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千三百八十話 土台は揃ってる
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「対処法……僕も、アラッドと同じにしようかな」
逃げ場はない祝勝会で、狙われるであろうスティームは、上手く躱すための対処法として、自分もアラッドと同じにしようかと考える。
「俺と同じか。それなら、赤雷は使わない状態で、ということか」
「そういう事になるね」
スティームの強さは色の付いた魔力、赤雷だけではない。
双剣士としての技量は高く、アラッドと共に冒険する中で更に磨かれていた。
それにともない、通常の雷に関しても威力等が上昇している。
「良いんじゃないか。その条件だけでも、挑もうと考える者は減るはずだ」
(…………どうだろう。スティームなら、と考える人は……いるかもしれない)
アラッドを不快にするであることは解り切っているため、ラディアは喉からその言葉を口に出すことはなかった。
スティームはアラッドのパーティーで活動しているメンバーの一人で、役割はリーダーと同じくアタッカー。
しかし、アラッドと比べてどうしても核が落ちる。
勿論、アラッドと共に活動を始めてから、スティームは着実に功績を積み重ねており、冒険者ギルドの評価も右肩上がりに上がっている。
ただ……同じパーティーのアラッドが、あまりにも強く、積み重ねている功績もぶっ飛んでいた。
それもあり、どこかスティームの力を正確に把握できていない者たちがちらほらといる。
赤雷を知っている者がいたとしても、それを使わない状態であれば自分でも勝てるだろうと思ってしまう。
(全然、そんなことはないけど)
当然、ラディアは解っている。
スティームは決して赤雷だけの双剣士ではないと。
万雷を使わずとも、十分すぎる戦闘力を有している。
(それを女性たちが……貴族たちが、どこまで理解しているか…………まぁ、私には関係ないことね)
それに関してはラディアがどう動いたとしても、助けることはできなかった。
「スティームに一目惚れした女性がいれば、話は別かもしれないがな」
「……そういう事は、起こらないと思うけどね」
(…………なんか、自己評価が低くなってないか? これも俺が傍にいる影響なのか?)
半分正解、半分ハズレであった。
アラッドが尋常ではなく優れた戦闘者であるからこそ、自分なんかがと思ってしまうところは確かにある。
しかし、今回の様な内容に関しては、スティーム生来の謙虚さ故の反応だった。
「俺はいてもおかしくないと思うから、油断はするなよ」
「そうだね……うん。油断はしないでおくよ。けど、土台があるならまだしも、そういった経験がない方だと、非常に難しいというか険しい道になるよね」
謙虚さはあれど、戦闘者全体を見渡せば、自分は間違いなく強者に分類されるという自信はあった。
事実、年齢にもよるが、ゼロからスタートして赤雷を使わないスティームに勝とうとするのは、難しいどころの話ではない。
基本的に不可能に近くはある……不可能に近いのだが、それと同時に基本的に可能性はゼロではないとも言える。
「険しくはあると思うが、貴族令嬢……もしくは王族であれば、受け継がれてきた肉体や魔力、才能といった点ではある意味土台が揃ってるとは言えるぞ」
「それは……そうかもしれないね。けど、さすがに王族からアプローチがくることはないと思うんだけど」
「…………社交界に関しては俺もあまり経験がないから偉そうなことは言えないが、戦いや冒険と同じであり得ないと思うようなことが意外と起こったりするものなんじゃないか」
アラッドの言葉にラディアや薄っすらと聞き耳を立てていた、社交界の話に詳しい従業員などが小さく頷いていた。
「……はぁ~~~~~。そう考えると…………うん、でも仕方ないもんね」
喉から出かかった言葉を引っ込めるスティーム。
さすがに祝勝会に出席するのが面倒という言葉は、軽々しく口にしてはならなかった。
「そういう事だ」
これに関しては、アラッドも同じく明確に口に出すことは出来ない。
(冒険者として活動しているだけ、まだ良いと考えるべきだろうな)
これが騎士であれば、更にガチガチに縛られることとなる。
多くの騎士団では、やはりアラッドを騎士団に入団させるべきではないかという声が上がっていた。
ただ……少なくとも、アラッドのことをある程度知っている、理解している晴嵐騎士団団長のルメス、剛竜騎士団団長のロードスが反対していることで、バカが暴走する気配は今のところ見えない。
その主な理由として、アラッド自身の反発という重要な点と同じく、明確に冒険者ギルドと対立してしまう可能性を危惧している。
彼が侯爵家の令息であり、騎士の爵位を持っているという事実は変わらないが、それと同時に現在所属している組織は冒険者ギルドである。
アラッドは既に冒険者ギルドにとって非常に大きく、それでいて頼りになる存在として認識している。
馬車馬の如く利用しようとは考えてないものの、有事の際に活躍してくる貴重な戦力とは思っている。
ただ荒くれ者たちを纏める組織と侮るなかれ。
繋がり……コネクションといった点に関しては、個々の騎士団だけではどう足掻いても敵わない。
戦争が起こったとしても、勝利の保証はどこにもない。
それが、冒険者ギルドである。
「っと、纏まってきたか?」
