転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百五十六話 貫く

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(なっ!!!!????)

その変化に……ソウスケは心の底から驚かされた。

レヴァルグによる投擲は水龍のブレスを打ち破るには至らないものの、それでも半分以上は貫き、勢いは弱まるものの……それだけである。

弾き飛ばされる、ということはなかった。

その光景がソウスケに、自身の体に大ダメージが与えられる光景を強制的に思い浮かばせる。
結果……ソウスケは全力で回避の選択肢を取った。

「…………逃げ足だけは速いのだな」

「速くて損になることはありませんよ」

軽口を叩きながらも、ソウスケの意識は圧縮された水龍のブレスが通った場所に向けられた。

眼を離せば即座に攻撃が飛んでくるため、じっくり除くことは出来ない。
しかし、貫いた際の音から……おおよそではあるものの、何メートルほど貫いたかは解る。

(数十メートルどころの話じゃない…………百、いってるか?)

ドラゴニックバレーという場所は、地面そのものが普通ではない。

勿論、中堅以上の堅さを持つ鉱石などと比べれば強度は劣るものの、ドラゴンという生物たちが根城にする場所だからか、爪撃や尾撃……ドラゴニックバレーで活動する冒険者たちの物理攻撃が叩き込まれても、眼を見開くほど砕かれたり削られることはない。

そんな地面が、百メートルほど貫かれる。
詳しい強度などは知らないソウスケだが、一度の攻撃でそれほど貫いたという事実だけで、驚嘆せざるを得ない。

だが……似た様な気持ちを抱いているのは、水龍も同じだった。

(あの人間……何をした)

初めて、自身の最大火力となる攻撃に変化を加えた。

龍たる水龍としては認めたくないところだが、その変化は虚を突くという形をなした。
範囲は狭まるものの、それでもそこら辺のドラゴンよりも大きな体を持つ水龍が放つブレスは、圧縮したとしてもソウスケを飲み込める。

しかし、ソウスケは水しぶきは受けるものの、それでも圧縮ブレスを喰らうことなく回避することに成功。

(何か、手札を隠しているということか)

表情を見る限り、先程の圧縮ブレスが人間に衝撃を与えたのは間違いない。
であれば……水龍が行うことは決まった。

「ッ、ッ、ッ、ッ!!!!」

「チッ!!!」

沈黙を先に破ったのは水龍。

通常のブレスではなく、圧縮したブレスであれば人間は嫌がる。
それを知り、何度も圧縮ブレスを放ち始めた。

(冷静に、潰しに、きたか!!!)

圧縮して放つのはブレスだけではなく、これまで放ってきた水魔法による攻撃を全て圧縮して放つようになった。

槍は細く、強靭に。
玉は堅く、刃は更に鋭く……主に攻撃力を重視し、とにかくソウスケにダメージを与えられる攻撃を放ち続ける。

対して、ソウスケも同じく相殺する攻撃魔法の圧縮を行って対抗。

タイミング的に躱せないものだけをレヴァルグで弾き飛ばす。

(俺が、まだ手札を……持ってるのは、バレた、だろうな)

何度も挑発した。
それでも、ソウスケは決して水龍の事を嘗めているわけではない。

寧ろ本気でその強さを恐れているからこそ、ここぞというタイミングの時に最強の手札を切りたかった。

(そうなると…………チッ、そろそろ……決めないと、あれか)

バカみたいに攻撃魔法を放ち続けるソウスケ。
並みの魔術師たちなら「ふざけんな!!!!」と怒りたくなるような魔力量を有しているソウスケだが、魔力総量であれば水龍も負けていない。

ソウスケにはマジックポーションという魔力を回復する手段があるものの、水龍は人間がそういった道具を有していることは知っているため、使おうとすれば更に弾幕の数が増えてもおかしくない。

並列思考のスキルを持っているからこそ捌き切れているソウスケだが、これ以上数が増えると……流石に焦りが増し、ミス……隙に繋がってもおかしくない。

(それ、なら)

タイミング的に回避が間に合わない圧縮ブレスレヴァルグを弾き飛ばし……そのまま両手を柄から放し、亜空間へと手を突っ込んだ。
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