922 / 1,259
八百九十二話 疲れ知らずではない
しおりを挟む
「あっ、ソウスケさん!! ザハークさん!!!」
「ん? おぉ~~~、お前ら。元気してた?」
依頼されている武器、防具の製作を終えて帰る途中、以前指名依頼で臨時教師をしていた頃の教え子に遭遇。
「マスター、俺は先に帰っているからな」
「お、おぅ」
ザハークはそそくさと帰っていった。
久しぶりに再会した教え子たちに興味がない……という訳ではなく、自分がいない方がソウスケや生徒たちは盛り上がれるだろうと思っての配慮。
「え、えっと……お二人は、もしかして鍛冶仕事の帰りだったんですか?」
「良く解ったな。ザハークは……もしかしたら、ちょっと疲れてたのかもしれないな」
「ざ、ザハークさんがですかっ!!!???」
「そうだよ……立ち話もあれだし、一緒に晩飯でも食べるか」
ソウスケの提案を断る生徒などいるわけがなく、全員大賛成。
「適当に頼んでってくれ。んで、ザハークが疲れてるのに驚いてたけど……多分、今日の仕事は戦闘じゃなくて鍛冶だからだろうな」
「……普通は逆じゃありませんか?」
「そりゃお前たちが鍛冶師、もしくは錬金術師や装飾士たちの苦労を知らないからだ。それに、ザハークにとって戦闘は倒すまでの過程……倒し終えた瞬間までもが楽しい。ぶっちゃけ、それは俺も同じだ」
さすが色々と存在がおかしい人達の言葉だと、そこに関して生徒たちは疑問を持たなかった。
「でも、鍛冶に関してはちゃんと依頼人から頼まれた仕事ってのもあってか、造り終えて……出来上がった作品が納得のいく物であれば、ホッとするというか……嬉しさがある。完成までにあるのは強い緊張感だけだ」
「そ……ソウスケさんでも、緊張する事ってあるんですね」
「お前らなぁ……俺をなんだと思ってるんだ?」
「えっと、何でも出来る超強い冒険者」
「稀代の怪物?」
「超万能戦闘者かと」
「戦闘だけじゃなくて指導も出来るハイパー教師っすね!!!!」
「……そりゃどうも」
本人達に一切の悪気、悪意はない。
実際にソウスケが出来る内容を考えれば、その評価は決して間違っていない。
「とにかく、俺やザハークでも緊張することはあるんだよ」
「そうなんですか……あの、少し質問があるんですけど良いですか」
「……勿論良いぞ。今はもう臨時教師じゃないけどな」
そんな当たり前のことは解っているが、顔を見れば何か自分に相談したい事があるのだと解かる。
ソウスケとしては、そんな顔をした元教え子の質問に答えないという選択肢はない。
「その、冒険者って……どうやったら、上手く活動出来るでしょうか」
「お前…………冒険者になりたいのか?」
記憶が正しければ、質問してきた生徒は騎士になるのが目標だった筈。
しかし、ソウスケの耳が難聴状態になっていなければ、間違いなく冒険者として上手く活動するにはどうすればいいか、と質問してきた。
「まだ、完全に決めた訳じゃないですけど」
「そうか……ん~~~、どういった気持ち、目標を持って冒険者にもなるかによるけど、色んな世界を見て周りたいのであれば、一先ず三年間ぐらい学術として経験を積んだ方が良いと思う」
「なるほど! つ、次は」
「後は……お前がクランに所属するかしないのかは解らないけど、有名どころのクランに所属している冒険者と仲良くなるのはありかもな。まっ、学園の卒業生ってだけで、よっぽどバカじゃない限りはそこら辺の繋がりを警戒して、下手に絡んで来なくなると思うぞ」
ソウスケのアドバイスはそこそこ正しい。
ただ……絶対ではない。それは元教え子に伝えた本人も解っている。
「でもな、他の冒険者とあまりぶつかることなく上手く、正しく……うん、そうだな。正しく活動を行ったとしても、全員がその人に対して悪意を持たない訳じゃない」
「っ……つまり、常に狙われる覚悟が必要だと」
「いやいやいや、そこまで重い話じゃないから! ただ、強さだけじゃなくて、そういうところも慢心しない方が良いかもってだけだ」
他の生徒たちも乗り気で質問を続け、一時間近くはその話で盛り上がり、それから……長々と戦争譚を話すことになった。
「ん? おぉ~~~、お前ら。元気してた?」
依頼されている武器、防具の製作を終えて帰る途中、以前指名依頼で臨時教師をしていた頃の教え子に遭遇。
「マスター、俺は先に帰っているからな」
「お、おぅ」
ザハークはそそくさと帰っていった。
久しぶりに再会した教え子たちに興味がない……という訳ではなく、自分がいない方がソウスケや生徒たちは盛り上がれるだろうと思っての配慮。
「え、えっと……お二人は、もしかして鍛冶仕事の帰りだったんですか?」
「良く解ったな。ザハークは……もしかしたら、ちょっと疲れてたのかもしれないな」
「ざ、ザハークさんがですかっ!!!???」
「そうだよ……立ち話もあれだし、一緒に晩飯でも食べるか」
ソウスケの提案を断る生徒などいるわけがなく、全員大賛成。
「適当に頼んでってくれ。んで、ザハークが疲れてるのに驚いてたけど……多分、今日の仕事は戦闘じゃなくて鍛冶だからだろうな」
「……普通は逆じゃありませんか?」
「そりゃお前たちが鍛冶師、もしくは錬金術師や装飾士たちの苦労を知らないからだ。それに、ザハークにとって戦闘は倒すまでの過程……倒し終えた瞬間までもが楽しい。ぶっちゃけ、それは俺も同じだ」
さすが色々と存在がおかしい人達の言葉だと、そこに関して生徒たちは疑問を持たなかった。
「でも、鍛冶に関してはちゃんと依頼人から頼まれた仕事ってのもあってか、造り終えて……出来上がった作品が納得のいく物であれば、ホッとするというか……嬉しさがある。完成までにあるのは強い緊張感だけだ」
「そ……ソウスケさんでも、緊張する事ってあるんですね」
「お前らなぁ……俺をなんだと思ってるんだ?」
「えっと、何でも出来る超強い冒険者」
「稀代の怪物?」
「超万能戦闘者かと」
「戦闘だけじゃなくて指導も出来るハイパー教師っすね!!!!」
「……そりゃどうも」
本人達に一切の悪気、悪意はない。
実際にソウスケが出来る内容を考えれば、その評価は決して間違っていない。
