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千七十九話 何も犠牲に出来る
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(……む、無茶苦茶下手な事言えない、な)
臆病になっていた。
がむしゃらに上を目指していた時のマインドに戻らなければならない。
そんなイルザスの思いを聞いて、ソウスケはそれが間違っているとは思わなかった。
間違ってないとは思うものの……それはそれでどうなんだ? という気持ちが同時に湧き上がった。
「…………イルザスさんは、怖くないんですか?」
「怖さは……あるよ。でもさ、そういう気持ちにビビってたら…………いや、そうだね。ちょっと、熱くなり過ぎてたかもしれない。マスター、水を貰っても良いですか」
「かしこまりました」
熱きなり過ぎていたかもしれない。
そう認めたイルザスだが、先程自分が口にした考えは間違ってないと思っている。
ただ、そんな自分の考えに対し、怖くないのかと尋ねたのは……あのソウスケである。
(戦場……じゃない。戦争という場所で、彼は若くして暴れ回った。標的を容赦なく倒し、同じ部隊の仲間を狙う敵を抹殺した。そんな人でも……感じることがあるのかもしれない)
自棄、無茶などと死んでも勝つといった心構えは異なる。
「……ふぅーーーーーーー、ありがとう。本当に、ちょっと前のめりになっていた気がする」
「い、いえ。ただ、思ったことを口にしただけというか」
「それが、僕の熱くなり過ぎてた心を落ち着かせてくれた」
イルザスたちは強い。
あの成長したトロールシャーマンが相手でも、決して負けていなかった。
その実力を考慮すれば、彼らがある程度の自信を持つのは、至極当然のこと。
(ここまで感謝されると、ちょっとこそばゆいんだけど…………俺としては、多少関わった仲だから、できればって思いで口にしただけなんだけどな)
改めて考えれば、その思いが自身の我儘であることが解る。
ただ、それでも心配に思うなというのは、ソウスケからすれば無茶な話であった。
「勇気と蛮勇……その差を見極めて動かなければならない。そういうことだね」
「難しい話だとは思いますけど、それが無茶だけど無茶ではない……矛盾に繋がるかと」
「……ふっふっふ、確かに難しい話だね。でも、それが出来れば今日戦ったトロールシャーマンみたいな強敵が相手でも、キッチリ倒せるようになるかな」
「…………超個人的な考えですけど、無茶をする時、普段相手の攻撃見切るタイミング。それはどこまでギリギリ反応してカウンターに繋げられるのかとか……もう一つは凄い極論になるんですけど、体のどこまでなら犠牲に出来るか。勿論、回復魔法とかポーションで治せる範囲の犠牲ですけど、それを把握出来てるだけで……計算? して無茶が出来るかなって」
ソウスケの超個人的な考えを聞いて、冒険者事情にそれなりに詳しいバーのマスターは顔にこそ出していないが、心の内で若干引いていた。
「紙一重って言うやつだね。それがどこまで出来るか……攻撃を向けられる箇所にもよるけど、そのギリギリのラインを自分で解っていれば…無茶だけど無茶ではないに繋がるね。それで、犠牲に出来る部分……って、多分紙一重のカウンターにも繋がるよね」
「そう、ですね。自らどこかを犠牲にすれば、それはそれで相手の不意を突ける形になるかもしれません。とはいえ……せいぜい急所以外の貫通とか……片腕の切断? が本当にギリギリだとは思いますけど」
「そうだね。綺麗に切断されたとかなら、まだなんとか出来るし、貫通云々も良く解るよ。同じ細剣使いと本気で戦う機会があったんだけど、中々決着が着かなくてね…………突きを左手で受け止めたことがあるんだ」
「受け止めたって、つまりそういうこと、ですか?」
「うん、そういう事だよ」
受け止めようとした左手は当然貫かれたが、それでも相手が引き抜こうとする瞬間に柄を掴み、無理矢理武器を封じて自身の攻撃を叩き込んで勝利した経験があるイルザス。
(そうか……あの感じか。うん、解らなくはないとなれば、ソウスケ君から教えてくれたことが、直ぐに活かせるかもしれないね)
翌朝、イルザスはソウスケから教えてもらった内容を仲間たちに伝えた。
