転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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八百七十九話 このまま行くと……

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ダンジョン探索(護衛)中に気を抜くのは良くない。
それはもう重々承知しているのだが、それでもソウスケは仕事の無さに気が緩んでしまう。

(ダンジョンが挑戦者の戦力を判断して、いきなりそれ相応の階層から挑ませてくれたら楽なんだが……あっ、でもそうなるとアネット様が戦えるモンスターがいなくなるか)

本当はアネットがモンスターと戦うケースは極力減らせることに越したことはないのだが、本人は超戦る気に満ち溢れている。

(最低、どのモンスターもレベルは二十を越えてるから、身体能力の面では追い付けてないが、攻撃魔法の攻撃力だけなら負けてないな……)

攻撃力だけな通用している。
それは確かに凄い事実ではあるが、それだけで倒せるほどレベル二十越えのモンスターたちは甘くない。

しかし、アネットの戦る気は完全に集中力へと現れていた。

「……ゾーンに入ってる、って状態なのかもな」

「ソウスケさん、ゾーンに入ってた状態というのは、どういった状態なのですか?」

「えっと……何十、何百と戦闘を繰り返してると、偶に相手の動きが遅く見えたり、視界に入る全ての情報を冷静に捌くことが出来たりすることはありませんか?」

「……何度か経験がありますね」

伊達に騎士団長を名乗ってはおらず、アマンダは口にした言葉通り、何度かソウスケが説明した状態を経験したことがある。

「そういった状態を、ゾーンに入ると呼んでます」

「……意外としっくりくる言い方ですね」

「どうも。アネット様はおそらく急激にレベルが上がってると思いますが、それでもまだレベル二十越えのモンスターを相手にするには、身体能力が足りません。ですが、その足りない部分を集中力からくる読みで補い、攻撃魔法を的確に当てている……というのが俺の見解です」

実際のところ、まだ護衛の女性騎士たちがアネットの行動に合わせている部分はあるものの、一緒に戦っている騎士たちもアネットの読みの鋭さに驚いていた。

そしてあれよこれよと探索は順調に進み、遂にニ十層のボス部屋前に到着。
前回と同じくソウスケたちは並んでいる冒険者たちから視線を集めることになるが、それでも戦争での活躍した話が広まっていることもあり、下手に絡んでくる輩たちはいなかった。

ソウスケやザハークのお陰だけではなく、女性騎士たちが身に付ける防具や武器が明らかに高品質な点も、輩たちを寄せ付けない要因となった。

「アネット様、もし参加するのであれば嫌がらせをするのをお勧めします」

「わ、分かりました!!」

嫌がらせ、という戦闘における行動を瞬時に理解し、行動に移す。

(……多分、全身が沸騰してるだろうな。熱くて熱くて……動いてないと更に熱くなりそうなあの状態だろうな……というか、なんで戦闘における嫌がらせって行動を直ぐに理解出来るんだ?)

ニ十層のボスモンスターはオークの上位種が四体と、オークリーダーが一体。
どの個体もレベルは二十後半と、やはりアネットが役に立てる場面は攻撃面のみ。
ただ、その攻撃も致命傷になるにはよっぽど好タイミングで当てなければ、嫌がらせにもならない。

「はぁ、はぁ……や、やりましたよ!!!!」

「お疲れ様です、アネット様」

自身の役割が女性騎士たちのサブということは理解しているも、それでも今回の戦闘で得られた達成感は前回のボス戦以上のものであった。

「アマンダさん、次のダンジョン探索までアネット様をゆっくり休ませてください。次の探索でも今回の様な勢いで行動し続けてると、絶対にどこかでぶっ倒れてしまいます」

「それも経験がありますね。確かに、今のアネット様はこう……元気が有り余り過ぎてる様に見えますね」

「おそらく、自身の限界に気付いていない状態かと」

地上に戻ってから護衛の冒険者から貰った意見通り、アマンダは何が何でもアネットに休息を取らせた。
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