転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百三十七話 思い返してみると

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「優秀過ぎて、何も言うことがないな」

誰一人、本当の意味で自分たちの力だけで倒せたわけではないと理解している。
そんなノックスたちの精神状態に、ソウスケは尊敬の念を感じた。

「いや、そんな事ないっすよ。本当に……まだまだっすよ」

ジャバたちの目標はドラゴンスレイヤーになること。
そのためには、まずBランクドラゴンをソロで討伐するだけの戦闘力が必要になる。

そこに関しては……まだまだこれからの話にはなるものの、七人は薄っすら見えていた。
しかし、最終的な目標、Aランクドラゴンの討伐に関しては、まだまだ……靄すら見えない。

「……Aランクのドラゴンは、以前ソウスケさんが討伐した二体の逆鱗状態になった風竜より強いんですよね」

「あぁ、そうだな……うん。逆鱗状態になった風竜も恐ろしい存在だったことに変わりはないけど、それでも純粋な戦闘力だけなら、間違いなくAランクのドラゴンの方が上だね」

ソウスケが見たこと、対峙したことがあるAランクドラゴンは溶岩竜、灼熱竜、赤龍の三体。

それらのドラゴンが有する力は、今でも容易に脳裏に思い浮かばせることが出来る。

「ソウスケさんたちからすれば、生意気言ってる自覚はあるんすけど、やっぱり……最終的には、Aランクのドラゴンをぶっ殺せるようになりたいと思ってるんで」

「そっか…………それなら、やっぱり武器には拘った方が良いよ」

「きっちり金掛けて、ってことっすか」

「金を…………うん……そう、だね」

間違っていない。
ソウスケは何も間違った事は言っていないが……自身が有する武器たちを思い返すと、ハッキリと断言出来ない。

ソウスケの主な使用武器はコボルトキングの素材を使用したグラディウスに、水龍の蒼剣と蛇腹剣。
二本の名槍……レヴァルグとブロウス。

グラディウスは腕利きの鍛冶師にしっかりと金を払って造ってもらったが、水龍の蒼剣はダンジョンの宝箱から。
蛇腹剣は神からの貰い物であり、レヴァルグはある遺跡から……本当はある侯爵家の人間に受け継がれるべき物を知らん顔して手に入れ、ブロウスはルクローラ王国との戦争で一番活躍した褒美としてエイリスト王国の王家から貰った。

思い返してみると、大金を掛けて手に入れた武器というのが殆どない。

「ふふ。大丈夫ですよ、ソウスケさんその考え自体は間違っていませんよ」

「だ、だよな」

「……もしかして、ダンジョンで手に入れた武器が多い感じですか?」

ナディーの考え通り、ソウスケの亜空間にはそういった武器が大量にしまわれている。

「まぁ、そうだね」

「ってことは、ダンジョンの宝箱から手に入れた武器から探すっていうのもありってことですよね!!」

目標はドラゴンスレイヤー。
だからこそ、ダンジョンという場所には、純粋な好奇心が湧く。

「…………ありかなしかで言えば、ありではあるかな。けど、ダンジョンの宝箱からBランクドラゴンやAランクドラゴンに通じる武器を手に入れるってなると………………怖いところがあるかな」

「そうなのですか? ボスの攻略法さえ理解し、実戦出来るようになればと思うのですが……あっ、いえ。勿論ダンジョンという場所を嘗めている訳ではありません」

「うん、その方が良いよ。勿論、攻略方法さえ分かればボスを上手く討伐出来るっていうのは、間違ってはないと思う。でも、ダンジョンによってはボスの種類が定まってなかったり、途中で進化することもある」

「し、進化まで、するのですね」

種類が違うというのはまだ理解の範疇が及ぶネイトだが、途中でボスモンスターが進化するというのは……少々理解出来ないところがあった。

「驚く気持ちは解るよ。ただね、ダンジョンは正直ボス戦よりもそこまで辿り着くのが大変だったりする」

「予測不能なトラップ……もしくは、下に降りるのを急ぐあまり、普段であれば引っ掛からない罠にも引っ掛かってしまうようになると」

「良く解ってるね、ノックス。君たちがいずれダンジョンに挑戦するのを、俺は止めようとは全く思わない。ただ、ボスモンスターを一度倒したからといって、容易にそこまでもう一度辿り着けるとは思わないでほしいかな」

実体験ではないものの、同業者からの話ではよく聞く内容であり、ノックスたちがほんの少しでもダンジョンに潜ってみたいという気持ちがあるのであれば、必ず意識してほしかった。
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