転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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七百九十七話 分身、本体、早くも使用

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「貴様、いったい何者だ!!」

即席のチームとはいえ、一定以上の連携度まで上げていた。

全員が直ぐに警戒心をマックスまで上げ、殺しに掛かった。
それでも……現在、部隊の残る人物はリーダー格の男のみ。

「ここは戦場だろ。答える必要はない」

分身ソウスケはそれだけ告げ、直ぐに駆け出す。

誰よりも動き、自分という大きな戦力を無駄にしないため、なるべく無駄な時間を過ごさない。
故に、残りのリーダーである男と無駄に話すつもりはない。

「くっ!!!」

焦ったリーダーは、全く過程を無視して大技を放った。
それが一矢報いるためだったのかは、本人にしか解らない。

何はともあれ、いきなり大技を放たれたとしても、解りやす過ぎる動きに反応出来るスピードを有しており、後ろに誰もいないことを確認ししつつ、回避。

そして警戒心を強めながら、渾身の風撃斬を放つ。

(やはり、賭けに出たとしても、逃げるべきだった、か)

放たれた一撃はリーダーの男が有していた防御系のマジックアイテムの効果を斬り裂き、そのまま首を切断。

(使える者は回収して、さっさと喰らおう)

戦場では当然の権利を行使し、興味を持った武器などは回収。
その他の物や、死体は直ぐに蛇腹剣に食べさせた。

「……これでまた、少し強くなれたな」

少しだけ休息を取り、魔力も回復させた後、ソウスケは即座に移動。

数分後には別の部隊を発見。
分身ソウスケは収納袋の中から一つの弓を取り出し、十数本の水矢を一斉に総射。

一つ一つの矢は決して大きくはない。
だが、そのスピードと貫通力は並ではない。

基本的に敵も一つの部隊として行動する筈なのに、何故か動く気配は一つ。

ルクローラ王国の部隊に所属する斥候は、その気配がモンスターかと思った。
しかし次の瞬間、魔力が展開されたことに気付き、即座に仲間へ襲撃を伝える。

瞬時にタンク役の騎士が前に出るが、魔力操作の技術が一流……もしくはそれ以上の力を持つ分身ソウスケであれば、魔力を消費して生み出した矢の軌道を変えることなど容易。

数矢だけはタンクの騎士に阻まれたが、大盾すら貫通させ、騎士に少なくないダメージを与えた。

(少しは乱せたかな)

即座に魔剣二刀流に切り替え、複数の斬撃を放ちながら接近。
当然それだけでは殺れないが、牽制するには十分な威力。

魔力の補給に関しては蛇腹剣を使用すれば良い。
そんなチート手段を持っている分身ソウスケは、魔力量の消費量を考えず、本当の意味で敵の殲滅を行える。

周囲に味方と言えるエイリスト王国の部隊がいないか確認する必要はあるが、それでも分身体とはいえ手札を隠さず戦えるソウスケの戦闘力はすさまじく……結果的に、五分と掛からず二つ目の部隊を消滅させることに成功した。

「さて、回収回収っ!?」

ほんの一瞬だけ気を抜いてしまった瞬間、一本の属性魔力が纏われた矢が飛来。

反射的に体をのけ反らせた分身ソウスケはなんとか回避に成功したが、地面に刺さった矢がそのまま突き進む貫通力に脅威を感じた。

「そりゃ、戦場だもんな」

気が緩んだところで、確実に仕留める。
その戦り方を否定できるわけがない。

ただ……二戦目でも少なくないダメージを負い、疲労を感じていることもあり、直ぐに休息を挟みたいと思った分身ソウスケは……早くも切り札を取り出した。

(逃げずに来てくれるのは、有難いな)

分身ソウスケが取り出した得物は……そう、レヴァルグと対をなす切り札の一つ、水龍の蒼剣。

「恨むなよ」

再度強化系のスキルを重複発動し、今回は残り魔力の残量を考え、身体強化以外の強化系スキルは、速さのみの強化系スキルに限定。

水龍の蒼剣の切れ味を考えれば、腕力など不要。

その考えはまさに現実となり、盾を……矢も、魔法も鎧も関係無く、全てを切断した。
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