転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千七十九話 アグレッシブ

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「ッ!!!!!!」

(突っ込みながらブレスか!!!)

ドラゴニックバレーに入ったソウスケを最初に補足したのは細身の風竜。

高速で突っ込みながら細目のブレスを放ち、ソウスケの命を狙う。
対して、少し早い段階で解っていたソウスケは相手のブレスと同じく、風をグラディウスに纏い、それなりに強く風斬波を放った。

放たれたソウスケの風斬波は風竜のブレスを切り裂きはしたものの、そのまま風竜自体を切断するには至らい。

「シャアアアアアアッ!!!!!」

そして、風竜にとっては斬り裂かれた風のブレスではなく、その次が本命。
止まりながら斬撃波を放ったソウスケに、そのまま咬み付こうと、顎を開く。

(風竜の割には? アグレッシブだな)

あまり咬合力に関しては強そうなイメージを持たれない風竜ではあるが、牙などに風を纏えば、その切れ味は決して侮れない。

「ふぅーー、あっぶな」

ソウスケは即座に用意した風掌を使い、左手を地面に叩きつけ……宙に飛んだ。

風竜は方向転換が出来ずにそのまま地面を食らってしまうも、その痕から風竜の顎がどれだけ侮れないかが良く解る。

「……ッ!!!」

奇襲が失敗した風竜は苦い表情を浮かべながらも、今度は翼を扇ぎ、多数の細かい風斬波を放つ。

(風竜はあぁいう事も出来るから厄介なのだけど、ソウスケ君はどうするのかしら)

迫る多数の風斬波。
それらに対し、ソウスケが取った行動は……いたってシンプル。

自身に当たる攻撃だけを狙い、旋風を纏ったグラディウスで斬り落とす。

(ちまちま、やられそうだな)

それはそれで面倒だと思い、旋風だけではなく雷をも纏い、更に身体能力を強化。

ロゼアやシャスティが驚いている間に、ソウスケは自ら風竜に向かって接近。
相手の速さに驚きながらも、風竜は全身を鞭のようにしならせ、尻尾から特大風斬波を放った。

(あんな事も出来るんだな)

ソウスケは咬みつきを避けた時と同じ様に、脚に風を溜めて放ち、蹴って回避。

放たれた特大風斬波は触れた岩棚を切断していくも……ソウスケには一切触れることはなく、風竜が気付いた時には……首に熱さを感じた。

「ッ、ァ…………」

「細身の風竜にしては、かなり攻め気が強い個体だったな」

今回のドラゴニックバレーでの探索では、傍にいるのがザハークとミレアナではないため、あまり遊ぼうという気にはなれないソウスケ。

しかし、普段のソウスケであれば間違いなく楽しさを感じるほど、今回遭遇した風竜の強さは並ではなかった。

「解体は……後でするか」

「ねぇ、ソウスケ君」

亜空間に風竜の死体を回収していると、少し離れた場所で見ていたロゼアが声を掛けてきた。

「さっきの、二つの属性を纏うあれは、普段から使ってるの、かしら?」

「普段は……あんまり使ってないかな? でも、使う時は全然使いますね」

「そうなのね……ありがとう、それを聞きたかっただけよ」

上位の冒険者になれば、二つの属性魔法を使える者は、そこまで珍しくない。
前衛の冒険者などであっても、ちらほらといる。

しかし、二つの属性を同時に纏える者は、決して多くない。

(武器云々や仲間云々じゃなくて、ジブラ君はもっと根本的な部分から負けてたみたいね~)

(……まだ終わっていない状況でこういった事を言うのもあれですが、ジブラさんは本当に無謀な勝負を挑んでしまったようですね)

ソウスケの手札の多さに驚き感心しながら、二人は改めて現在奮闘してるであろうジブラに心の中で憐みの言葉を零すのだった。




「ゥォオオラアアアアッ!!!!!」

「っ!!!!! ジャァアアア!!!!」

離れた場所から美女二人に南無南無と思われている事など露知らず、リザードを相手に奮闘し、自慢の槍を思いっきり振るっていた。
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