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千二百五十五話 良い薬
「俺たちとしては有難かったが、ディーナ。お前としては大丈夫だったのか?」
ある男性冒険者は、ディーナがブローズという有能な従魔を敢えて自分の傍に置かず、遊撃手として動くように指示してくれたことに感謝の意を示した。
ただ、それはそれとして、強力な従魔を傍に置かなかった三人は大丈夫だったのかという心配もあった。
「あぁ、大丈夫だ。ブローズがいなくとも、私は一人で戦っている訳ではないからな」
ディーナはオルフェンとクラートと共に行動し続けていた。
結果として三人は戦闘中、偶に怪我を負う事はあるが、戦闘不能になるほどのダメージを負うことはなく、最後まで戦い続けた。
「オルフェンとクラートとパーティーを組んでるんだったか」
「そうだ。当たり前だが、訓練場に居る時の二人とは訳が違うぞ」
「い、いや、それは皆さんも同じだと思うので」
クラートはCランクであっても、自分が世間知らずの若者である事を自覚している。
臨時とはいえパーティーを組んでいるディーナに褒められのは嬉しいが、少々恥ずかしさを感じる。
「戦ってる時のクラート、結構キレキレでしたよ」
そこで、比較的ディーナたちの近くで戦っていた若い男性冒険者が会話に参戦し、彼も本気モードになったクラートのことを褒める。
「それは、その……ほら、アラッドさんのお陰だから」
「アラッドって、あのアラッドか?」
「はい、そのアラッドさんです」
話を知らない先輩冒険者に、クラートは自分がどの様にしてアラッドと知り合い、力を貰ったのかを説明。
聞き終えた先輩冒険者は色々と感心すると同時に、アラッドが取った行動に驚かされた。
「話はちょくちょく聞いてるんだが……あれだな。マジで目線が俺らと似た様な感じがするな」
「そうだね。若くてもキレる頭を持ってる子はいるけど、それとはまた別だね」
「達観してるって感じ~~? 精神年齢? ってやつが随分上なのかもしれないね~~」
アラッドは貴族出身ではあるものの、ベテランやベテランに近い者たちは貴族の子供だからといって、多くの者が達観した考え方を持っている訳ではないことを知っている。
だからこそ、ベテラン達からすればその実力よりも考え方の方が異質だと感じた。
「それじゃあ、グリフォンの素材をメインで造った武器を使ってんのか」
「はい、そうなんです。良い装備を使ってるので、寧ろ訓練時よりキレキレで動けないとダメと言いますか」
クラートが言っていることは、確かに間違っていない。
しかし、メインの素材として使われているモンスターのランクが高いと、その分装備の質を引き出すのが難しくなる。
装備車の実力が低ければ半分も引き出せず……武器に至ってはコントロール出来ずに暴走、暴発してしまうことも珍しくはない。
だからこそ、クラートは低姿勢な態度を崩さないが、ベテランたちこそクラートが運良く質の高い装備が手に入り、戦争で活躍出来ている、とは思わない。
(良い武器を貸してもらったからって、Bランクのグリフォンは簡単に倒せるモンスターじゃない)
(話を聞いてた限り、アラッド君たちが到着するまで、一人でグリフォンの攻撃を耐えていたんだよね……仮にグリフォンが遊んでいたとしても、あのグリフォンの攻撃はそう簡単に耐えられるものじゃない)
(う~~~~ん…………超謙虚だけど、あれだよね……普通に考えて、結構凄いことしちゃってない?)
クラートは、他の冒険者たちと共にグリフォンの相手をし、その戦いでメインを担っていた、というわけではない。
一人……たった一人で、万が一でも自分が生まれ育った街がグリフォンに襲われない為に、死を覚悟しながらも立ち向かっていた。
(ふふ、そうだろう。クラートは凄いだろう)
クラートに感心するような眼を向ける実力者たちを見て、何故か胸の内で得意気になるディーナ。
当然、実は過去に出会っていたことがある、なんてことはない。
本当にスパリガへ向かう道中で偶々出会い、人柄や実力が気に入ったので臨時パーティーを組んだ。
それだけの存在ではあるが、彼の謙虚な姿勢には少し思うところがあった。
彼女としても、アラッドが凄まじい存在であることは理解しており、戦闘者として明確に自分より上の存在だと認識している。
扱う武器が違ければ、後衛であればタイプが異なるため比べることもないかもしれないが……結局のところ、戦う者たちに必要なのは強さである。
そこに行きついてしまうと、やはりアラッドと比べれば自分は劣っていると感じてしまう。
加えて、クラートの場合はアラッドが命の恩人だと言っても過言ではない。
武器を貸してくれたのにグリフォンの素材まで渡され、自分の装備にすれば良いと伝えられた。
彼にとっては感謝してもしきれない存在…………そんな男が、命の恩人という立場になってしまったからこそ、普段から彼と自分を比べてしまう。
だが、冒険者全体で見れば、クラートは間違いなく平均より上に位置する実力を有している。
謙虚なのは美徳の一つだが、それでも自身の実力は正当に評価しなければ、時に嫌味に変わってしまう。
