転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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七百九十五話 誰よりも先に戦場へ

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ソウスケたちの戦争二日目が始まる約一日前……もう一人のソウスケは結局街には入らず、野宿をしていた。

元々本体から十分な食料を貰っているが、それらがなくとも、周囲のモンスターを倒せば一先ず肉は手に入る。

(やっぱり、街に入って冒険者や騎士たちと一緒に戦うのは得策じゃないよな……うん、俺一人で頑張ろう)

分身は蛇腹剣のお陰で多くのスキルを使うことができ、死体を食らえば敵のスキルをも喰らうことが出来る。
今回の戦争は……人前では言えないが、ソウスケにとって自身の戦力を増加させる良い機会でもあった。

加えて、武器は蛇腹剣だけではなく、ソウスケたちがダンジョンの宝箱から手に入れた武器やマジックアイテムも多くあっており……レヴァルグと対を為す必殺の武器、水龍の蒼剣を持っている。

(水龍の蒼剣は……いざという時のために、もっと使い慣れておいた方が良いんだけど……斬撃が飛び過ぎて、うっかり味方の冒険者とか騎士を斬りたくないしな)

付与されている能力も素晴らしいが、一番のポイントはその切れ味。
魔力を纏って放たずとも、ただ全力で振るうだけで斬撃を飛ばすことが出来る。

先日ソウスケがタイマンで戦った特異なミスリルゴーレムが相手でも、水龍の蒼剣を使用していれば、豆腐の様にスパッと切断し、一瞬で決着が着いていた。

「とはいえ、なるべく姿を味方に見られず倒すのは決定事項なんだが……今の俺という存在を考えると、大将まで狩ろうとしない方が良いよな」

分身体には身分証がなく、本来は味方であろうエイリスト王国側の者たちも、分身ソウスケを簡単に味方だと信用出来ない。

「そうなると、なるべくルクローラ王国の戦力を削ることだけに集中するか」

明日からどう動いていくかが完全に決まり、夕食を食べ終えた分身ソウスケは就寝の準備を始め、結界タイプのマジックアイテムを発動。

安心して睡眠を取り、翌日……開戦の合図が鳴る前には無事に目覚め、朝食の準備を始めた。

「確か、どっかの国が開戦の合図を行うんだよな」

ぶっちゃけ所属不明に思われる自分なら、開戦前に攻めるのもありではないか? と少しだけ考えたが、最終的にエイリスト王国が勝っても、後から文句を言われるのが解りきっている為、反則行為はしないと考えを改める。

「……おっ、ようやくか」

開戦の合図が聞こえたソウスケは、直ぐにその場から駆け出した。
既に準備運動は終えているため、思いっきり動いたところで問題はなく、朝飯を戻してしまうこともない。

(さっさと戦場に行かないとな)

存在がバレたくない分身ソウスケにとって、誰よりも先に戦場に到着しておきたい。

身体強化以外の強化系スキルも使用し、現時点で最速のスピードで主戦場となる森へ到着。

(向こうから来てるってことは、どう考えてもルクローラ王国の連中だよな!!!)

分身ソウスケは身に付けているブーツやマント、隠密系のスキルを発動しながら接近。

まず相対した集団の数は八人。
冒険者や騎士、傭兵も混ざった集団であり、その戦闘力は最低でも冒険者的にはCランクの最上位。

そんな強者たちであっても……全員が分身ソウスケの接近には気付かなかった。

「っ、そこだ!!!!」

斥候の冒険者がいち早く仮面を身に付けた怪しいマント男に気付き、感知に長けた魔法使いが瞬時に攻撃魔法を放つ。

まだソウスケの攻撃が届く前であり、冒険者たちは最良の判断で迎撃を行った。

ただ……その短時間で放てる攻撃だけでは、分身ソウスケの攻撃を防ぎきるのは不可能だった。

「がっ!?」

飛来した風の斬撃をギリギリ躱すことが出来ず、傭兵の左腕の肘から先が絶段。

もう一つの炎斬に関してはタンクタイプの騎士が対応に成功したが、その騎士の額には薄っすらと冷や汗が浮かんだ。
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