転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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七百四十五話 甘めな値段設定

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三人とも上級者向けダンジョンのラスボスであるクリムゾンリビングナイトを一度倒した後、再び趣味の時間を始めた。

ソウスケとザハークは鍛冶を行い、ミレアナを錬金術を淡々と行い、一歩ずつ経験値を積み重ねていく。

偶に上級者向けダンジョンで体が鈍らない様に動かすことはあれど、一週間に一度程度の話。
しかも、三人一緒に潜るのではなく、バラバラで潜っている。
当然潜るのは、四十一階層以降……下層と呼ばれる階層。

普通に考えて、馬鹿かと言われる行為だが、三人の場合は本当に問題がない。
潜るといっても三人とも懐中時計を持っているので、丁度計算して夕食までには戻ってくる。

レベルが高いダンジョンに潜る日々も楽しいが、趣味を存分に極める日々も充実感がある。

(二週間ぐらいしたら、別の街に移ろうとか思ってたけど……案外一か月ぐらいこのままでも良いかもな)

面白そうな街の情報を集めてはいるが、今のところ興味を引く情報は集まっていないが、旅をしながらそういった類の情報を集めるのもありだと思っていた。

しかし、それ以上に存分に鍛冶や錬金術にのめり込む日々を楽しく思っていたある日の休憩時間、ソウスケとザハークから鍛冶ギルドから借りている鍛冶場に、一人の冒険者が訪れた。

「どうぞ」

「ありがとう」

二十代前半の青年はソウスケから受け取った果実水を飲み、その丁度良い冷たさに少々驚きながらも、直ぐに本題に入る。

「俺はフルガス。Bランクの冒険者だ。ソウスケ君、君に俺のロングソードを造って欲しい」

「ロングソードですか……良いですよ」

趣味に没頭する時間ではあるが、客からの依頼を受けるのも悪い気はしない。

(あれ? でも、この人って確かロングソードとショートソードの二刀流で戦う人だったよな?)

酒場で飲み食いしていれば、学術都市にやってきた冒険者の情報が耳に入ってくる。
フルガスは最近学術都市にやって来た冒険者であり、ソウスケの噂を聞いて鍛冶場を訪れた。

「あの、確かロングソードとショートソードの二刀流がメインですよね。お金に余裕があるなら、ショートソードの方をザハークに頼みますか?」

「っ、そうだな……うん、お願いしようかな」

ソウスケだけではなく、ザハークという鬼人族に見えるオーガの希少種という超珍しい存在の情報も耳に入っているので、自身の貯金額を思い浮かべ……数秒で即決した。

「では、属性の方はどうしますか? 以前まで上級者向けダンジョンを潜っていたので、こちらで火属性のモンスターに関する素材ならあります。ただ、その他の属性を持つモンスターとなると、フルガスさんの方で持ってきてもらう形になります」

「素材はこちらで用意している」

そう言うと、フルガスは収納袋の中からモンスターの素材と鉱石を取り出した。

「……良い素材ですね」

水属性を持つBランクモンスターの素材と鉱石。
加えて、ミスリル鉱石もあるため、業物を造るには十分な素材。

目の前の素材で業物……名剣を造れなければ、自分の腕はゴミ以下。
そう思ったソウスケの心は、絶対に良作を造ろうと燃えていた。

「客か」

「ザハーク、これからの素材を使って、ショートソードを造って欲しいんだけど、できるか?」

「ほぅ……あぁ、引き受けた」

受けてくれると解ってはいたが、一応ザハークに確認を取る。

そして出来上がったショートソードとロングソードのランクに関しての販売価格を相談。

「……なぁ、本当にこの価格で良いのか?」

以前ソウスケやザハーク、ミレアナが露店で販売した武器が、あまりにも安いと話題になった。

その話を聞いたからこそフルガスはソウスケの仕事場を訪れたのだが、実際に相談額を聞き……本当にその値段で良いのかと疑ってしまう。

「えぇ、構いませんよ。素材はそちらが出してくれるんで」

直接販売する立場なので、店で売られている物と比べれば安くなるが……ソウスケの場合は、そこまで金額は気にしない立場なので、値段設定が正直甘い。

「それでは、三日後の昼頃にまた来てください」

「あぁ、楽しみに待ってるよ」

フルガスと別れ、休憩を終えた二人は本日は予定していた作業を行い、翌日の朝にフルガスから依頼された武器の制作を始めた。
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