「とにかく、俺やザハークでも緊張することはあるんだよ」
「そうなんですか……あの、少し質問があるんですけど良いですか」
「……勿論良いぞ。今はもう臨時教師じゃないけどな」
そんな当たり前のことは解っているが、顔を見れば何か自分に相談したい事があるのだと解かる。
ソウスケとしては、そんな顔をした元教え子の質問に答えないという選択肢はない。
「その、冒険者って……どうやったら、上手く活動出来るでしょうか」
「お前…………冒険者になりたいのか?」
記憶が正しければ、質問してきた生徒は騎士になるのが目標だった筈。
しかし、ソウスケの耳が難聴状態になっていなければ、間違いなく冒険者として上手く活動するにはどうすればいいか、と質問してきた。
「まだ、完全に決めた訳じゃないですけど」
「そうか……ん~~~、どういった気持ち、目標を持って冒険者にもなるかによるけど、色んな世界を見て周りたいのであれば、一先ず三年間ぐらい学術として経験を積んだ方が良いと思う」
「なるほど! つ、次は」
「後は……お前がクランに所属するかしないのかは解らないけど、有名どころのクランに所属している冒険者と仲良くなるのはありかもな。まっ、学園の卒業生ってだけで、よっぽどバカじゃない限りはそこら辺の繋がりを警戒して、下手に絡んで来なくなると思うぞ」
ソウスケのアドバイスはそこそこ正しい。
ただ……絶対ではない。それは元教え子に伝えた本人も解っている。
「でもな、他の冒険者とあまりぶつかることなく上手く、正しく……うん、そうだな。正しく活動を行ったとしても、全員がその人に対して悪意を持たない訳じゃない」
「っ……つまり、常に狙われる覚悟が必要だと」
「いやいやいや、そこまで重い話じゃないから! ただ、強さだけじゃなくて、そういうところも慢心しない方が良いかもってだけだ」
他の生徒たちも乗り気で質問を続け、一時間近くはその話で盛り上がり、それから……長々と戦争譚を話すことになった。
117
あなたにおすすめの小説
異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』
アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた
【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。
カクヨム版の
分割投稿となりますので
一話が長かったり短かったりしています。
無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった!
「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」
主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!
【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ
一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。
百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。
平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。
そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。
『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました
KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」
勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、
ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。
追放すらできない規約のせいで、
“事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。
だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。
《超記録》――
敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。
生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。
努力で《成長》スキルを獲得し、
記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。
やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。
対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、
記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。
一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。
さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。
街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。
優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。
捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。
爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる