転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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八百三十一話 死んでも勝て

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「ミレアナ、ザハーク。いつ攻撃が飛んできてもいいように構えとけ」

「ふむ、やはり向こうの騎士はソウスケさんがそう判断するほどの猛者か」

「そうだな……それを俺たちが理解してるからこそ、危ない攻撃が飛んでくる」

本体と分身の考えは同じく、最初からフルスロットルで挑まなければならない。

故に普段の戦闘時に使用していた炎と風の魔剣の二刀流ではなく、水龍の蒼剣と蛇腹剣という異色の二刀流で臨む。

「「ッ!!!!!!!!」」

二人が駆けだしたタイミングは、ほぼ同時。
コンマ数秒の差でジェリファーの方が速かったが、大したアドバンテージにはならない。

「ッ!!?? なんつぅ衝撃だよ……どっちも化け物だな」

「だな。敵の騎士さんは雷の双剣使い。それに対して……あの仮面付けてる兄ちゃんは、片方はロングソード? もう片方は……良く解んねぇ武器だな」

「どちらにしろ、私はあの黒衣の死神だっけ? あいつが出て良かったと思うね……本当に悔しいけど」

この場に集まっているルクローラ王国の戦闘者たちも十分に強者であり、化け物であるが……そんな者たちに化け物と言わせる程、二人の戦いは非常に激しい。

一瞬にして地面は禿げあがり、弾かれた斬撃は木を切断し、大地を斬り抉る。

(大将として、出てくるだけはあるな!!!! 殺すのは今後の事を考えると、不味いと思っていたが、考えを改め、ねぇとな!!!!!)

(この青年、いったい何者なのだ。私の思考を読み、最初から全力で……おおよそ人が使えるとは思えないスキルの使用……ここで、潰さなければ!!!!!!!!)

ジェリファーは最初から全力で殺りにいかなければ、こちらが殺られると確信していた。

しかし、同じ考えに辿り着いたのはジェリファーだけではない。
ソウスケ分身も鑑定の使用などは関係無く、本能がジェリファーは危険人物だと……自分の命に余裕で命が届く相手だと警告。

(これだけ二刀以外の攻撃をしてるのに、どういう反応速度をしてんだ、よ!!!!!!)

(私の最速の斬撃が、これほどまで当たらない、とは……この青年、本当に人間か!?)

双剣という、二刀で振るうのに最適化された武器の扱いに優れており、武器による手数に関してはジェリファーはリード。

しかし、純粋な攻撃力は水龍の蒼剣が数歩上。
それに加えて、蛇腹剣は攻撃と同時に変則的な防御を行う。
そして蛇腹剣によって奪ったモンスターのスキルによって、毒液や蜘蛛の糸など、おおよそ人が出せるとは思えない攻撃方法で攻撃の手数をカバー。

当然、毒液や蜘蛛の糸だけではなく本体の様に攻撃魔法も同時並行で行う。

ただ……それらの攻撃に関しては、ジェリファーも得意の雷魔法で対抗。

(俺が負けたところで、俺たちの勝利は変わらない。それは事実だ)

ジェリファーが絶えず放ち続ける気迫から、死ぬ気で勝つ覚悟を感じ取り……今回の戦争の中で、一番の危機を感じる。
しかし頭は冷静であり、自分はソウスケの分身であるため、死んだところで本体のダメージが届くことはない。
自分が死んだとしても、既に二勝している自分たちの勝利は揺るがない。

冷静なソウスケ分身はそれらを落ち着いて理解していた。
理解、していたが……前回の一対多数とは違った意味で、感情が爆発。

(っ、ふざけんな!!!! なに、弱気になってんだ!!!!! 死んでも構わねぇなら、本当に死んでも勝つ!!! それぐらいの思いで、挑まなきゃ、失礼だろうがッッッッッ!!!!!!!)

死んでも勝つ……その思考に至った瞬間、ソウスケ分身の脳裏に一つの案が思い付いた。

そして完全にブレーキをぶっ壊した状態であったため、即座にそれを実行。
狙うは……双剣による突き。

「ッ!!?? アアァァアアアアアアアアアアッ!!!!!」

「なっ、ッ!!!!」

腹部に放たれた双剣による突きを……ソウスケは避けなかった。
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