転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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九百八十六話 擬態?

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「……こういう時に、神はまだ我々を見捨てていなかった、と言うのですか?」

「状況が状況なだけに不謹慎ですが、その通りですね」

五十階層を半分程進んだところで……一体の巨狼を発見。

その巨狼は……間違いなく、Aランクのウルフ系モンスター、ガルムである。

「当然と言えば、当然……逃げる様子はありませんし、行きましょうか」

ソウスケは何重にも属性を付与した結界で女性騎士たちを守る。

彼女たちは確実に強くなっているが、五十階層は平気で複数のBランクモンスターが現れたりする様な……戦闘者からすれば、魔境同然の戦場。

念のためと、ソウスケは十を越える結界を結界で彼女たちを守り、彼女たちもそれを了承。

第三騎士団に所属する騎士としては情けないという思いもあるが、くだらないプライドで団長に迷惑を掛けるほど頭が回らないおバカではなかった。

「アマンダさん、準備は良いですか?」

「えぇ……勿論です」

悠然とした、まさに団長という肩書を持つのに相応しい態度、足取りで巨狼へと向かう。

「…………」

佇んでいたガルムも、自身の前に歩を進める人間を……敵だと把握したのか、今までは見せていなかった口の中に潜む凶器を見せた。

「疾ッ!!!!!!!」

「っ!!!!????」

先行はアマンダ。

全開のスピードはアマンダよりもガルムが上回っている。
ただ……初手は見事、ガルムの見た目通りではない毛皮を、肉を斬り裂いた。

(奇襲に近い先制攻撃は成功ですね)

ガルムを発見する前、アマンダは一つソウスケからアドバイスを受けていた。
確実に勝つのであれば、初対面ではなるべく自身の強さを隠した方が良いと。

ガルムは非常に優秀で絶大な戦闘力を持つモンスター。

アマンダの実力を正確に測ることには失敗したが、強者の雰囲気だけは隠せていなかった。
故に、ガルムはアマンダをBランク冒険者ぐらいの戦闘力は持っているだろうと予想。

しかし……その中途半端な警戒が逆に自身の首を絞めた。
警戒心があったからこそ、ガルムはその場から大きく動こうとはせず、ゆっくりと距離を縮めるという行動を取った。

(これで、五分には持ち込めたでしょうか)

初手で傷を負わすことが出来た。

だが……その傷により、ガルムはアマンダが擬態していたと悟り、狩人の本能を全開。

その本気の戦意を受け、アマンダは冷静に何故ソウスケが自分一人ではガルムに挑むのは好ましくないと口にしたのかを理解した。

(これが、いわゆる裏ボス、という奴でしょうか)

圧だけで言えば、スラウザーマンモスの戦意も負けてはいない。

しかし……より正確に対峙した者に死のイメージを与えるのはガルムだった。

「グルルルゥアアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ッ!!!!!」

先制の斬撃、ガルムにとって完全に予想外の一撃だった。

その一撃で決着が着くことはなく、それが原因で勝負が決まることはまずないが……食らえばヤバい。
そうガルムの本能へ刷り込むには十分な一撃。

故に、最初からスマートな攻撃ではなく、荒々しい猛襲が繰り出された。

(これは、これで!!! なんとも、厳しいですね!!)

あまり冷静ではない。

まだ手を出していないソウスケは、目の前のガルムがまだ生まれてから大した戦闘を経験してない個体だと解った。
とはいえ、結局のところAランクの化け物ウルフであることに変わりはない。

猛襲の中で繰り出される爪撃、その全てが命を刈り取る鎌。
受けるにしても、ミスれば容易に斬り裂かれる。

(焦ってる……様に見えるけど、自身の本来の動きは忘れてないみたいだな。まだ戦いは始まったばかりで、モンスターにスタミナなんてあまり関係ないってことを考えると……そろそろかな)

ソウスケは戦意を放ち、数歩前に進んだ。

「ッ!!!」

「刃ッ!!!!!」

「っ!?」

周りが一切見えていない程焦りに支配されてはおらず、故に意識を割いてしまった。
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