そんな純粋な闘志が徐々に拮抗を崩していく。

「あらら……バンディーの体がどうこうなるまえに、ザハークが潰してしまいそうだな」

「それはそれで、という結果ですね」

「だな」

ザハークが強敵と戦う状態になってから、気分が乗ってきた。
戦えば戦う程相手の動きを学習し、今……バンディーの斧を流麗の様に躱し、手に持つ斧……大樹で体を斬り裂いた。

「ッ、ウザってぇんだよ!!!」

「そうだ、その意気だ!!!」

呪いを掻き消す効果を持つ大樹で斬られようと、瞬時に傷口を再生させて挑むバンディーに……その終始変わらない態度で襲い掛かってくる敵に喜んでいるザハーク。

(……案外、長くなるか?)

自分の予想は外れたかもしれない。

ソウスケがそう思った瞬間、急激にバンディーの動きが鈍くなった。

「なっ!!??」

明らかに自分の体から力が……パズズが抜けた。
それが分かったバンディーは驚かずにはいられない。

まだ目の前のぶっ殺したい敵を殺せていないのに、何故自分の体から抜けていったのか。

「ふむ、そうか……ならばしかたない」

体内からパズズが抜けたバンディーの体を確認した。

「ッ!!!!???? ふ、ふざけん、な」

「お前たちに殺され者たちも同じ気持ちだ」

バンディーの体はソウスケが予想していた通り、限界を迎えてしまい……パズズが体内から抜けると、ボロボロの状態となっていた。
これ以上体内にいれば、パズズも傷を負う……もしくは死んでしまう可能性がある。

そこでもうバンディーと戦い続けるのは無理だと判断し、自己判断でバンディーの体から抜け出した。

そんな状態になったバンディーに対し、ザハークは躊躇うことなく悪党に大樹で止めを刺した。

「悪く思うな、バンディー。お前の望みには十分応えてやった。ただ、相手が悪かった」

「その通りだな」

「ぬっ!?」

こうなるかもと予想していたソウスケの行動は速かった。
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