725 / 1,259
六百九十五話 ご機嫌取り
しおりを挟む
盗賊団討伐の報酬額アップが決まった後、ソウスケは凍らせた悪魔……パズズの体の一部を消そうとした。
勿論、ギルドの上役はそれを止めようとした。
既に死んでおり、体の一部だけとはいえ、悪魔の体は充分に利用価値がある。
それなりの相場で売れる為、ギルドも良い値でソウスケから買い取ると伝えた。
だが……ソウスケは知っている。
この街に裏の連中を使い、冒険者を攫おうと考える糞野郎がいるということを……ソウスケは知っているのだ。
仮にそういった連中から狙われていたと知らなければ、別にギルドにパズズの一部を売っても構わないと思ったかもしれない。
しかし、ギルドにその気がなくとも、体の一部を買い取った人物がそれを悪用しようと考える可能性が、決してゼロとは言えない。
その為、ソウスケは凍らせたパズズの一部を完全に消すことに対して、一歩も譲らなかった。
ソウスケの意志を最優先にと考えるミレアナとしては、当然その考えを尊重する。
パズズがザハークと戦い、バンディーと同化する様子を見ていたラップたちとしても、残った体の一部は決してしまった方が良いという考えに賛成だった。
ソウスケの真剣な表情に加えて、ベテランであるラップたちも体の一部は消してしまった方が良いと賛成してしまっている状況に、さすがの上役も買取を諦めた。
(あんまりギルドに反抗するのは良くないとは思うが、ここは譲れない)
一度アホな学者に狙われたことがある身としては、パズズの体はどうしても悪用されてしまうとしか思えない。
ソウスケたちは上級者向けダンジョンを攻略すれば、もう学術都市に用は無いのでまた別の街に向かうが、その後に体の一部が悪用されて一般人や冒険者、学生に被害が及ぶかもしれない。
そういった最悪な未来が引き起るかもしれないので、そこは絶対に譲れなかった。
「……ランクアップはしてくれるんだな」
ギルドの意見に反抗してしまったので、偉業を達成してもランクアップすることはまずない。
そう考えていたソウスケだが、ギルドは今回の討伐戦でソウスケたちが成し遂げた内容を考慮し、特別にCランクへのランクアップを行った。
ギルドとしてもソウスケが何を考えているのかは察しており……何より、ソウスケやミレアナたちのような実力者を敵に回したくない。
冷静な判断を下せる者が上役だったため、特に揉め事が起こることはなく……寧ろギルド側はソウスケたちのご機嫌取りをする流れとなった。
「ソウスケ君……あの強さでまだDランクだったんだな」
報告など諸々が終わった後、冒険者なら当然……宴会を行う。
そんな中、ラップは解り切っていたことを口にした。
「ラップさん、それは元々分かってましたよね」
「いや、そりゃ勿論分かってたよ。ギルドが嘘の情報を渡してくるとは思わないからな。でも、ソウスケ君やミレアナさんの実力を考えれば、どう考えてもDランクってのはあり得ない」
ラップの言葉にCランクの者たちは全員頷いた。
ジープたちも少々癪だが、ラップの言葉に同意せざるを得なかった。
「元々ランクアップには興味なかったんで……今回は何もせずにギルドがランクを上げてくれるって言ってくれたんで、お言葉に甘えたって形ですよ」
ソウスケたちは、そもそも冒険者ギルドの依頼を受けることが少ない。
故に、本来はギルドからの評価はそこまで高くならないのだが……ソウスケたちは偶にどさっと大量の素材や肉をギルドに売っている。
それだけでソウスケたちがどれだけ強いのか解る。
加えて、偶にダンジョンに潜っている冒険者たちが、ソウスケたちに助けられた……もしくは、金を払えば上手い料理をご馳走してくれたといった内容を話しており、性格的な面でも優秀であることが窺える。
それらの内容から、ソウスケとミレアナが短期間でDランクからCランクに昇格したのは妥当なギルドの判断と言える。
勿論、ギルドの上役はそれを止めようとした。
既に死んでおり、体の一部だけとはいえ、悪魔の体は充分に利用価値がある。
それなりの相場で売れる為、ギルドも良い値でソウスケから買い取ると伝えた。
だが……ソウスケは知っている。
この街に裏の連中を使い、冒険者を攫おうと考える糞野郎がいるということを……ソウスケは知っているのだ。
仮にそういった連中から狙われていたと知らなければ、別にギルドにパズズの一部を売っても構わないと思ったかもしれない。
しかし、ギルドにその気がなくとも、体の一部を買い取った人物がそれを悪用しようと考える可能性が、決してゼロとは言えない。
