スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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千二百七十二話 解らない

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SIDE ディーナ

「っ、ふッ!! セイッ!!!!!」

「がっ!!??」

「ぐふっ!!!!????」

ディーナが振るう薙刀により、一瞬にして二人の戦闘者が死んだ。

しかし、その死体を乗り越えるように次の戦闘者が仕掛けてくる。

(明らかに、昨日よりも……私に向かってくる、者の数が……多いな)

Bランク冒険者の中でも上澄みであるディーナにとっては、特別苦戦するような相手は、今のところ現れてはいない。

それでも戦争という戦場は三百六十度、気の抜けない地獄。
それ故に仕掛けてくる人間の戦闘力が低くとも、少しずつではあるが集中力が削られていく。

加えてディーナと比べれば遠く及ばない実力の持ち主であっても、全てを込めた一撃となれば、ディーナも魔力を消費して対応しなければならない。

「ふッ!! 破ッ!!!!!」

「「「っ!!!!????」」」

そして平均よりも上の実力を有しているクラートだが、ディーナほど余裕を持って戦うことは出来ない。

(人が、人が、止まらないっ!!!)

表面上では上手く戦っている。
やや強力な装備に頼る形にはなっているが、クラートは今こそ変な意地を張るのではなく、強い道具に頼り、そこに自分の力を重ねて振るうべきだと理解している。

ただ、それでも……戦争を始めて二日目。
彼は、目の前のゴリディア帝国の人間たちがここまで必死に自分たちを襲い掛かってくる事実に……困惑していた。

クラートは、騎士ではない。
冒険者として戦う相手は、基本的にモンスターである。
訓練の一環として対人戦を行うことはあるが、それでも本気の殺意を持って行うことはない。

盗賊団の討伐任務は向けたことがある。
ただ、盗賊団はモンスターと同じく、自分を殺そうとする理由があるのだと解る。

しかし……目の前の人間たちが何故、ここまで必死に自分を殺そうとしてくるのか、解らなくなる。

(どうし、て……こんなに、本気でっ!! 俺、だけじゃなくて、ディーナさんや、オルフェンまで、狙ってっ!!!)

実際のところ、クラートも結論は解っている。
この戦いがただの争いではなく、国と国との戦い……国家戦争だからである。

参加することに、意義を感じる者はいるだろう。
これが侵略戦争で、侵略されている側であれば、自分の命を守るためだけではなく、自分の後ろにいる者たちを守るために……奪われたものを取り返すために戦うという明確な目的が生まれる。

だからこそ、相手を全力で殺そうという気持ちが理解できる。

しかし、クラートたちに襲い掛かる者たちの顔には、あまり憎しみや深い感情が込められた怒りなどがない。

本当に、戦う意味というものがあるのか。
クラートは二日目にして、戦争という戦場が現場の人間にとってどれだけある種の沼に引きずり込んでいくのか、理解させられていた。

「ぅおらりゃああああ!!!!!」

「っ、疾ッ!!!!」

「がっ!!??」

「ハッ!!!!!」

「ッッ…………そ、が」

大剣による上段斬りに対し、旋風を纏ったロングソードで対抗。
打ち勝ったのはクラートであり、胴がガラ空きになった隙を逃さず斬撃を叩き込み、また一人斬り伏せた。

「ちぇりゃッ!!!」

「っ!!! ふッ!!!!!」

当然、まだまだクラートたちを狙う戦闘者たちはいる。

先日の戦いでディーナたちは警戒しなければならない冒険者パーティーとして認識された。
となれば、優先的に潰そうとするのは必然。

Bランククラスの冒険者や騎士、魔術師を纏めてぶつけるという選択肢もあるが、先日の戦いで彼女たちの手によってBランク冒険者が殺されている。

戦争となれば多くの実力者が集まるが、それでもBランク冒険者は貴重な存在であり、同等の実力を持つ騎士や魔術師たちも貴重な存在である。

ディーナたちを確実に殺せるのであれば、やむを得ない犠牲と思われたかもしれないが、ディーナにはブローズという強力な従魔がいる。
最悪の場合……ディーナたちを一人も殺せず、Bランク冒険者や騎士たちが全員返り討ちに合う。

そう判断した上層部は、まずは数の力でディーナたちの体力や魔力、集中力や精神力を削ることにした。

その結果、今のところディーナとオルフェンは問題ないものの、クラートには効果抜群となっていた。
体力にも魔力にもまだ余裕はある。
だが、心に余裕がなくなっていた。

「はぁ、はぁ」

上から命令されたから、自分たちよりも強い人物に挑む。
サクリファイスとも呼べる戦術は上の人間たちの意図とは別の形でクラートの心を削っていた。

上から命令されたからこそ、憎しみがなかった。
やらなければらない、ジャイアントキリングを成功させて成り上がってやる……そんな闘志を燃やしながら襲い掛かってくるゴリディア帝国の兵士や冒険者。

その瞳に、自分が憎くて憎くて仕方ないといった殺意が宿っていない。
加えて、クラートにも彼らを心の底から憎いと思う理由が、まだない。

(なん、で……どうして、彼らは)

それでも、体は動く。

解らないという思いは零れるも、それでもクラートは死にたいわけではない。
これまで培ってきた本能が体を動かし、ロングソードを振るい、魔法を発動し……敵の急所を潰す。

戦争という場所は、彼の思いに答えが出るまで待ってくれるような……生温い場所ではない。
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