転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百十話 学生だからこそ

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「ギィィィイイアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ッ!!!!!!」

「「「「「「「っ!!!!」」」」」」」

ノックスたちと戦闘中である火竜が……吼えた。
戦闘が始まってから、既に中盤も終わって終盤に差し掛かる頃、火竜が本気で雄叫びを上げた。

戦闘が始まってから、何度も吼えてはいた。
ただ……今回の声は、何かが違うと即座に感じ取ったノックスたち。

(咆哮を使用した本気の吼え……それと、本気で殺意を全開にした、かな?)

離れた場所から観察と警戒を行っているソウスケやミレアナも、先程までと今回の咆哮……何が違うのか、直ぐに把握。

咆哮というのはスキルの一つであり、私用することで周囲の者たち、もしくは一部の者たちに重圧を与える。
使用する存在、スキルレベルによってはそれ一つで相手の戦意を挫く、もしくは失神させて物理的に戦闘を終わらせることも可能。

ドラゴニックバレーに足を踏み入れてから直ぐに現れた火竜とはいえ、正真正銘の属性竜……Bランクドラゴンである事は間違いない。
並みの冒険者たちであれば、目の前で離れた雄叫びに気後れし、無意識に体が後ろに下がってもおかしくない。

「それが、どうしたッ!!!!!」

「っっっ!!!!」

しかし、彼らは退かなかった。
衝撃を受けながらも、退かず……果敢に前に跳び出したノックスだけではなく、他六人……全員、即座に行動を再開させた。

(……これはちょっと驚きだな)

硬直した時間があまりにも短い。
殺意を全開にした火竜が攻撃に移るよりも早く、彼らは精神を立て直して標的へと攻撃を再開させた。

(こんなの、先生たちの圧に、比べればッ!!!!!)

(スゲぇけど……あの重圧に、比べりゃあ!! どうってことねぇえええッ!!!!!)

レイヤーズ学園の教師たちは全員がドラゴンスレイヤー。
それは間違いないが、全員がドラゴンという存在に対して苦手意識がないかと言うと、そうではない。

寧ろ、どれだけドラゴンという存在が恐ろしいか、よく知っている。
だからこそ、相手が亜竜であろうと、ドラゴンという存在が本気の殺意を放った時……教え子たちが怯まず、一瞬のスキを突かれて殺されないように耐性を付けさせている。

本場の戦場で放つ殺気との差には多少の差はあれど、冒険者で例えるならBランクやAランクの冒険者たちが全力で殺すつもりの戦意を、殺意を向ける。
相手が自分たちに色々と教えてくれている教師という立場の人間ということもあり、学生たちが感じる恐怖心は増す。

これまで多くの学生たちが教師陣の本気の殺意を向けられてきたが……中に失神、なんなら失禁してしまう生徒も珍しくはなかった。

そんな教師たちに向けられてきた圧と比べれば!!! というのもおかしな話ではあるが、兎にも角にも学生である彼らからすれば、ドラゴンの圧よりも教師たちから向けられる圧の方が、よっぽど恐ろしい感じる。

「……どうやら、ザハークの心配は杞憂だったようですね」

「そうみたいだな。しかし、Bランクドラゴンと戦うのは、これが初めてなのだろう? にもかかわらず、よく耐えられたな」

「それは俺もちょっと驚いた……レイヤーズ学園が、あぁいう状況に備えて、何か対策をしてるのかもしれないな」

「…………股間を潰されるのと比べれば問題無いだろう、とかか?」

「「ぶっ!!!!」」

珍しく下ネタを口にしたザハーク。
二人はまさかの言葉に、耐え切れずに吹きだした。

「そ、それは……ど、どうなんだろうな」

「ざ、ザハーク。女性には、男性と同じ器官はないのですよ」

「それもそうか…………しかし、股を蹴られれば痛いのではないか?」

それは確かに間違っていない。
股を蹴られて痛いのは、決して男性だけではない。

それはそうのだが、絶対にレイヤーズ学園が講じてるであろう対策とは違うと断言でき、二人はノックスたちの戦闘が終わるまで思い出し笑いが止まらなかった。
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