転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百八話 逆に冷静に

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「おはよう、ミレアナ」

「おはようございます、ソウスケさん」

「………………は、ははは。なんか、思ってた以上に凄いな」

テントから出たソウスケは目の前の光景を見て、久しぶりに景色というものに対して感動を覚えた。

「これが、ドラゴニックバレーか」

確かに大きな谷がある。
だが、それだけではない。

他にも森林や巨大な湖など、様々なエリアが存在する。

(予想の……何十倍もの広さがあるな)

目の前の景色に感動していると、ふと鼻に入ってきた匂いにようやく気付く。

「あっ、やっぱり夜襲があったか」

「あぁ。食後の良い運動になった」

満足気な表情を浮かべながら頷くザハーク。
そしてザハークが討伐した死体をミレアナが解体していた。

(それじゃあ、俺一人でやるか)

解体はミレアナに任せ、ソウスケは朝食の準備を始めた。
そして約一時間後、解体も終わり……全員の腹が満たされたところで、三人は出発。

「…………」

(よほど、楽しみだったようですね)

チラッと横を見ると、嬉しさが隠せないのか……変な笑みを浮かべているソウスケがいた。

「…………」

(こちらもこちらで、この時を非常に楽しみにしていたようですね)

ザハークもドキドキワクワクしているのが解るほど、無言ではあるものの……笑みだけはハッキリを浮かんでいた。

そんな前衛二人が戦る気満々な笑みを浮かべている中、主に後衛を担当するミレアナは普段通りの表情を浮かべていた。
正直なところ、多少のワクワク感はあった。

だが、野郎二人? ほどのワクワク、ドキドキ感は持っておらず、寧ろ二人がここまでドキドキワクワクしているからこそ、自分が冷静さを保っていなければという思いがあった。

「ギィアアアアアッ!!!!」

「俺が、戦るッ!!!!」

ドラゴニックバレーに足を踏み入れてから約数十秒後、早速火竜が三人の前に現れた。

するとザハークよりも先に一瞬ソウスケの方が早く飛び出し、グラディウスを抜剣。

「……了解」

正直、ザハークも戦りたかった。
しかし、基本的に自由に動いているものの、自身がソウスケの従魔であることは忘れていなかった。

ソウスケがこれから遭遇するドラゴンの相手を全て担当するような暴挙に出ないと信頼しているという理由もあり、素直に引き下がった。

ミレアナは普段通りソウスケが戦闘を始めたので、乱入者が現れた時に直ぐ対処出来るよう、周囲の警戒を始めた。

「ぅおらッ!! ッシャ!!!!」

ソウスケは身体強化を使わず、グラディウスにのみ魔力を纏って戦っていた。

「ッ!! ジャァアアアアアアアッ!!!!!」

そこまで賢い個体ではないが、目の前の人間が体に魔力を纏ってない状態から、自分は嘗められているということを直ぐに察した火竜。

爪に炎を纏い、勢い良く炎斬を放ち始めた。

「っと、ほっ! ッ!!!!」

連続で炎斬を放ち続けた後は、ソウスケが避けて移動する場所にブレスが放たれた。

「あっぶね~~!! ははっ、さすがにちょっと調子に乗り過ぎてたな」

ソウスケはグラディウスに旋風を纏い、炎のブレスを両断。

身体強化のスキルを使用するか、魔力を纏って強化していればブレスも躱すことが出来た。
ちょっと調子に乗っていたと反省し、ソウスケは身体強化のスキルを発動し、積極的に接近戦を仕掛け始めた。

「シッ!!!」

「ガァアアアッ!!!」

火竜も火竜で容易に仕留められる人間ではないと判断し、魔力の残量など無視して炎を纏い、ソウスケに襲い掛かった。

(良い判断、だなッ!!!!!)

再びグラディウスに旋風を纏い、火竜の炎に対抗。

ソウスケは僅かに熱さに苦しむも、最終的には斬撃を回避しようとした火竜の尾を掴み……そのまま全力で叩きつけた。
そして体からではなく、後頭部から地面に激突したこともあり、首や心臓などの急所を斬り裂くなく討伐することに成功した。
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