転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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八百四十九話 変態?

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「……ちょっと頭痛いな」

パーティーからの宴会を楽しんだ翌日、ソウスケは猛烈に二度寝したい気分だった。

「ソウスケさん、眠気は覚めなそうですか?」

「うん、もうちょい寝る」

ミレアナに申し訳ないと思いながらも、至福の二度寝タイムに突入。

すると数時間後、起きるには丁度良い時間ではあり、ソウスケとしても……さすがにこれ以上は寝過ぎかなと思えるタイミングで……自分の意志とは関係無い事情で起こされた。

「ソウスケさん、ソウスケさん。今、その……大丈夫でしょうか?」

「ミレアナ…………なんかあったのか?」

パーティーメンバーが非常に困った表情を浮かべていることもあり、変に目が覚めてしまったソウスケ。

「実は、既に食堂の方に貴族のご令嬢たちが集まっています」

「……分かった。良く分からないけど分かった。とりあえず起きるよ」

「ありがとうございます」

ソウスケはパパっと支度を済ませ、令嬢たちが待つテーブルへと向かう。

そこにはミレアナの言葉通り、何人もの貴族令嬢たちが紅茶を飲みながら待っていた。
そして直ぐ後ろには……少々申し訳なさそうな顔をしている従者たち。

(常識はあるみたいでなによりだ)

ソウスケは最初に令嬢たちに断りを入れ、遅めの朝食を従業員たちに注文。

「それで、俺に何か受けてほしい依頼がある、ということでよろしいでしょうか」

令嬢たちの様子を見る限り、それは間違いない。

だが……何故か全員もじもじしている。

「ソウスケ様、僭越ながらわたくしの方から説明してもよろしいでしょうか」

「あ、はい。お願いします」

従者の一人が丁寧に、簡潔に令嬢たちがソウスケへ依頼したい内容を告げる。

「な、なるほど……」

なるほどと、一応納得はしたソウスケ。
だが、まだ完全には理解できていない。

「勿論、冒険者ギルドの方から指名依頼を出させていただきます。ですが、ソウスケ様のご予定次第ではお嬢様方のご要望が叶わない形となりますので、今回こうして事前にお伝えしにまいりました」

「そうなんですね」

要約すると、貴族令嬢たちはザハークのカッコいい姿を見たい。

令嬢たちはザハークが先日のパーティーで時折浮かべる笑みに強い雄味を感じ、それが忘れられないとのこと。

(……変態、ではないんだよな?)

絶対口には出せないが、ソウスケがそう思ってしまうのも無理はない。

「……分かりました。それでは今日特に予定はないんで、直ぐに手続してしまいましょう」

「ありがとうございます」

従者一同、全員頭を下げてソウスケに感謝の意を伝える。

「とりあえずザハークのカッコ良いところを見たいんですよね」

「は、はい!!!」

移動中、ソウスケは幾つか候補を考えたが……結局一番リスクが少ない、自身との模擬戦を選んだ。

「後で美味い肉食える店に行くから頼む」

「いや、それぐらいは別に面倒ではない……まぁ、食えるなら食うが」

冒険者ギルドでの手続きが終了後、令嬢たちの中で一番爵位が高い者の別荘へ移動。

「んじゃ、予定通り頼む」

「分かった」

令嬢たちは戦闘に関してほぼ素人であるため、二人がそこそこ本気で動いてしまうと、どう動いてるのか全く見えない。
それでは依頼内容を満たせていないため、なるべく動きを抑え、拳や蹴りがぶつかり合う様に動き、パワー勝負をメインに行う。

当然、観戦する令嬢たちの前には透明な結果が展開されている。

「……っしゃ!!!!!」

一つ気合を入れ、ソウスケは予定通り速さではなく力がメインの蹴りを繰り出す。

「「「「「「「「「「ッ!!!???」」」」」」」」」」

令嬢たちや結界を張っている者たちを含め、ほぼ全員がザハークの腕とソウスケの脚の接触音に驚く。

(それぐらいで驚いてたら、心臓持たないんじゃないか?)

戦闘開始から約五分間、二人は縛りがある状態できっちり模擬戦を……いや、演舞を行った。
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