その為、ソウスケは凍らせたパズズの一部を完全に消すことに対して、一歩も譲らなかった。
ソウスケの意志を最優先にと考えるミレアナとしては、当然その考えを尊重する。
パズズがザハークと戦い、バンディーと同化する様子を見ていたラップたちとしても、残った体の一部は決してしまった方が良いという考えに賛成だった。
ソウスケの真剣な表情に加えて、ベテランであるラップたちも体の一部は消してしまった方が良いと賛成してしまっている状況に、さすがの上役も買取を諦めた。
(あんまりギルドに反抗するのは良くないとは思うが、ここは譲れない)
一度アホな学者に狙われたことがある身としては、パズズの体はどうしても悪用されてしまうとしか思えない。
ソウスケたちは上級者向けダンジョンを攻略すれば、もう学術都市に用は無いのでまた別の街に向かうが、その後に体の一部が悪用されて一般人や冒険者、学生に被害が及ぶかもしれない。
そういった最悪な未来が引き起るかもしれないので、そこは絶対に譲れなかった。
「……ランクアップはしてくれるんだな」
ギルドの意見に反抗してしまったので、偉業を達成してもランクアップすることはまずない。
そう考えていたソウスケだが、ギルドは今回の討伐戦でソウスケたちが成し遂げた内容を考慮し、特別にCランクへのランクアップを行った。
ギルドとしてもソウスケが何を考えているのかは察しており……何より、ソウスケやミレアナたちのような実力者を敵に回したくない。
冷静な判断を下せる者が上役だったため、特に揉め事が起こることはなく……寧ろギルド側はソウスケたちのご機嫌取りをする流れとなった。
「ソウスケ君……あの強さでまだDランクだったんだな」
報告など諸々が終わった後、冒険者なら当然……宴会を行う。
そんな中、ラップは解り切っていたことを口にした。
「ラップさん、それは元々分かってましたよね」
「いや、そりゃ勿論分かってたよ。ギルドが嘘の情報を渡してくるとは思わないからな。でも、ソウスケ君やミレアナさんの実力を考えれば、どう考えてもDランクってのはあり得ない」
ラップの言葉にCランクの者たちは全員頷いた。
ジープたちも少々癪だが、ラップの言葉に同意せざるを得なかった。
「元々ランクアップには興味なかったんで……今回は何もせずにギルドがランクを上げてくれるって言ってくれたんで、お言葉に甘えたって形ですよ」
ソウスケたちは、そもそも冒険者ギルドの依頼を受けることが少ない。
故に、本来はギルドからの評価はそこまで高くならないのだが……ソウスケたちは偶にどさっと大量の素材や肉をギルドに売っている。
それだけでソウスケたちがどれだけ強いのか解る。
加えて、偶にダンジョンに潜っている冒険者たちが、ソウスケたちに助けられた……もしくは、金を払えば上手い料理をご馳走してくれたといった内容を話しており、性格的な面でも優秀であることが窺える。
それらの内容から、ソウスケとミレアナが短期間でDランクからCランクに昇格したのは妥当なギルドの判断と言える。
126
あなたにおすすめの小説
異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』
アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた
【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。
カクヨム版の
分割投稿となりますので
一話が長かったり短かったりしています。
無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった!
「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」
主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ
一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。
百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。
平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。
そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。
『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる