転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千九十一話 楽しく全力で

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「どうですか」

「……とりあえず、多く造ったのう」

ジブラとの狩り勝負を終えてから十五日後、ソウスケはグロードの元に訪れていた。

そして現在、グロードの目の前には多数の剣や槍、杖に腕輪や指輪などのマジックアイテムが並べられていた。

「いやぁ~~、ジブラとの勝負を終えてから……十五日ぐらい? ずっと俺とザハークは鍛冶場に籠ってて、ミレアナも錬金術での製作に没頭してたんで」

「とても充実した日々を送れました」

ソウスケたち三人は……特に目標を持って武器やマジックアイテムを造っているわけではない。

ただ、Bランクドラゴンの素材が大量に入ったので存分に自分たちで使おうと、思い思いに造りたい物を造っていた。
そのため、特に息苦しい辛さなどは感じない。

普段のドラゴニックバレーでの探索も重労働ではあるものの、総合的には一日の大半を製作に費やす日々の方が長い台だ集中し続けているため、寧ろ夕食時に食べる飯やエールが普段よりも上手いと感じていた。

「そうか。それで、儂の前に持ってきたという事は、これを売り物にするってことで良いのか?」

「はい、お願いします」

「分かった。それじゃあ、少し待っててくれ」

職人の眼でソウスケたちが造った武器を一つ一つ丁寧に視ていく。

楽しいという気持ちを優先して造っていた三人。
決して……決して手を抜いて造っていたわけではない。
楽しさを忘れず、それでいて本気で造っていた。

不出来な品ではない。
そう思いながらも、超一流であるグロードの職人の眼で視られれば……どうしても緊張してしまう。

「…………うむ。小僧たちの逸品、視させてもらった」

「「……」」

「今回も、全て合格じゃ」

合格の言葉を貰い、二人は元気良く喜ぶ……のではなく、ほっと一安心した表情を浮かべた。

「なんじゃ、前も全部合格じゃったろ」

「いや、そうなんですけど……勿論、どれも全力で造ってますよ。ただ……」

「正直なところ、グロードさんに視られると、また話は変ってきます」

「ふむ…………そういえば、儂も昔は似た様な思いをしたもんじゃな」

今でこそ超一流の鍛冶職人に至り、後輩たちの作品を評価し、アドバイスを送る立場となったが、昔は一人の鍛冶師見習いだった。

才覚こそあれど、一足飛び越えて上に至ることはなく、何度も悔しい思いをしながら研鑽に研鑽を重ね続けた。

(……ふっふっふ。それだけ、小僧たちが本気でやってるということじゃな)

三人の本職は冒険者と従魔。
鍛冶や錬金術は、あくまで副業程度に収まっている。

だが、本当に趣味や対して大事にしていない副業であれば、今回の様に超一流の職人に対して緊張することはない。

「それにしても、チラッとだけ話を聞いたが、ジブラのガキに随分と大差で勝ったようじゃの」

「みたいでしたね」

ジブラは見事、期間内に三体のBランクドラゴンの討伐に成功した。
だが、ソウスケはその十倍以上のBランクドラゴンを討伐し、更にはAランクドラゴンまで一人で討伐していた。

圧勝を越えて、完全にオーバーキルである。

「ジブラの後ろの連中が何か策を企てようと、小僧の勝ちは変らんかったじゃろ」

「……一応ギルドの方でもそういう事をしたらって契約を結んでもらったんですけど、やっぱり組織の上に立つ大人たちってあんまり信用出来なくて。だから、策を企てても絶対に勝てないぐらい差を付けようと思いながら動きましたね」

「そうか……まぁ、その歳で貴族の出でもないのに、そこまで考えられとるのは良い事じゃ」

ソウスケの考えを褒めながら、グロードは部屋の隅から一つのアイテムバッグを取り出し、中から大量の金貨を取り出した。

「ほれ、お前たちの売上じゃ」

「「………………」」

「? 何を固まっとるんじゃ」

「いや、だって……グロードさん、白金貨も混ざってませんか?」

「それに、金貨も…………ざっと数百枚はありますね」

「お主らの武器がほぼほぼ売れたんじゃ。言っておくが、キッチリ儂も利益を得ておるからの」

グロードからすれば、ソウスケたちが自分の店に置くことを許可した武器の質、量を考えれば当然の額。

しかし、二人が演技ではなく本当に驚いている姿を見て、普段はどんな値段で売っていたのだとやや呆れた。
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