1,047 / 1,259
千八十八話 プライドはあるか、否か
しおりを挟む
「「………………」」
「二人共、何をそんなに驚いている?」
「いや、だって……ザハーク、本当に良いのか?」
「構わないと言ってるだろう」
再度、雷竜とはミレアナ一人で戦っても良いと、今回自分は辞退すると……ザハークが自分の口から零した。
「ザハーク、本当によろしいのですか?」
「ミレアナ、お前が言ったのだろう。ここ最近温い戦いばかりをしていたから、ドラゴニックバレーでの戦いに備えて緊張感のある戦いをしたいと」
「温いとは言っていませんでしたが…………そうですか、ありがとうございます」
血繋騎士団の未来の騎士団長候補を殺したのは、雷属性のワイバーンやリザードではない。
正真正銘、雷属性のドラゴンである。
その実力は、Aランクに届く可能性がある。
そんな格好の激闘相手がいるにもかかわらず、ザハークがミレアナに対戦権を譲ったのだ。
ソウスケやミレアナが驚くなというのは無理があった。
「ドラゴンがどれだけ強力で凶悪なモンスターなのかは、俺も解っている」
「「…………」」
ドラゴンからすれば、ザハークがそう思われる存在だよ。と、二人はツッコまずに話の続きに耳を傾ける。
「ミレアナが強いというのも解っているが、それでもドラゴンは侮れない存在だ。だからこそ、本番に向けて準備運動が必要だと思った。ただそれだけだ」
「準備運動という簡単な言葉を使って良いのかは解りませんが、その通りです」
「それじゃあ、早速明日から探索に向かうか?」
「えぇ、そうしましょう」
その日はたっぷりと英気を養い、翌日……ソウスケは二度寝などせず、一度目の起床で完全に目を覚まし、他の冒険者たちと変わらない時間に出発。
ただ、冒険者ギルドには向かわず、そのまま街を出て森の中へと入った。
「走り回ってれば、そのうち見つかるだろう」
なんとも雑な作戦ではあるが、スタミナに自身がある三人にとっては、決して悪くない。
「問題があるとすれば、その雷竜が既に移動していないかどうか、ですね」
「巣は見つかってないから、その可能性は否定出来ないな。でも、一度腰を下ろした土地から、そう簡単に離れないと思うぞ」
「その理由とは?」
「ドラゴンの生態に詳しくはないけど、基本的にドラゴンってプライドが高い生物だと思うんだ」
人間ほど細かい事を考えられる思考力はないものの、プライドという眼に見えないその生物を支えるものは……人間やモンスターなど関係無く、大なり小なり差はあれど持っている。
「それで、多少の怪我を負っただろうけど、それでもラグラスさんが将来自分の後釜にと考えてた人を殺し、その他の騎士たちを撤退に追い込んだ」
「つまり、自分の生活を脅かす存在はいなくなったと思ったと」
「そんなところだと思うよ。まぁ……本当に強いドラゴンなら、自分より強い相手と遭遇しても、逃げようとはしないと思うけど…………そこは、ちょっと解らないかな」
矛盾しているのでは? と疑問を持たれる事を言ってる自覚はある。
ただ、ベルブスの周辺に表れた雷竜は、ドラゴニックバレーの生存競争に敗れた、もしくはそこから逃げてきた個体。
自身より上の存在が現れれば、プライドなど放り捨てて逃げるかもしれない。
「とにかく、まだこの辺りから移動はしてないと思う」
「……強くとも、傲慢であればミレアナが望む相手にはならないかもしれないな」
「それはそれで仕方ありませんよ。私たちは雷竜にとって敵対者であり、私たちからやる気を出せと言われても、戦意が上がることはないでしょう」
「逆に怒りで視野が狭くなるかもしれないな」
ドラゴンという怪物が力任せに暴れ回れば、それはそれで危険極まりないのだが、ミレアナという一流の戦闘者からすれば、非常に戦りやすい戦況でしかない。
(ザハークやソウスケさんではありませんが、戦いの最中に言葉を投げかけるのは止めておきましょうか)
あれこれ考えながら探し続けること数時間……昼休憩も挟み、遭遇するモンスターを瞬殺しながら移動していると、気になる気配を感じ取り、ミレアナは一人でその方向に向かって駆け出した。
「二人共、何をそんなに驚いている?」
「いや、だって……ザハーク、本当に良いのか?」
「構わないと言ってるだろう」
再度、雷竜とはミレアナ一人で戦っても良いと、今回自分は辞退すると……ザハークが自分の口から零した。
「ザハーク、本当によろしいのですか?」
「ミレアナ、お前が言ったのだろう。ここ最近温い戦いばかりをしていたから、ドラゴニックバレーでの戦いに備えて緊張感のある戦いをしたいと」
「温いとは言っていませんでしたが…………そうですか、ありがとうございます」
血繋騎士団の未来の騎士団長候補を殺したのは、雷属性のワイバーンやリザードではない。
正真正銘、雷属性のドラゴンである。
その実力は、Aランクに届く可能性がある。
そんな格好の激闘相手がいるにもかかわらず、ザハークがミレアナに対戦権を譲ったのだ。
ソウスケやミレアナが驚くなというのは無理があった。
「ドラゴンがどれだけ強力で凶悪なモンスターなのかは、俺も解っている」
「「…………」」
ドラゴンからすれば、ザハークがそう思われる存在だよ。と、二人はツッコまずに話の続きに耳を傾ける。
「ミレアナが強いというのも解っているが、それでもドラゴンは侮れない存在だ。だからこそ、本番に向けて準備運動が必要だと思った。ただそれだけだ」
「準備運動という簡単な言葉を使って良いのかは解りませんが、その通りです」
「それじゃあ、早速明日から探索に向かうか?」
「えぇ、そうしましょう」
その日はたっぷりと英気を養い、翌日……ソウスケは二度寝などせず、一度目の起床で完全に目を覚まし、他の冒険者たちと変わらない時間に出発。
ただ、冒険者ギルドには向かわず、そのまま街を出て森の中へと入った。
「走り回ってれば、そのうち見つかるだろう」
なんとも雑な作戦ではあるが、スタミナに自身がある三人にとっては、決して悪くない。
「問題があるとすれば、その雷竜が既に移動していないかどうか、ですね」
「巣は見つかってないから、その可能性は否定出来ないな。でも、一度腰を下ろした土地から、そう簡単に離れないと思うぞ」
「その理由とは?」
「ドラゴンの生態に詳しくはないけど、基本的にドラゴンってプライドが高い生物だと思うんだ」
人間ほど細かい事を考えられる思考力はないものの、プライドという眼に見えないその生物を支えるものは……人間やモンスターなど関係無く、大なり小なり差はあれど持っている。
「それで、多少の怪我を負っただろうけど、それでもラグラスさんが将来自分の後釜にと考えてた人を殺し、その他の騎士たちを撤退に追い込んだ」