すると……苦笑いを浮かべる者はいたものの、その内容を否定する者は一人もいなかった。
臆病になっていた。
がむしゃらに上を目指していた時のマインドに戻らなければならない。
そんなイルザスの思いを聞いて、ソウスケはそれが間違っているとは思わなかった。
間違ってないとは思うものの……それはそれでどうなんだ? という気持ちが同時に湧き上がった。
「…………イルザスさんは、怖くないんですか?」
「怖さは……あるよ。でもさ、そういう気持ちにビビってたら…………いや、そうだね。ちょっと、熱くなり過ぎてたかもしれない。マスター、水を貰っても良いですか」
「かしこまりました」
熱きなり過ぎていたかもしれない。
そう認めたイルザスだが、先程自分が口にした考えは間違ってないと思っている。
ただ、そんな自分の考えに対し、怖くないのかと尋ねたのは……あのソウスケである。
(戦場……じゃない。戦争という場所で、彼は若くして暴れ回った。標的を容赦なく倒し、同じ部隊の仲間を狙う敵を抹殺した。そんな人でも……感じることがあるのかもしれない)
自棄、無茶などと死んでも勝つといった心構えは異なる。
「……ふぅーーーーーーー、ありがとう。本当に、ちょっと前のめりになっていた気がする」
「い、いえ。ただ、思ったことを口にしただけというか」
「それが、僕の熱くなり過ぎてた心を落ち着かせてくれた」
イルザスたちは強い。
あの成長したトロールシャーマンが相手でも、決して負けていなかった。
その実力を考慮すれば、彼らがある程度の自信を持つのは、至極当然のこと。
(ここまで感謝されると、ちょっとこそばゆいんだけど…………俺としては、多少関わった仲だから、できればって思いで口にしただけなんだけどな)
改めて考えれば、その思いが自身の我儘であることが解る。
ただ、それでも心配に思うなというのは、ソウスケからすれば無茶な話であった。
「勇気と蛮勇……その差を見極めて動かなければならない。そういうことだね」
「難しい話だとは思いますけど、それが無茶だけど無茶ではない……矛盾に繋がるかと」
「……ふっふっふ、確かに難しい話だね。でも、それが出来れば今日戦ったトロールシャーマンみたいな強敵が相手でも、キッチリ倒せるようになるかな」
「…………超個人的な考えですけど、無茶をする時、普段相手の攻撃見切るタイミング。それはどこまでギリギリ反応してカウンターに繋げられるのかとか……もう一つは凄い極論になるんですけど、体のどこまでなら犠牲に出来るか。勿論、回復魔法とかポーションで治せる範囲の犠牲ですけど、それを把握出来てるだけで……計算? して無茶が出来るかなって」
ソウスケの超個人的な考えを聞いて、冒険者事情にそれなりに詳しいバーのマスターは顔にこそ出していないが、心の内で若干引いていた。
「紙一重って言うやつだね。それがどこまで出来るか……攻撃を向けられる箇所にもよるけど、そのギリギリのラインを自分で解っていれば…無茶だけど無茶ではないに繋がるね。それで、犠牲に出来る部分……って、多分紙一重のカウンターにも繋がるよね」
「そう、ですね。自らどこかを犠牲にすれば、それはそれで相手の不意を突ける形になるかもしれません。とはいえ……せいぜい急所以外の貫通とか……片腕の切断? が本当にギリギリだとは思いますけど」
「そうだね。綺麗に切断されたとかなら、まだなんとか出来るし、貫通云々も良く解るよ。同じ細剣使いと本気で戦う機会があったんだけど、中々決着が着かなくてね…………突きを左手で受け止めたことがあるんだ」
「受け止めたって、つまりそういうこと、ですか?」
「うん、そういう事だよ」
受け止めようとした左手は当然貫かれたが、それでも相手が引き抜こうとする瞬間に柄を掴み、無理矢理武器を封じて自身の攻撃を叩き込んで勝利した経験があるイルザス。
(そうか……あの感じか。うん、解らなくはないとなれば、ソウスケ君から教えてくれたことが、直ぐに活かせるかもしれないね)
翌朝、イルザスはソウスケから教えてもらった内容を仲間たちに伝えた。
すると……苦笑いを浮かべる者はいたものの、その内容を否定する者は一人もいなかった。
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