スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
1,286 / 1,361

千二百八十四話 狂人

しおりを挟む
「あそこか……」

ゴリディア帝国のある男は、ある場所に狙いを定め、集中力を高めていた。

その男はあまり筋肉質な見た目はしていない。
しかし、その右手には……彼の数倍はあるであろう大男を握っていた。

レベルアップによる身体能力の上昇。
これによって見た目だけではその人物の詳細が解らないものの、それでも異質な光景に見える。

「ぶはっはっは!!!! 全力で投げてくれて構わんぞ!!!!!!」

「全力で投げれば、お前が地面に叩きつけられて死ぬ可能性がある」

やや細身の男は、投擲のスペシャリストであった。

その力は、腕力自慢の者たちの投擲が霞むほどのパワー、破壊力、そして技術が備わっている。

当然、物だけではなく人間を投げることも出来る。

「…………いくぞ」

「おぅよ!!!!!」

「ふんっっっっ!!!!!!!!!!!!」

「ーーーーーーーーーーっっっっっ!!!!!」

高速で移動すれば、どうしても空気の抵抗を受ける。

それでも、大男の移動速度はそこら辺の攻撃魔法よりも圧倒的に速く、風矢にも負けていない。

(さて、移動するか)

細身の男は大男を投げ終わると、直ぐに別の位置へと移動する。

狙撃手の位置がバレてしまっては、逆に狙い撃ちされてしまう。
だからこそ、直ぐに移動しなければならず……そもそも戦場の超後方にいる。

そんな位置から大男を投げたにもかかわらず、空中を移動する大男の速度は全く変わらない……どころか、寧ろ加速していた。

(あの投擲が上手くいけば、この戦争の勝ちが近づくと言っていたが、本当にそう上手くいくだろうか…………まぁ、あの男の力をまともに受ければ、大半の者は潰されるだろうが)

ゴリディア帝国側は、まだ捕えれば竜殺したちの弱点になるであろうガルアとルリナの捕獲を諦めていなかった。

加えて、ゴリディア帝国は最悪二人を殺しても構わないと考えていた。

そこで二人が後ろに下がったタイミングで人間投擲を行い、奇襲を仕掛ける。
細身の男はこれまでにも人間を投げた経験は何度もある。
寧ろ盗賊団と戦う時などは投げて投げて投げまくって潰したこともあるため、特に悩むことなく了承した。

細身男……投擲男としては、問題ない仕事ではあるが……投げられる人間からすれば、地獄への片道切符を持たされた状態へ向かうに等しい。

相手側の後方へ投げ飛ばされるということは、周辺に敵味方が入り乱れた状態ではなく、周りに敵しかいない状態。
その上、後方で待機している隊長格の人物たちが直ぐにあつまり、リンチされる可能性が高い。

(上の人間たちはいったいどんな契約を交わしたのか…………いや、あの人間に関しては寧ろ自分で望んだのか?)

投擲男から見て、先ほど投げた大男に死への恐怖は一切感じられなかった。

投擲男は冒険者として活動しており、人間には様々なタイプがいることを知っており、世の中にはあぁいった人間がいることも知っていた。

(……そこは、俺が考えても致し方ないことだな)

予定の位置に到着した投擲男はアイテムバッグから爆発の効果が付与された槍を取り出し、標的の位置を確認し……ロックオン。

「………………ふんっっっっ!!!!!!!!!」

一球……一槍入魂。

今度の武器は着弾した瞬間に壊れてしまっても構わないため、投擲男はその後を考えることなく全力でぶん投げ……その後、また別の場所へと移動するのだった。








「だっはっは!!!! さぁ、どいつだ!!!!!!」

(この男、正気か!!!!????)

何故、いきなり敵国の男が現れたのか。
それに関してはある程度予想が立てられる。

しかし、先輩騎士からすればあまりにも不合理であった。

飛んできたのは一人だけ。
複数人いなければ、目的を達成しても生き残れる可能性は限りなく低い。

(いや、そうか……狂人の、類か)

即座に頭を冷やし、目の前の男がどういった類の人間なのか見極める。

そして……躊躇うことなく、全力で斬りかかる。

「疾ッッ!!!!」

「ははっ!! 元気だな!!!! だが、お前では、ないだろうッ!!!!」

大男が受けている名は、ガルアとルリナという双子の始末。

大男しては殺意全開で斬りかかってきた騎士と戦り合っても良いのだが、まずは目的を達成しなければならない。

彼は先輩騎士の推察通り、狂人の類である。
だが、上から受けた命を忘れるほど鳥頭ではなく、つまみ食いしていてその命を達成できるとも思っていなかった。

「お前の目的が、何であろうと、僕がお前を殺さない、理由になると思うか!!!!!!!!」

敢えて、大男の目的を知らないふりをしながらも、先輩騎士はロングソードに流水を纏って斬撃を繰り返す。

殺意に戦意、そして怒気。
それらの感情がミックスされた圧は、大男にとっての闘争心を燃え上がらせる。

(クソがっ!!!! 滾らせてくれるじゃないか!!!!!!!!!!)

命は受けている。
ただ……所詮、男は冒険者。
そして狂人。

最高のブレンドが施された圧を受け、更に周囲の若造たちが放つ殺気も心地良い。

そのため、大男はターゲットだけを殺すのではなく、この場にいる全員を始末することに決めた。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約

Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。 腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。 地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。 彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。 「死んで、私の影になれ」 彼女は知っていた。 この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。 そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。 これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。

【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」 「それは良いですわね、勇者様!」 勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。 隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。 毎日の暴行。 さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。 最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。 今までの行いを、後悔させてあげる--

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る

丸三(まるぞう)
ファンタジー
中世近世史を研究する大学講師だった男は、過労の末に倒れ、戦国時代へと転生する。 目覚めた先は、近江・長浜城。 自らの父は、豊臣秀吉の弟にして政権の屋台骨――豊臣秀長。 史実では若くして病没し、豊臣政権はやがて崩れ、徳川の時代が訪れる。 そして日本は鎖国へと向かい、発展の機会を失う。 「この未来だけは、変える」 冷静で現実主義の転生者は、武ではなく制度と経済で歴史を動かすことを選ぶ。 秀長を生かし、秀吉を支え、徳川を排し、戦国を“戦”ではなく“国家設計”で終わらせるために。 これは、剣ではなく政で天下を取る男の物語。 「民が富めば国は栄え、国が栄えれば戦は不要となる」 豊臣政権完成を目指す、戦国転生・内政英雄譚。 ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...