1,256 / 1,415
千二百五十四話 灯された
「「「「「「っ、そこまでだ!!!!!」」」」」」
日が天辺から傾き、空色が変わる頃、その日の終戦を告げる男が鳴り響く。
すると、各陣営のリーダー格の者たちが制止の言葉を告げる。
音が鳴り響けば、それがその日の終戦の合図。
そこから先は敵を攻撃してはならない……それは兵士や冒険者、騎士など関係無く伝えられている。
それを守らなければどうなるかという最悪の未来も告げられているが、そこは人間と……戦争という戦場。
そもそも殺し合いの戦闘が始まってから五時間以上が経過しているとはいえ、戦闘による高揚感は残り続け、まだアドレナリンが流れ出ている者もいる。
加えて……当たり前の話だが、殺し合いをすれば、死人が出る。
決闘という戦いであれば、勝負さえ決まれば別に対した相手を殺す必要はない。
だが、戦争という大規模大乱戦で戦うのであれば、基本的に対峙した相手を殺さなければならない。
これだけダメージを与えたのだから大丈夫だろう……そう思って眼を逸らした隙に、力を振り絞った一撃で急所を貫かれる可能性もある。
見逃した敵が、別の場所で同士を殺すこともある。
だからこそ、ここでは敵を……絶対に殺さなければならない。
「くっ……クソッ!!!!」
人が死ねば、その人物と繋がりある者は悲しみ、怒る。
知人か友人か……はたまた家族を殺した相手を自分の手で殺したくなる。
それが無理ならば、殺した相手の仲間でも良いから殺し、胸の内から溢れ出る憎しみをぶつけたい。
そんな黒い炎を宿った人間はそう簡単に止まれない。
だからこそ、各部隊のリーダーたちがそれぞれの耳に通る様に、終戦の合図を告げなければならない。
「次は、ぶっ殺す!!!!」
それは……ゴリディア帝国の者の言葉、だけではなかった。
確かにアルバース王国側は戦況を優位に進められた。
粒が揃っており、平均的な戦力もそれなりに高い。
そこに加えて、元々上の人間たちが戦力としてカウント、把握していなかった存在……虎竜ことブローズの存在が大きかった。
一時は強力な面子が集まり、ブローズに狙いを絞って討伐しようと動くも、そうはさせまいとアルバース王国側も動き、強者同士が衝突。
その一幕ではブローズが頭を使い、別の戦場に向かうと見せかけ、数発だけ爪撃をぶち込んだ。
不意を突かれた一撃をモロに食らい、その戦場ではアルバース王国の強者たちが終始優位な戦況で進めた。
その後もブローズは各戦場を飛び回り、多くのアルバース王国側の戦闘者たちを助けながら、決めるとこではしっかりと強撃を叩き込み、敵の粒を潰していた。
そんなブローズの貢献もあって死者数はアルバース王国の方が少ない……そう、少ないというだけで、ゼロではない。
(あいつは、必ず俺が殺す)
(あいつの仇は、俺が必ずっ!!!!)
(許さない……あの男だけは、絶対に私が!!!!!)
これは戦争なのだから仕方ないだろう、といった感覚で済ませられるなら、人間は復讐という行動を取らない。
たとえ自分が身を置く戦場で、自陣営が優位に戦況を進められていたとしても……それはそれで嬉しい事ではあるが、親しい者を殺された件はまた別。
両陣営……既に、憎しみの炎は灯っていた。
「「「「「「「「「「乾杯!!!」」」」」」」」」」
スパリガに戻った冒険者たちは勢い良く肺を合わせる。
勿論、中身はエールではなく水。
幸いにも優れた魔力操作技術を持つ水魔法使いのお陰で、冷たい水を喉に流し込むことが出来る。
「いやぁ~~~~、美味い!!!!」
「だな」
「本当にね~~~。あっ、ディーナ!! 本当に助かたわ~~~~」
「? …………別の戦場で戦っていなかったか?」
声を掛けてきた女性冒険者のことを覚えていたディーナ。
訓練場で手合せしたことがあり、実力者であると認識していた。
「ほら~、あなたの従魔の珍しい……虎? ちゃんのことよ」
「あぁ、ブローズか」
ブローズに各戦場を周って同士たちを助けてあげてほしいと伝えたのはディーナ自身であるため、目の前の女性が何故自分に礼を告げたのか直ぐに理解出来た。
「そうそう、ブローズちゃん! いやぁ~~~、あの子本当に凄いわ~~」
「ふふ、そうだろう」
彼は、既にディーナにとって大切な仲間。
大切な仲間が褒められるのは、当然気分が良い。
「あぁ、そうだな……あの、子? には驚かされた」
「だよな~~~~。ヤバそうだから助けようと思ったら、良い感じに助けられちゃったもんな」
「そうそう。こっちは任せて別のところをお願い、みたな感じの事を伝えたら、別の戦場に向かうふりして数回ぐらい爪撃をぶっ放してくれたの」
「っ、なるほど…………それは、確かに驚かされたな」
ブローズは、まだ子供である。
ディーナと共に行動するようになって戦闘経験は積めたが、それでも考える頭を成長させる機会は殆どなかった。
それは寧ろ当然のことであり、ブローズとディーナが共に戦えば、大抵はどうとでもなってしまう。
だが、今回はディーナに危害が及ぶこともなかったため、単独で行動し続けなければならなかった。
そして手助けと言っても多くの形がある。
そこで、ブローズは咄嗟に移動すると見せかけ、置き土産をぶっ放すという選択肢を取った。
(本当に、頼もしい相棒だ)
色々と上機嫌になったディーナは戦争が終わった後、ブローズに美味しい肉をご馳走しようと決めたのだった。
日が天辺から傾き、空色が変わる頃、その日の終戦を告げる男が鳴り響く。
すると、各陣営のリーダー格の者たちが制止の言葉を告げる。
音が鳴り響けば、それがその日の終戦の合図。
そこから先は敵を攻撃してはならない……それは兵士や冒険者、騎士など関係無く伝えられている。
それを守らなければどうなるかという最悪の未来も告げられているが、そこは人間と……戦争という戦場。
そもそも殺し合いの戦闘が始まってから五時間以上が経過しているとはいえ、戦闘による高揚感は残り続け、まだアドレナリンが流れ出ている者もいる。
加えて……当たり前の話だが、殺し合いをすれば、死人が出る。
決闘という戦いであれば、勝負さえ決まれば別に対した相手を殺す必要はない。
だが、戦争という大規模大乱戦で戦うのであれば、基本的に対峙した相手を殺さなければならない。
