転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千八十六話 あの二人はいないけど

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「こいつで、ラストにするか」

七日目の昼過ぎ、ソウスケはレヴァルグやブロウスは既に使用しておらず、いつも通り愛剣であるグラディウスを使ってBランクドラゴンと戦っていた。

「「ギィィイイアアアアアアアアアッ!!!!!!」」

現在アラッドが戦っているBランクドラゴンは、双頭の火竜。
頭を二つ持っており、主に視野の広さと二つの口から放たれる合体ブレスが非常に厄介。

(昨日灼熱竜と戦ったからか、やっぱり普通……いや、普通ではないか。それでもBランクドラゴンと戦うと、些か殺気が緩く感じる……かな)

相変わらず、油断しても大丈夫だろ! とは思えない存在感と圧を放っている。
それは間違いないのだが、先日ソウスケが激闘を繰り広げた灼熱竜の存在感や圧は文字通り生半可なものではない。
低ランクの冒険者が遭遇すれば、あまりの圧に戦わずして失禁して失神してしまう可能性が高い。

「よっと」

二つの口か放たれる火のブレスを躱し、尾から放たれる炎斬波を弾き飛ばして急接近。

「ッ!!!!!」

一つの口がそのままソウスケをかぶりつき、飲み込もうとするが……風を纏った足で宙を蹴って回避し、すれ違いざまにグラディウスで両断。

双頭の火竜は全身に炎を纏ってはいたものの……旋風を纏ったグラディウスから放たれた斬撃には耐え切れず、ポロっと落ちてしまった片方の頭。

「ジャアアアアアアアアアアッ!!!!!」

痛みはある……激痛ではあるものの、残ったもう片方の頭が全ての魔力を消費する勢いで高火力のブレスを放ったが、焦って放った攻撃はソウスケに当たることなくあっさりと躱されてしまう。

「ふっ!!!!!」

「ジャ、ァ……」

そして残った頭も綺麗に斬り落とされ……頭部を失った体は落下。

「お疲れ様です、ソウスケさん。予定通り、狩りはこれで終了するのですか?」

「そうですね。まだ日は沈んでませんけど、解体する時間を考えると、今ぐらいで切り上げた方が良いかと思って」

運ぶことが出来るのであれば、ギルドに所属している解体士たちに解体を頼んでも問題無い。

(まだ余裕はあるとは思いますが…………狩った量を考えれば、十分過ぎる。それを考えれば、早めに切り上げても問題無いでしょう)

三人は速足でドラゴニックバレーと森の境界に戻り、解体をスタート。
予定通り日が沈み始めるギリギリ前に解体は終了し、そこからレイウルに向かって再び速足で向かった。



(? なんか……ちらほらと視線を向けられてるな……なんでだ?)

現在、自分の傍にはミレアナとザハークがいない。
だからこそ、すれ違う者たちや同業者らしい者たちから視線を向けられる理由はない……そう思って周囲に視線を向けるが、ソウスケは直ぐに何故今も視線を向けられるのか理解した。

「「?」」

「なんでもないです」

現在、ソウスケの両隣には現役冒険者であるロゼアと元冒険者で現役受付嬢であるシャスティという二人の美女がいる。

知らない者が見れば、そういう事なのかと疑ってもおかしくない。
事情を知ってみる者が見れば……野郎たちからすれば、羨ましいことこの上ない。

(この二人とあれだけヤったなんて知られれば……真面目に何十人って野郎冒険者たちから狙われそうだな)

ミレアナという美人エルフと一緒にいるくせに何様どの様のつもりだ!!!!! といった怒号を浴びせられながら襲われる可能性は……十分にある。

加えて、ロゼアとシャスティのことを気に入っている、もしくは狙っている冒険者たちの中にはCランク以上の冒険者が割といるため、本当にそういった事態になってしまう場合……ソウスケとしてはそれなりに厄介であった。

(……まぁ、二人ともバラすことはないだろう……多分)

人生経験が浅いソウスケにとっては、とにかく二人の口の堅さを信じるしかなかった。
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