スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
1,300 / 1,361

千二百九十八話 セオリー外へ

しおりを挟む
「っ、一部の……冒険者たちが左の戦場へ向かおうとしてる」

「っ!! 解った!!!」

クラートはやや離れた場所にいる敵の動きに変化があることを把握し、自身も下がって同じ部隊の仲間たちに情報を提供。

「行っても問題ないよな!!!」

ディーナの圧倒的な実力、破壊力を見た後では心配など必要ないことは解りつつも、それでも彼女やクラートたちの身を案じる。

「……問題ないかは解らない。ただ、今よりも荒れてしまう」

「荒れる? っ!!!!!?????」

直後、宙から何かが飛来した。

「ふぅーーーーー、なるほどな……こりゃ不味いな」

現れた人物は……巨人族の男。

巨人族は平均身長が二メートル半を越えており、文字通り巨人。
これまでにも戦場ではちらほら見かけられていたが……それでもクラート以外の者たちも解る。

先程、一斉に現れた強者たちよりも、更に上の猛者であると。

「早く」

「っ、おう!!!! 聞いたな、お前ら!!!」

クラートと男の会話は他のメンツにも伝わっており、約十名ほどが一時的に別の戦場へと移る。

確かにディーナや現在のクラート、オルフェンからすればそこまで気にするほどの敵ではない。
しかし、同レベルの兵士や冒険者たちは、彼女たちの味方側にもいる。

守れるところは守る。
騎士としては勝つことと同じぐらい大事なこと。

加えて、ディーナがいる周辺の冒険者たちが別の戦場へ移ろうとしているという情報も、他の部隊と共有しておかなければならない。

(絶対に死ぬんじゃねぇぞ!!!)

駆け出す彼らを見て……巨人族の男は見向きもしなかった。

「随分と暴れてくれたな」

「……あなたがもう少し早く出てきていれば、こうはなっていなかったでしょう」

「バッハッハ!!!!! それを言われてしまうと痛いな…………ふっ……敵でなければ、もっと話してみたいところだが、そうもいかん」

一目で解った。
目の前の鬼人族は強い……ただ強いだけではなく、特別強い。

従魔であろうドラゴンなのか虎なのか解らない存在も、人族と獣人族の青年も……特別であると巨人族の男、ビガルは瞬時に全てを把握した。

(こんなパーティーがいたんだな…………なら、しゃあないな)

先程まで周辺にいた騎士たちやディーナが感じ取った通り、巨人族のビガルは強い。
それは間違いないのだが……それでも、覇爪を装備したディーナにクラート、オルフェン……虎竜ブローズまで相手をするのは、さすがに荷が重い。

「……そうだな」

「じゃから、先に謝っておこう……すまんな、強気戦士たちよ」

それでも、叶うことなら正々堂々と……真正面から戦いたかった。

だが、負けてはならない。
戦争というものに参加する以上、ビガルは負けても構わないという思いで戦うつもりはない。

だから……先にディーナたちにすまないと告げ、口に詰めていた薬を飲みこんだ。

「っっっ!!!!! ッ、ゴォオオオオオオオオアアアアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ッッッッ!!!!!!!!!!」

「「「「ーーーーーーーッッッ!!!!!!!」」」」

大地を、大気を揺るがす巨人の咆哮。

味方の士気を高め、的には絶望を与える。
そんな雄叫びが……ビガルからだけではなく、他の複数の戦場からも聞こえてくる。

(先ほどよりも強い者たちが投入された……というだけではなさそうだ、なっ!!!!????)

決して……決して、油断していたわけではない。
ほんの少しだけ他の戦場に意識を奪われはしたものの、視線はビガルから話していなかった。

だが、それでも眼を見開くほどの速さで距離を詰め、大斧が振り下ろされた。

(これが、巨人族の速さか!!!!???)

ダンジョンで武者修行をしていた際に、巨人族と共に戦った経験があり、おおよそではあるがその特徴は把握していた。

パワーは鬼人族や竜人族に負けておらず……寧ろ、渾身の一撃を真正面から受ければ、そのまま粉砕される可能性が高い。
しかし、見た目通りスピードがない。

そんなディーナの印象は間違っておらず、それが巨人族のセオリーである。

「オオオオオオオオッッッ!!!!!!!!」

「っ!!! 普通じゃ、ない」

「……そのようだね」

ビガルにとっては、狙うのはディーナだけでなくて構わない。

人族の青年でも、獣人族の青年……よく解らない従魔でも構わない。
振るわれる大斧は、彼らを容易に斬り裂く。

オルフェンはビガルの変化、身体能力に驚きを隠せないものの、それでもまずはあの斬撃を食らってはいけないと、避けることに専念する。

クラートには明鏡止水があり、驚きや焦りが……表面に出ていなかった。
冷静に分析し、把握し……オルフェンと同じ考えに至る。

あの男の一撃は、自分たちが食らってはならない。
食らえばそれだけでディーナの足を引っ張ってしまう。

そして……自分たちの攻撃は、おそらくあの巨人族に通じない。
その事実を二人は冷静に、現実として受け止める。

(……それでも、いる意味はある)

幸いにも、どうやら巨人族の標的はディーナだけではない。

となれば、的に……囮となれる。

彼女は、本当に頼れる仲間であり、クラートたちの中で一番の強者である。
それでも……不死身ではない。

加えて、彼女が死ぬ可能性が浮かんだ以上、自分の命可愛さに激戦地から離れるなど……彼らの本能が、心が許さなかった。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約

Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。 腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。 地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。 彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。 「死んで、私の影になれ」 彼女は知っていた。 この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。 そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。 これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。

【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」 「それは良いですわね、勇者様!」 勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。 隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。 毎日の暴行。 さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。 最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。 今までの行いを、後悔させてあげる--

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る

丸三(まるぞう)
ファンタジー
中世近世史を研究する大学講師だった男は、過労の末に倒れ、戦国時代へと転生する。 目覚めた先は、近江・長浜城。 自らの父は、豊臣秀吉の弟にして政権の屋台骨――豊臣秀長。 史実では若くして病没し、豊臣政権はやがて崩れ、徳川の時代が訪れる。 そして日本は鎖国へと向かい、発展の機会を失う。 「この未来だけは、変える」 冷静で現実主義の転生者は、武ではなく制度と経済で歴史を動かすことを選ぶ。 秀長を生かし、秀吉を支え、徳川を排し、戦国を“戦”ではなく“国家設計”で終わらせるために。 これは、剣ではなく政で天下を取る男の物語。 「民が富めば国は栄え、国が栄えれば戦は不要となる」 豊臣政権完成を目指す、戦国転生・内政英雄譚。 ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...