転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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八百二十五話 投擲悪魔と黒衣の死神

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「おらっ!!! ぅおらっ!!!! ぬおりゃっ!!!!!」

現在、ルクローラ王国側の防御面が強くなってきた道中で……ソウスケ本体は切り札であるレヴァルグを取り出し、その力を惜しみなく発揮していた。

魔力を消費して全力でぶん投げ、即回収。
そして再び全力投球を行い、回収……この流れを何度も繰り返し、自分たちに襲い掛かる的の戦力をゴリゴリに削っていく。

目の前の光景を見た同じソウスケ本体たちと部隊の強者たちは……最初、目が点になるほどの衝撃を受けた。

元々ソウスケ本体と同じ部隊に所属していたメンバーから話は聞いていた。
しかし、話で聞くのと実際にその光景を見るのとでは、受ける印象に大きな差がある。

(こりゃあ……はは、戦争では可哀想もクソもねぇもんだが、こいつはルクローラ王国側の連中が少し会話層に思えてきたな)

レヴァルグによる投擲攻撃は、今回が初の使用ではない。
これまでの戦争中でも何回が緊急時に行われてきた。

放たれた相手は……自分たちが攻撃されたと思った瞬間には、滅炎に焼かれて死亡。
仲間が殺されるのを目の当たりにした者は、気を取られたその一瞬の隙を突かれ……同じ攻撃で殺されてしまう。

(僕たちも、きっちり仕事しないとね!!!!)

レヴァルグの投擲攻撃がどれだけ強力であっても、一つの部隊を一瞬で潰すのは少々難しい。

ルクローラ王国陣営まであと少し……防衛ラインに位置するということもあり、先日戦闘となった部隊より平均レベルが高い。
予測、圧倒的な反応速度によって回避に成功した戦闘者たちを、彼らは一人も逃さず仕留めていく。

遠距離攻撃にはミレアナも参加。
接近戦の対応にはザハークが参加しており、敵の平均レベルが上がろうとも、ソウスケ本体たちの快進撃は止まらない。

同じく敵陣に突入しようとしている部隊では被害者が幾人か出ているが、ソウスケ本体たちの部隊ではゼロ。
完全に無傷とはいかないが、回復する余裕を十分に取れるため、全員が万全の状態で次回の戦闘に臨める。

「あいつらを、あのガキを止めろおおおおおおおおおっ!!!!!」

悪魔的な攻撃を仕掛けてくる少年。
その情報は既にルクローラ王国側の戦闘者たちに知れ渡っていた。

攻撃範囲はそこまで広くないが、攻撃が届くまでの時間が早く、着火した炎は基本的に消えない。
そして放たれた槍は一瞬で少年の元へ戻り、再び超高火力の投擲攻撃が放たれる。

防衛ラインを守る戦闘者たちは全力でソウスケ本体を殺そうとするが、そうはさせないが屈強な希少種オーガ、ザハーク。

上級クラスの攻撃魔法を素手で吹き飛ばす。
中級程度の攻撃であれば、拳圧だけで粉砕。

圧倒的な読みによって先手を打つミレアナ。
彼女の正確無比な風矢によって、幾人もの戦闘者が貫かれた。
そして彼女たちと同じ部隊の猛者たちも敵部隊を撃滅していき……一定時間が経過すれば、別の方面から現れた部隊も参戦。

戦力をソウスケ本体たちだけに割くことは出来ず、やむを得なく戦力を分散。
ただ……ここで最悪の人物が登場。
黒衣の死神という名称が付けられたソウスケ本体と同じく要注意人物に指定された戦闘者……ソウスケ分身。

ソウスケ分身が水龍の蒼剣から放つ斬撃刃は範囲が広く、うっかり味方に当ててしまうかもしれない可能性があれど、その恐ろしい程鋭い切れ味は、まさに死神の鎌。
容赦なくルクローラ王国側の戦闘者たちを刈り取っていく。

彼の周囲にはミレアナ、ザハークや猛者である戦友たちはいない。
数で押せばなんとか出来る……と考えるのは浅すぎる答え。

既にソウスケ分身は二十人ほどの特別部隊を一人で殲滅している。
多過ぎるスキルを器用に使いこなし、たった一人で進軍。

こうしてエイリスト王国側の部隊は防衛ラインを半日と掛からず突破し、遂にルクローラ王国陣営の本営に到着した。
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