転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
736 / 1,259

七百六話 同じエルフ?

しおりを挟む
「はぁ~~~、生き返った~~~~」

「いやぁ~~、本当にヤバかったから助かったぜ」

「ソウスケ君、本当にありがとうございます。あなたの施しがなければ、私たちは地上に生きて帰れませんでした」

「あの、皆さんが感謝してくれてるのはもう解ったんで、頭上げてください」

全員にポーションと魔力回復ポーションを渡し、ワードたちは完全回復した。

「いやいや、マジで感謝してもし足りないって感じだぜ。にしても……お仲間のエルフの確か……ミレアナさんだったか? あれ凄いな」

あれとは、モンスターの体内から水の魔力操作を応用して一気に血を引き抜く作業のこと。

「あはは、そうですね。ミレアナがあんなことを出来るお陰で、いつも解体作業が早く終わるんですよ」

「……素晴らしい魔力操作だ」

エルフであり、同じく魔法を得意とするエルはミレアナが次々にフレイムジャッカルの血を抜いていく様子に、思わず見入っていた。

(私と同じ、エルフ……エルフ?)

何やら違和感を感じたエルだが、そこで答え合わせをしようとは思わなかった。

「それじゃあ、俺がザハークと一緒に見張ってるんで、スラウザーマンモスの解体をしちゃってください」

「……何から何まですまねぇな。後でこいつの肉ご馳走するからちょっと待っててくれ」

「楽しみに待ってます」

ソウスケはその場から離れ、先程からミレアナの護衛をしていたザハークの元へと移動。

「お待たせ……ふっ、ちょっと羨ましいって顔してるな」

「そうだな……あの四人はこの階層でAランクのモンスターと遭遇できた。それを考えると、羨ましい限りだ」

「Aランクモンスターの中で、実際に見た中では一番の大きさだしな」

それなりに冒険者として多くのモンスターを見てきたソウスケだが、その中でもスラウザーマンモスはとびっきりの大きさを持っている。

「パワーとタフネスはかなり高いだろうな。でも、ザハークならスピードでかき回せるだろ」

「体の大きさなどを考えれば、赤毛のアシュラコングやパズズと同化したバンディーの方が速く、小回りが利くだろうな……だが、それは勝つ事だけに集中した動きだ」

自分よりも圧倒的な大きさを持つモンスターが相手……そうなれば、ただ自身の脚力を活かして相手の攻撃を全て躱し、チマチマと攻撃を当ててダメージを与え、時間を掛けて倒す。

そんなやり方、非常につまらない。

「悪いが、あんな敵と遭遇できたのなら……俺は楽しませてもらう」

「そうか……良いんじゃないか? てか、悪いとか全く思ってないし、よっぽどのことがない限り止めないさ」

今まで強敵と思える相手と遭遇し、ザハークが一人で挑むとき……今のところソウスケが止めたことはない。

「でも、パラデットスコーピオンの亜種? あんなのが相手だと……援護ぐらいはするかもな」

「パラデットスコーピオン…………あぁ、あれか」

ザハークが生まれたダンジョンのラスボス部屋に、偶に出現する最悪のモンスター。

(懐かしいモンスターだな。あの時よりも俺は強くなったが……確かにあの手数の多さは厄介極まりない)

ザハークも武器を振り回しながら魔法を使ったりすることは出来るが、パラデットスコーピオンの亜種は両手の挟みに三本の尾。
そして口から毒液なども吐き散らかすので、非常に手数が多い。

通常のパラデットスコーピオンがラスボスであれば、上位ランクの冒険者一パーティーでも討伐出来るかもしれないが、亜種になると話は変わってくる。

「そうだな。あぁいったモンスターが相手なら、二人の手を少し借りよう」

「そうしてくれると仲間としては安心だ」

ソウスケもあの頃より強くなった自覚があるが、パラデットスコーピオンの亜種はあまり一人で立ち向かいたくなかった。

(昆虫系全般が苦手って訳じゃないけど……うん、万が一のことを考えたらな)

なんて言い訳を考えているが、とりあえずパラデットスコーピオンの亜種に若干の苦手意識があることに変わりはなかった。
しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

【めっさ】天使拾った【可愛ぃなう】

一樹
ファンタジー
酔っ払いが聖女を拾って送迎する話です。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

処理中です...