今回のベテランたちの反応は、クラートにとって良い薬になるとディーナは思った。
ある男性冒険者は、ディーナがブローズという有能な従魔を敢えて自分の傍に置かず、遊撃手として動くように指示してくれたことに感謝の意を示した。
ただ、それはそれとして、強力な従魔を傍に置かなかった三人は大丈夫だったのかという心配もあった。
「あぁ、大丈夫だ。ブローズがいなくとも、私は一人で戦っている訳ではないからな」
ディーナはオルフェンとクラートと共に行動し続けていた。
結果として三人は戦闘中、偶に怪我を負う事はあるが、戦闘不能になるほどのダメージを負うことはなく、最後まで戦い続けた。
「オルフェンとクラートとパーティーを組んでるんだったか」
「そうだ。当たり前だが、訓練場に居る時の二人とは訳が違うぞ」
「い、いや、それは皆さんも同じだと思うので」
クラートはCランクであっても、自分が世間知らずの若者である事を自覚している。
臨時とはいえパーティーを組んでいるディーナに褒められのは嬉しいが、少々恥ずかしさを感じる。
「戦ってる時のクラート、結構キレキレでしたよ」
そこで、比較的ディーナたちの近くで戦っていた若い男性冒険者が会話に参戦し、彼も本気モードになったクラートのことを褒める。
「それは、その……ほら、アラッドさんのお陰だから」
「アラッドって、あのアラッドか?」
「はい、そのアラッドさんです」
話を知らない先輩冒険者に、クラートは自分がどの様にしてアラッドと知り合い、力を貰ったのかを説明。
聞き終えた先輩冒険者は色々と感心すると同時に、アラッドが取った行動に驚かされた。
「話はちょくちょく聞いてるんだが……あれだな。マジで目線が俺らと似た様な感じがするな」
「そうだね。若くてもキレる頭を持ってる子はいるけど、それとはまた別だね」
「達観してるって感じ~~? 精神年齢? ってやつが随分上なのかもしれないね~~」
アラッドは貴族出身ではあるものの、ベテランやベテランに近い者たちは貴族の子供だからといって、多くの者が達観した考え方を持っている訳ではないことを知っている。
だからこそ、ベテラン達からすればその実力よりも考え方の方が異質だと感じた。
「それじゃあ、グリフォンの素材をメインで造った武器を使ってんのか」
「はい、そうなんです。良い装備を使ってるので、寧ろ訓練時よりキレキレで動けないとダメと言いますか」
クラートが言っていることは、確かに間違っていない。
しかし、メインの素材として使われているモンスターのランクが高いと、その分装備の質を引き出すのが難しくなる。
装備車の実力が低ければ半分も引き出せず……武器に至ってはコントロール出来ずに暴走、暴発してしまうことも珍しくはない。
だからこそ、クラートは低姿勢な態度を崩さないが、ベテランたちこそクラートが運良く質の高い装備が手に入り、戦争で活躍出来ている、とは思わない。
(良い武器を貸してもらったからって、Bランクのグリフォンは簡単に倒せるモンスターじゃない)
(話を聞いてた限り、アラッド君たちが到着するまで、一人でグリフォンの攻撃を耐えていたんだよね……仮にグリフォンが遊んでいたとしても、あのグリフォンの攻撃はそう簡単に耐えられるものじゃない)
(う~~~~ん…………超謙虚だけど、あれだよね……普通に考えて、結構凄いことしちゃってない?)
クラートは、他の冒険者たちと共にグリフォンの相手をし、その戦いでメインを担っていた、というわけではない。
一人……たった一人で、万が一でも自分が生まれ育った街がグリフォンに襲われない為に、死を覚悟しながらも立ち向かっていた。
(ふふ、そうだろう。クラートは凄いだろう)
クラートに感心するような眼を向ける実力者たちを見て、何故か胸の内で得意気になるディーナ。
当然、実は過去に出会っていたことがある、なんてことはない。
本当にスパリガへ向かう道中で偶々出会い、人柄や実力が気に入ったので臨時パーティーを組んだ。
それだけの存在ではあるが、彼の謙虚な姿勢には少し思うところがあった。
彼女としても、アラッドが凄まじい存在であることは理解しており、戦闘者として明確に自分より上の存在だと認識している。
扱う武器が違ければ、後衛であればタイプが異なるため比べることもないかもしれないが……結局のところ、戦う者たちに必要なのは強さである。
そこに行きついてしまうと、やはりアラッドと比べれば自分は劣っていると感じてしまう。
加えて、クラートの場合はアラッドが命の恩人だと言っても過言ではない。
武器を貸してくれたのにグリフォンの素材まで渡され、自分の装備にすれば良いと伝えられた。
彼にとっては感謝してもしきれない存在…………そんな男が、命の恩人という立場になってしまったからこそ、普段から彼と自分を比べてしまう。
だが、冒険者全体で見れば、クラートは間違いなく平均より上に位置する実力を有している。
謙虚なのは美徳の一つだが、それでも自身の実力は正当に評価しなければ、時に嫌味に変わってしまう。
今回のベテランたちの反応は、クラートにとって良い薬になるとディーナは思った。
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