これだけダメージを与えたのだから大丈夫だろう……そう思って眼を逸らした隙に、力を振り絞った一撃で急所を貫かれる可能性もある。
見逃した敵が、別の場所で同士を殺すこともある。
だからこそ、ここでは敵を……絶対に殺さなければならない。
「くっ……クソッ!!!!」
人が死ねば、その人物と繋がりある者は悲しみ、怒る。
知人か友人か……はたまた家族を殺した相手を自分の手で殺したくなる。
それが無理ならば、殺した相手の仲間でも良いから殺し、胸の内から溢れ出る憎しみをぶつけたい。
そんな黒い炎を宿った人間はそう簡単に止まれない。
だからこそ、各部隊のリーダーたちがそれぞれの耳に通る様に、終戦の合図を告げなければならない。
「次は、ぶっ殺す!!!!」
それは……ゴリディア帝国の者の言葉、だけではなかった。
確かにアルバース王国側は戦況を優位に進められた。
粒が揃っており、平均的な戦力もそれなりに高い。
そこに加えて、元々上の人間たちが戦力としてカウント、把握していなかった存在……虎竜ことブローズの存在が大きかった。
一時は強力な面子が集まり、ブローズに狙いを絞って討伐しようと動くも、そうはさせまいとアルバース王国側も動き、強者同士が衝突。
その一幕ではブローズが頭を使い、別の戦場に向かうと見せかけ、数発だけ爪撃をぶち込んだ。
不意を突かれた一撃をモロに食らい、その戦場ではアルバース王国の強者たちが終始優位な戦況で進めた。
その後もブローズは各戦場を飛び回り、多くのアルバース王国側の戦闘者たちを助けながら、決めるとこではしっかりと強撃を叩き込み、敵の粒を潰していた。
そんなブローズの貢献もあって死者数はアルバース王国の方が少ない……そう、少ないというだけで、ゼロではない。
(あいつは、必ず俺が殺す)
(あいつの仇は、俺が必ずっ!!!!)
(許さない……あの男だけは、絶対に私が!!!!!)
これは戦争なのだから仕方ないだろう、といった感覚で済ませられるなら、人間は復讐という行動を取らない。
たとえ自分が身を置く戦場で、自陣営が優位に戦況を進められていたとしても……それはそれで嬉しい事ではあるが、親しい者を殺された件はまた別。
両陣営……既に、憎しみの炎は灯っていた。
「「「「「「「「「「乾杯!!!」」」」」」」」」」
スパリガに戻った冒険者たちは勢い良く肺を合わせる。
勿論、中身はエールではなく水。
幸いにも優れた魔力操作技術を持つ水魔法使いのお陰で、冷たい水を喉に流し込むことが出来る。
「いやぁ~~~~、美味い!!!!」
「だな」
「本当にね~~~。あっ、ディーナ!! 本当に助かたわ~~~~」
「? …………別の戦場で戦っていなかったか?」
声を掛けてきた女性冒険者のことを覚えていたディーナ。
訓練場で手合せしたことがあり、実力者であると認識していた。
「ほら~、あなたの従魔の珍しい……虎? ちゃんのことよ」
「あぁ、ブローズか」
ブローズに各戦場を周って同士たちを助けてあげてほしいと伝えたのはディーナ自身であるため、目の前の女性が何故自分に礼を告げたのか直ぐに理解出来た。
「そうそう、ブローズちゃん! いやぁ~~~、あの子本当に凄いわ~~」
「ふふ、そうだろう」
彼は、既にディーナにとって大切な仲間。
大切な仲間が褒められるのは、当然気分が良い。
「あぁ、そうだな……あの、子? には驚かされた」
「だよな~~~~。ヤバそうだから助けようと思ったら、良い感じに助けられちゃったもんな」
「そうそう。こっちは任せて別のところをお願い、みたな感じの事を伝えたら、別の戦場に向かうふりして数回ぐらい爪撃をぶっ放してくれたの」
「っ、なるほど…………それは、確かに驚かされたな」
ブローズは、まだ子供である。
ディーナと共に行動するようになって戦闘経験は積めたが、それでも考える頭を成長させる機会は殆どなかった。
それは寧ろ当然のことであり、ブローズとディーナが共に戦えば、大抵はどうとでもなってしまう。
だが、今回はディーナに危害が及ぶこともなかったため、単独で行動し続けなければならなかった。
そして手助けと言っても多くの形がある。
そこで、ブローズは咄嗟に移動すると見せかけ、置き土産をぶっ放すという選択肢を取った。
(本当に、頼もしい相棒だ)
色々と上機嫌になったディーナは戦争が終わった後、ブローズに美味しい肉をご馳走しようと決めたのだった。
あなたにおすすめの小説
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った
歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。
だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」
追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。
舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。
一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。
「もう、残業はしません」
聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。
「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」
と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい
歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、
裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会
ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った
全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。
辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。