メイン三人の方に視線を向けると、ひとまず候補にした正装を身に着けたディーナたちがいた。
逃げ場はない祝勝会で、狙われるであろうスティームは、上手く躱すための対処法として、自分もアラッドと同じにしようかと考える。
「俺と同じか。それなら、赤雷は使わない状態で、ということか」
「そういう事になるね」
スティームの強さは色の付いた魔力、赤雷だけではない。
双剣士としての技量は高く、アラッドと共に冒険する中で更に磨かれていた。
それにともない、通常の雷に関しても威力等が上昇している。
「良いんじゃないか。その条件だけでも、挑もうと考える者は減るはずだ」
(…………どうだろう。スティームなら、と考える人は……いるかもしれない)
アラッドを不快にするであることは解り切っているため、ラディアは喉からその言葉を口に出すことはなかった。
スティームはアラッドのパーティーで活動しているメンバーの一人で、役割はリーダーと同じくアタッカー。
しかし、アラッドと比べてどうしても核が落ちる。
勿論、アラッドと共に活動を始めてから、スティームは着実に功績を積み重ねており、冒険者ギルドの評価も右肩上がりに上がっている。
ただ……同じパーティーのアラッドが、あまりにも強く、積み重ねている功績もぶっ飛んでいた。
それもあり、どこかスティームの力を正確に把握できていない者たちがちらほらといる。
赤雷を知っている者がいたとしても、それを使わない状態であれば自分でも勝てるだろうと思ってしまう。
(全然、そんなことはないけど)
当然、ラディアは解っている。
スティームは決して赤雷だけの双剣士ではないと。
万雷を使わずとも、十分すぎる戦闘力を有している。
(それを女性たちが……貴族たちが、どこまで理解しているか…………まぁ、私には関係ないことね)
それに関してはラディアがどう動いたとしても、助けることはできなかった。
「スティームに一目惚れした女性がいれば、話は別かもしれないがな」
「……そういう事は、起こらないと思うけどね」
(…………なんか、自己評価が低くなってないか? これも俺が傍にいる影響なのか?)
半分正解、半分ハズレであった。
アラッドが尋常ではなく優れた戦闘者であるからこそ、自分なんかがと思ってしまうところは確かにある。
しかし、今回の様な内容に関しては、スティーム生来の謙虚さ故の反応だった。
「俺はいてもおかしくないと思うから、油断はするなよ」
「そうだね……うん。油断はしないでおくよ。けど、土台があるならまだしも、そういった経験がない方だと、非常に難しいというか険しい道になるよね」
謙虚さはあれど、戦闘者全体を見渡せば、自分は間違いなく強者に分類されるという自信はあった。
事実、年齢にもよるが、ゼロからスタートして赤雷を使わないスティームに勝とうとするのは、難しいどころの話ではない。
基本的に不可能に近くはある……不可能に近いのだが、それと同時に基本的に可能性はゼロではないとも言える。
「険しくはあると思うが、貴族令嬢……もしくは王族であれば、受け継がれてきた肉体や魔力、才能といった点ではある意味土台が揃ってるとは言えるぞ」
「それは……そうかもしれないね。けど、さすがに王族からアプローチがくることはないと思うんだけど」
「…………社交界に関しては俺もあまり経験がないから偉そうなことは言えないが、戦いや冒険と同じであり得ないと思うようなことが意外と起こったりするものなんじゃないか」
アラッドの言葉にラディアや薄っすらと聞き耳を立てていた、社交界の話に詳しい従業員などが小さく頷いていた。
「……はぁ~~~~~。そう考えると…………うん、でも仕方ないもんね」
喉から出かかった言葉を引っ込めるスティーム。
さすがに祝勝会に出席するのが面倒という言葉は、軽々しく口にしてはならなかった。
「そういう事だ」
これに関しては、アラッドも同じく明確に口に出すことは出来ない。
(冒険者として活動しているだけ、まだ良いと考えるべきだろうな)
これが騎士であれば、更にガチガチに縛られることとなる。
多くの騎士団では、やはりアラッドを騎士団に入団させるべきではないかという声が上がっていた。
ただ……少なくとも、アラッドのことをある程度知っている、理解している晴嵐騎士団団長のルメス、剛竜騎士団団長のロードスが反対していることで、バカが暴走する気配は今のところ見えない。
その主な理由として、アラッド自身の反発という重要な点と同じく、明確に冒険者ギルドと対立してしまう可能性を危惧している。
彼が侯爵家の令息であり、騎士の爵位を持っているという事実は変わらないが、それと同時に現在所属している組織は冒険者ギルドである。
アラッドは既に冒険者ギルドにとって非常に大きく、それでいて頼りになる存在として認識している。
馬車馬の如く利用しようとは考えてないものの、有事の際に活躍してくる貴重な戦力とは思っている。
ただ荒くれ者たちを纏める組織と侮るなかれ。
繋がり……コネクションといった点に関しては、個々の騎士団だけではどう足掻いても敵わない。
戦争が起こったとしても、勝利の保証はどこにもない。
それが、冒険者ギルドである。
「っと、纏まってきたか?」
メイン三人の方に視線を向けると、ひとまず候補にした正装を身に着けたディーナたちがいた。
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