転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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八百二十話 やや壊れた

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SIDE ソウスケ分身

ソウスケ本体たちがルティナ・ヴィリスト率いる強敵部隊と激戦を繰り広げていた頃……ソウスケ分身の方にも、強敵と呼べる部隊が送られてきていた。

ソウスケ本体たちが所属する部隊も撃破率が高く、高戦力が揃っているため、ルクローラ王国側からすれば捻り潰したい存在。
しかし、たった一人で行動しながらも、その戦闘力は並の強者よりも上であり、多才な攻撃方法を持ちながらエイリスト王国側の部隊を援護するソウスケ分身も、非常に捻り潰したい存在だった。

「がっ!?」

「んだてめぇは!!!!」

「……」

「ち、く……しょぅ」

今日も今日とてソロで行動し、モンスターたちから奪ったスキルを存分にフル活用しながら、ノーダメージでルクローラ王国側の部隊を殲滅していく。

本日も順調に敵を潰していくソウスケ分身だが、自身がルクローラ王国側から要注意人物としてマークされていることは、まだ知らなかった。

(……もう、かなりの冒険者や騎士、傭兵たちを仕留めてきたけど……まだ続くのか)

戦闘部隊を殲滅しただけで、敵の大将は討ち取っていない。
それを考えればまだ終わる訳がないのだが、今までソウスケ分身が殲滅してきた者たちは……決してルーキーを卒業した者や、中堅どころだけではない。

今後のルクローラ王国に必要であろう強さを持つ者たちも、容赦なく葬り去ってきた。

(俺だけじゃなくて、本体の方も順調に猛者を倒してるはず……こっちが一瞬の隙を突かれて大将を狩られたりしない限り、ルクローラ王国にとっては痛過ぎる敗戦になるんじゃないか?)

心の中で合掌を送りながら、周囲を警戒しつつ同じ国の部隊が押されていないかを調べる。

「っ!!!!!!」

少し……ほんの少し、油断していた部分は間違いなくあった。
ただ、気配感知を常に使用していたのが功を奏し、一瞬で切り札を抜刀することに成功。

「なるほど、噂通りの化け物……いや、死神だね」

前方から大量の気配感知を感知し、切り札を抜刀。

水龍の蒼剣から放たれた斬撃刃は並の防御では止められず、急接近してきた存在の大半を切断することに成功。
しかし、当然の様にその一太刀だけで死なない猛者がいる。

ソウスケ分身を化け物から死神と訂正した男の名は、レジル・アルバティア。
多くの男が羨み妬むイケメンフェイスと透き通る美しい金髪を持ち、レイピアの扱いを得意とする色々と完璧な猛者。

加えて、その他にも初撃の一太刀から逃れた猛者が複数人いる。

(全力で、殺せっ!!!!!!!!)

心の中で盛大に吼え、自身に言い聞かせる。

装備の質……特に、武器の質では劣るとは思えない。
実際、レジル・アルバティアたちは水龍の蒼剣を越える武器を有していない。

使えるスキルもソウスケ分身の方が豊富……だが、数のアドバンテージはやはり恐ろしい。
初撃の一太刀で数が減ったとはいえ、まだレジル・アルバティアを含めて十人ほどの猛者が残っている。

彼らは戦場を荒らしまわる死神を葬るために集められた存在であり、連携度も並ではない。

それを察してかそうでないか……それは本人にしか解らない。

「はぁあああああああっ!!!!」

顔だけではないレジル・アルバティアは立場上リーダーではあるが、ガンガン前に出て自慢のレイピアに炎を纏い、高速刺突を連発。
前衛は彼一人ではなく、高速刺突のタイミングを読んで繰り出される双剣技に、絶妙なタイミングで後方から襲い掛かるランサーの風刺。

高威力魔法の詠唱が完成されれば、前衛たちはこれまた絶妙なタイミングで後方に下がる。

ソウスケ分身も出来れば魔力を消耗せずにダッシュで避けたいが、ハイレベルなアーチャーがそうはさせない。

(ああああああぁぁああああああああ!!!! クソクソクソクソクソクソクソ、クソがっアアアアアアアッ!!!)

一息つく間もない強襲に、ややぶっ壊れてしまった。
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