転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千八十一話 稼いでるんだから良いじゃないか

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「うん、美味いな」

そろそろドラゴニックバレーに到着したい。
そう思っていたソウスケたちだったが、美味い料理店が多いという話を耳に挟み、道中のベルブスという街に立ち寄った。

「偶には魚料理も良いですね」

ベルブスの周辺には大きな湖があり、海鮮魚ではないが、それでも湖に生息する魚を食べることが出来る。

アイテムボックスや、空間収納系のマジックアイテムを持っており、尚且つ時間制限付きではあるが、時を止めることが出来ることが出来る収納スキル、アイテムを持っている冒険者たちにとっては美味しい仕事が多い。

「だな。勿論肉料理も美味いんだけど、やっぱり魚料理も良いな」

ソウスケたちが訪れている店は、全体的に見て中の上に位置する。
基本的に白金貨が飛ぶことはないが、魚を使った料理は他の料理と比べて明らかに高く、そういった料理ばかりを注文すれば……飯代で白金貨が消える可能性は十分ある。

パーティーメンバーの中ではミレアナが一般的な冒険者程度しか食べないが、ソウスケがそこそこ食べる部類。
ただ、従魔であるザハークは良く食べる。
ソウスケが特に値段は気にせず食べて良いと伝えられている為、従魔用のスペースに訪れる従業員に対し……従業員側が心配になるぐらい魚料理を頼んでいた。

「この料理は美味かった。もう二人前追加だ」

「か、かしこまりました」

人の言葉を喋る、見た目が非常に鬼人族に近いオーガ。
諸々とツッコミたいところはあるが、一番気になるところは、やはりこのオーガの主人がちゃんとオーガが食べた分の料金を支払えるのか。

そんな不安を抱えながらも、従業員は出来上がった料理をせっせとザハークの元へ運び続けた。

「合計では、白金貨一枚と金貨が七枚になります」

結果、まだ本番の夕方前だというのに、一部の魚が底を付いてしまった。

(ザハーク……本当に遠慮なく注文しましたね)

なんだかんだで、ミレアナも気に入った魚料理を再度注文していた。
しかし、それは常識の範囲内での話。
ソウスケは……やや常識の範囲内を越えていたが、それでも冒険者という枠を考えれば、納得出来る範囲。

だが、ザハークが注文して完食した量は、まさに大食漢。

「うっす…………っと、これで丁度っすね」

「っ、はい。そうですね」

「美味かったです」

「美味しかったです」

「あ、ありがとうございました!!!!」

サラッと丁度白金貨一枚と金貨七枚を取り出したソウスケに驚くも、二人が料理の感想を簡潔にではあるが口にしたことに嬉しさを感じた従業員。

二人の言葉を厨房で働いている料理人達に伝えると、大量の金を落してくれた上に美味いと口にしてくれたソウスケたちに笑いながら感謝した。


「いやぁ~~~、本当に美味かったな~~」

「久しぶりに食べたが、魚を使った料理も良いな」

「本当に美味しかった。その意見には同意ですが……ザハーク、少し食べ過ぎだったのではないですか?」

ザハークの腹は……特にぷっくり膨れていない。
ただ、支払いの料金、自分たちがメニューの量と料金などを考えれば、ある程度ザハークが一人で使用した金額が解ってくる。

「まぁ良いじゃん良いじゃん、ミレアナ。ザハークはそれ以上に稼いでるんだしさ」

「むっ…………それもそうですね。申し訳なかったですわ、ザハーク。勝手に熱くなっていました」

「いや、別に構わないが……ミレアナももっと食べれば良かったのではないか?」

ザハークはこれまで多くのモンスターを討伐し、その素材の買取金額……に加え、鍛冶で造った武器や防具をソウスケたちと共に露店で売って稼いでいた。

しかし、それはミレアナも同じ。
ザハークと違うのは鍛冶ではなく錬金術という点だけであり、ミレアナはミレアナでしっかりと稼いでいる。

「私はあなた程食欲旺盛ではないのですよ」

普段からそこまで気にしてはいないものの、今日は今日で特にスタイルの意地など気にせず普段より多めに食べていた。
ただ……ほんの少し、もっと食べていれば良かったという後悔は、確かにあった。

「ん?」

早めに夕食を食べてしまったため、大浴場に向かうまでぶらぶらしながら時間を潰そうと思っていたところで、ソウスケは明らかに自分たちに意識を向けている者を察知した。
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