転移したらダンジョンの下層だった

九百八十九話 過去最速

ガルムとの戦闘終了後、無事に戦闘中や戦闘が終わった後に襲撃されることはなく、一旦休憩を挟んでボス部屋へと向かう。

（ん～～～～……覚醒、した？）

ガルムとの戦闘中に高まっていた集中力が途切れておらず……アマンダはボスモンスターであるガルム戦で、一切攻撃を食らうことなく攻撃を捌き続け、カウンターを叩き込み……自己最速で決着。

普段は同行している女性騎士たちがエルダーリッチを倒してからアマンダの方の戦いが終わるが、今回は逆だった。

（覚醒なのか、集中力の高さが継続させられてたのかまでは解らないけど、多分対人戦に関しては上級者向けダンジョンを潜る前と比べて、確実に一回り強くなったよな）

ガルムと戦うアマンダの姿を観れば、確実にザハークが超好戦的な笑みを浮かべてしまう。

今のアマンダはそれほどの高みに辿り着いていた。

「申し訳ありませんでした」

「何故謝るのですか。あなた達の戦いもとても素晴らしかったですよ。今回は実戦ではあるものの、訓練でもあります。安全を考慮して戦えることが重要でした」

アマンダの言う通り、今回の戦いは命懸けの戦いではなく、あくまで強くなる為の戦い。
無理をして勝利を捥ぎ取る必要はなく、仲間との連携を疎かにせず、冷静に戦況を進めて自身の経験の糧にすることが重要だった。

そういった部分を考えると、今回の戦闘はやや攻めっ気が強かったと反省するアマンダだった。

「では、戻りましょうか」

ソウスケたちが地上に帰還してから数時間後にアネットたちも帰還。
合流後はいつもと同じく全員で夕食を食べる。

「それでは、運良くガルムと戦うことが出来たのですね」

「あぁ、最後の最後で運良くって感じだったな」

「やはり強かったですか」

「俺はサポートだったけど、強かったよ。モンスターの中でも一際戦闘センスが高い。改めて長時間戦いたくない相手だと思ったよ」

素材の価値的には再戦するのもありではある。

だが、ソウスケの中では非常に疲れる相手認定された。

「私も同じ感想です。あの個体はまだ生まれてきたばかりの個体なのでしょう。ある程度の戦闘経験があったと思うと……ゾッとしますね」

自信は大きくなった。
ソウスケというサポートがあっての勝利ではあるが、それでも勝利したことに変わりはない。

それでも、自分で口にした通りのあの身体能力と戦闘センスに経験があったと思うと、想像するだけで背筋が震える。

「地上で生息している個体とは出会いたくありませんね」

「地上で生きてるってなると……臆病な個体じゃない限り、バチバチに経験積んでそうですもんね」

それは神のみぞ知る未来である。

「そっちはどうだったんだ？」

「基本的に問題ありませんでした。偶にバカな事を考える輩と遭遇はしましたが、ザハークに臆して直ぐに消え去りました」

（……やっぱり最強のガードマンだな）

雄がいるとはいえ、一人だけ。
他は全て女性であり、バカたちであればその一人さえ潰せばと思わなくもないが、並ではない圧を耐えられる者がそもそもミレアナやアネットたちを相手にバカなことを考えるわけがなく、もれなく全員ビビり散らかしながら立ち去った。

「んじゃ、明後日には出発ですね」

そろそろ当初予定していた期限が終わる。

ソウスケは知り合いに挨拶を済ませてあれこれと考えていた、アネットを含め……女性騎士たちは皆、もっとダンジョン内で自身を鍛えられたらと考えていた。

ただ、全員傲慢な貴族ではなく、ソウスケたちが自分たちの為にわざわざ付き合ってくれたことを理解している。


「ソウスケさん、一応最後にお聞きしておきたいのですが、今後騎士団から今回の様な指名依頼を申し込んだ際、受けて頂けますでしょうか」

食事後、ソウスケの元へ訪れたアマンダは今後の為に最終確認を行っていた。

「ちゃんと報酬を用意してもらえるなら大丈夫ですよ。でも、後一年ぐらいは受けたくないですけどね」

これから最低でも一年は今回の様な依頼を受けたくはない。
中々上に報告しにくい内容ではあるが、伝えに訳にはいかなかった。