転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
1,140 / 1,259

千八十一話 虐殺者?

しおりを挟む
「ふぅーーーー……今日は、これぐらいで終わりにしましょうか」

「そろそろ日が沈んでくるし、丁度よさそうね~~」

ソウスケの周囲に横たわるは火竜と土竜の死体。

討伐者であるソウスケはササっと亜空間の中に放り込み、ドラゴニックバレーから撤収。

速足で森とドラゴニックバレーの境界線へと戻っていく。

「良いんですか?」

「良いでしょ。ねぇ、シャスティ」

「……そうですね。ソウスケさんが、全て持ち帰れることに変わりはないのですから」

境界線地点に戻ってきたソウスケたちは、解体をスタート。

数が数ということもあり、ロゼアとシャスティもドラゴンの解体を手伝った。

「よし、血がこれで全部ですね」

「ドラゴンを狩るってのは解ってたでしょうけど、よくここまでちゃんと用意してたわね」

「そりゃあ、ドラゴンの素材ですからね。無駄になるところはありませんよ」

ソウスケの言う通り、ドラゴンの素材はどこも無駄にならない。
それは亜竜であるリザードやワイバーンにも同じ事が言える。

とはいえ、それは現役冒険者であるロゼアと元冒険者であるシャスティも解っていた。
ただ、本当にそれらを全て持ち帰られるかは、また別問題であった。

「だとしても、これは……ねぇ」

「そうですね。壮観と、言えますね」

二人の前の前には、本日ソウスケが討伐したドラゴンの血が入っていた十本以上の瓶が並んでいた。

全てBランクドラゴンの血であり、錬金術師たちからすれば涎をだらだらと流して欲するほどの光景である。

そして、まだまだ作業は終らず、今度は内臓を取り出し、鱗や肉を剥ぎ……骨を解体。
解体に慣れた三人が作業を行ったものの……全てが終わった時には、既に日は完全に落ちていた。

「それじゃあ、がっつり食べましょうか」

そう言いながら、ソウスケはどんどんドラゴンの肉を焼いていく。
ロゼアとシャスティはお言葉に甘え、その肉を食べる。

そんな中、シャスティはドラゴニックバレーに入ってからのソウスケの活躍を振り返っていた。

(攻撃と魔法の両方が行える、ハイレベルな魔剣士……といった内容で済むことはないでしょう)

本日、ソウスケはたった一人で複数のBランクドラゴンを討伐した。

何度も何度も熱い戦いを、激闘を……死闘を乗り越えて!!! という訳ではない。
戦闘中、ソウスケは楽しそうに笑っており、時折……噂の一部を再現するかのように、烈火の如く槍を投げ……一撃で仕留めることもあった。

(竜殺し……どころではない。竜虐殺者……と呼ぶべきでしょうか)

竜殺し……ドラゴンスレイヤーとは、冒険者たちにとって非常に憧れの称号であり、その称号を手に入れる為に冒険者を目指す者もいる。

だが、世界は広い。

強者の中には差はある、そしてレイウルという大都市から離れた場所に、ドラゴニックバレーというドラゴンたちの楽園が存在する。

ドラゴンスレイヤーの称号を欲する冒険者たちにとっては、最高の挑戦地である。

そんなレイウルの地だからこそ、ドラゴンスレイヤーより上の称号が存在する。
それが、竜虐殺者。

ワイバーンやリザードなどの亜竜は当たり前のように殺し、Bランクドラゴンとの戦いでは常に笑っており、日に数体を一人で討伐することは珍しくない。
そして……Aランクのドラゴンを討伐する際にも笑みを浮かべており、何度もその激闘から生還している。

そういった者たちは、上澄みに位置する冒険者たちは畏怖の念を込め、竜虐殺者と呼ぶことがある。

(情報通りであれば、ソウスケさんはAランクモンスターとの戦闘経験がある。もしかせずとも……Aランクモンスターとソロで戦い、討伐しているでしょう。そうなると…………今回の狩りで解ることではあるでしょうけが……ギルドとしても、彼を竜虐殺者と正式に認識しておいた方が良さそうですね)

冷静に頭の中であれこれ考えならも、シャスティのドラゴンステーキを食べる手は一切止まらなかった。
しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

虹色のプレゼントボックス

紀道侑
ファンタジー
安田君26歳が自宅でカップ麺を食ってたら部屋ごと異世界に飛ばされるお話です。 安田君はおかしな思考回路の持ち主でわけのわからないことばっかりやります。 わけのわからない彼は異世界に転移してからわけのわからないチート能力を獲得します。 余計わけのわからない人物に進化します。 作中で起きた事件の真相に迫るのが早いです。 本当に尋常じゃないほど早いです。 残念ながらハーレムは無いです。 全年齢対象で男女問わず気軽に読めるゆるいゆる~いストーリーになっていると思いますので、お気軽にお読みください。 未公開含めて30話分くらいあったのですが、全部行間がおかしくなっていたので、再アップしています。 行間おかしくなっていることに朝の4時に気づいて右往左往して泣く泣く作品を削除しました。 なかなかに最悪な気分になりました。 お気に入りしてくださった方、申し訳ありません。 というかしょっちゅう二行も三行も行間が空いてる小説をよくお気に入りしてくださいましたね。 お気に入りしてくださった方々には幸せになってほしいです。

【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

【めっさ】天使拾った【可愛ぃなう】

一樹
ファンタジー
酔っ払いが聖女を拾って送迎する話です。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!

こはるんるん
ファンタジー
「アッシュ、お前には完全に失望した。もう俺の跡目を継ぐ資格は無い。追放だ!」  主人公アッシュは、世界最強の冒険者ギルド【神喰らう蛇】のギルドマスターの息子として活躍していた。しかし、筋力のステータスが80%も低下する外れスキル【植物王(ドルイドキング)】に覚醒したことから、理不尽にも父親から追放を宣言される。  しかし、アッシュは襲われていたエルフの王女を助けたことから、史上最強の武器【世界樹の剣】を手に入れる。この剣は天界にある世界樹から作られた武器であり、『植物を支配する神スキル』【植物王】を持つアッシュにしか使いこなすことができなかった。 「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」  さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。  そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)  かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...