「つまり、自分の生活を脅かす存在はいなくなったと思ったと」
「そんなところだと思うよ。まぁ……本当に強いドラゴンなら、自分より強い相手と遭遇しても、逃げようとはしないと思うけど…………そこは、ちょっと解らないかな」
矛盾しているのでは? と疑問を持たれる事を言ってる自覚はある。
ただ、ベルブスの周辺に表れた雷竜は、ドラゴニックバレーの生存競争に敗れた、もしくはそこから逃げてきた個体。
自身より上の存在が現れれば、プライドなど放り捨てて逃げるかもしれない。
「とにかく、まだこの辺りから移動はしてないと思う」
「……強くとも、傲慢であればミレアナが望む相手にはならないかもしれないな」
「それはそれで仕方ありませんよ。私たちは雷竜にとって敵対者であり、私たちからやる気を出せと言われても、戦意が上がることはないでしょう」
「逆に怒りで視野が狭くなるかもしれないな」
ドラゴンという怪物が力任せに暴れ回れば、それはそれで危険極まりないのだが、ミレアナという一流の戦闘者からすれば、非常に戦りやすい戦況でしかない。
(ザハークやソウスケさんではありませんが、戦いの最中に言葉を投げかけるのは止めておきましょうか)
あれこれ考えながら探し続けること数時間……昼休憩も挟み、遭遇するモンスターを瞬殺しながら移動していると、気になる気配を感じ取り、ミレアナは一人でその方向に向かって駆け出した。
434
あなたにおすすめの小説
異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』
アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた
【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。
カクヨム版の
分割投稿となりますので
一話が長かったり短かったりしています。
虹色のプレゼントボックス
紀道侑
ファンタジー
安田君26歳が自宅でカップ麺を食ってたら部屋ごと異世界に飛ばされるお話です。
安田君はおかしな思考回路の持ち主でわけのわからないことばっかりやります。
わけのわからない彼は異世界に転移してからわけのわからないチート能力を獲得します。
余計わけのわからない人物に進化します。
作中で起きた事件の真相に迫るのが早いです。
本当に尋常じゃないほど早いです。
残念ながらハーレムは無いです。
全年齢対象で男女問わず気軽に読めるゆるいゆる~いストーリーになっていると思いますので、お気軽にお読みください。
未公開含めて30話分くらいあったのですが、全部行間がおかしくなっていたので、再アップしています。
行間おかしくなっていることに朝の4時に気づいて右往左往して泣く泣く作品を削除しました。
なかなかに最悪な気分になりました。
お気に入りしてくださった方、申し訳ありません。
というかしょっちゅう二行も三行も行間が空いてる小説をよくお気に入りしてくださいましたね。
お気に入りしてくださった方々には幸せになってほしいです。
無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった!
「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」
主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!
【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ
一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。
百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。
平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。
そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。
『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました
KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」
勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、
ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。
追放すらできない規約のせいで、
“事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。
だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。
《超記録》――
敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。
生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。
努力で《成長》スキルを獲得し、
記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。
やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。
対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、
記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。
一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。
さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。
街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。
優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。
捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。
爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる