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百十八話 有無を言わせない表情
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アラッドとフールが目指す場所はお茶会に参加する八人の令嬢と令息の中で、一番爵位が高いグスタフ公爵の領で行われる。
パーシブル家から果てしなく遠いという訳ではないが、それでもそれなりの時間が掛かってしまう。
それ故に、道中でモンスターや盗賊に襲われることもしばしば。
「アラッド、中で待っていなさい」
盗賊が襲ってきた際に、フールはアラッドを馬車の中から一歩も出そうとしなかった。
アラッドとしては実際の盗賊。そして盗賊相手にフールや騎士たちがどの様に戦うのか気になっていたが、フールの普段の柔らかい雰囲気と違い、厳しい表情に変わる様子を見て何も意見出来なかった。
ただ、盗賊を倒し終えた後であれば馬車の外に出ることを許可されたので、実際に盗賊たちが自分たちを襲い、フールたちの手に寄って倒された後……その光景を見た。
「……うっ」
血の匂いには慣れている。
今までモンスターを何十体、百体以上は確実に殺しているので死体の匂いには慣れている筈。
なのに、馬車から降りると死体から発せられる匂いに思わず鼻を摘まんだ。
「大丈夫ですか、アラッド様」
「…………大丈夫だ。慣れた」
「あの、無理に慣れなくても大丈夫だと思いますが」
一般人とは環境が違う貴族の令息であったとしても、死体の匂いに慣れている子は殆どいない。
「いや、問題無い。どうせこういった場面に遭遇することが多くなる。今のうちに慣れておいて損はない」
「……流石アラッド様ですね」
「褒めても何も出ないぞ」
死体は一応地面に埋められ、疫病などの原因にならないようにする。
徐々に人の死体から放たれる独特な匂いは薄れていったが、無意識に疑問が口から漏れた。
「なんで、人の死体はモンスターの死体と違って、匂いが少し違うんだろうな」
「それは私たちが同じ人だからではないでしょうか」
他の騎士や兵士が死体処理をしている間、別の盗賊やモンスターが襲ってこないか見張りをしている兵士が答えた。
「そういう……ものなのか?」
「えぇ、そういうものだと思いますよ。盗賊の様な輩と断じて同じ括りにされたくはありませんが、生物の分類上……同じ人ではあります」
当たり前だが、パーシブル家に仕える騎士の男は盗賊と同じ種族と思われたくないが、客観的に種族は同じ人族。
それは残念ながら変えられない部分だった。
「凄く個人的な感覚ではありますが、やはりモンスターは私たちとかけ離れた種族ですが、盗賊は生物の分類上では同じ人。心では問題無いと割り切っていても本能が揺らいでしまうのかもしれません」
「なるほど……凄く、納得出来る理由だ。ありがとう」
「いえいえ、私的な意見ですがそう言ってもらえると嬉しいです」
心では問題無いと割り切っていても、本能が揺らいでしまう。
騎士から教えてもらったその言葉がアラッドの胸に残った。
(確かにそういうものか……であれば、匂いに慣れていたとしても殺した時の感覚でまたこんな気分になるのか?)
今回襲ってきた盗賊たちは正真正銘の屑たち。
特に同情する余地がない者たちだが、そんな屑たちの血の匂いを嗅いでアラッドは少し気分が悪くなり、胸にモヤモヤが残った。
(……こんな感情、こいつらに対して持つ意味はない。早急に捨てたいところだが……一番手っ取り早いのは、俺が直接盗賊を殺すことか。でも、それはまだ父さんが許さないだろうな)
道中、モンスターが襲ってきた時はアラッドの参戦に口を出さなかった。
しかし相手が盗賊だと有無を言わせない表情に変わり、馬車から降りて参戦した。
(個人的には早めに乗り越えたい壁というか障害だが……さすがに直ぐ良いターゲットが見つかることはない、か)
そもそも現在、アラッドはまだ街の外でクロと二人だけで行動することは出来ないので、とんでもない偶然が起こらない限りは直ぐに壁を乗り越えるチャンスは訪れない。
パーシブル家から果てしなく遠いという訳ではないが、それでもそれなりの時間が掛かってしまう。
それ故に、道中でモンスターや盗賊に襲われることもしばしば。
「アラッド、中で待っていなさい」
盗賊が襲ってきた際に、フールはアラッドを馬車の中から一歩も出そうとしなかった。
アラッドとしては実際の盗賊。そして盗賊相手にフールや騎士たちがどの様に戦うのか気になっていたが、フールの普段の柔らかい雰囲気と違い、厳しい表情に変わる様子を見て何も意見出来なかった。
ただ、盗賊を倒し終えた後であれば馬車の外に出ることを許可されたので、実際に盗賊たちが自分たちを襲い、フールたちの手に寄って倒された後……その光景を見た。
「……うっ」
血の匂いには慣れている。
今までモンスターを何十体、百体以上は確実に殺しているので死体の匂いには慣れている筈。
なのに、馬車から降りると死体から発せられる匂いに思わず鼻を摘まんだ。
「大丈夫ですか、アラッド様」
「…………大丈夫だ。慣れた」
「あの、無理に慣れなくても大丈夫だと思いますが」
一般人とは環境が違う貴族の令息であったとしても、死体の匂いに慣れている子は殆どいない。
「いや、問題無い。どうせこういった場面に遭遇することが多くなる。今のうちに慣れておいて損はない」
「……流石アラッド様ですね」
「褒めても何も出ないぞ」
死体は一応地面に埋められ、疫病などの原因にならないようにする。
徐々に人の死体から放たれる独特な匂いは薄れていったが、無意識に疑問が口から漏れた。
「なんで、人の死体はモンスターの死体と違って、匂いが少し違うんだろうな」
「それは私たちが同じ人だからではないでしょうか」
他の騎士や兵士が死体処理をしている間、別の盗賊やモンスターが襲ってこないか見張りをしている兵士が答えた。
「そういう……ものなのか?」
「えぇ、そういうものだと思いますよ。盗賊の様な輩と断じて同じ括りにされたくはありませんが、生物の分類上……同じ人ではあります」
当たり前だが、パーシブル家に仕える騎士の男は盗賊と同じ種族と思われたくないが、客観的に種族は同じ人族。
それは残念ながら変えられない部分だった。
「凄く個人的な感覚ではありますが、やはりモンスターは私たちとかけ離れた種族ですが、盗賊は生物の分類上では同じ人。心では問題無いと割り切っていても本能が揺らいでしまうのかもしれません」
「なるほど……凄く、納得出来る理由だ。ありがとう」
「いえいえ、私的な意見ですがそう言ってもらえると嬉しいです」
心では問題無いと割り切っていても、本能が揺らいでしまう。
騎士から教えてもらったその言葉がアラッドの胸に残った。
(確かにそういうものか……であれば、匂いに慣れていたとしても殺した時の感覚でまたこんな気分になるのか?)
今回襲ってきた盗賊たちは正真正銘の屑たち。
特に同情する余地がない者たちだが、そんな屑たちの血の匂いを嗅いでアラッドは少し気分が悪くなり、胸にモヤモヤが残った。
(……こんな感情、こいつらに対して持つ意味はない。早急に捨てたいところだが……一番手っ取り早いのは、俺が直接盗賊を殺すことか。でも、それはまだ父さんが許さないだろうな)
道中、モンスターが襲ってきた時はアラッドの参戦に口を出さなかった。
しかし相手が盗賊だと有無を言わせない表情に変わり、馬車から降りて参戦した。
(個人的には早めに乗り越えたい壁というか障害だが……さすがに直ぐ良いターゲットが見つかることはない、か)
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