207 / 1,361
二百七話 もっと上手く殺るには
しおりを挟む
(……もっと、殺し方を上手くならないと駄目だな)
バイアードとの模擬戦を終え、それからは日が落ちるまでモンスターを狩り続け、レイ嬢との最後の夕食を食べ……アラッドは部屋の中でちょっと物騒なことを考えていた。
いつもと変わらずポーションを造りながらそんなことを考えているので、かなりヤバい人に思われるかもしれないが……糸を使って大したダメージを与えられなかったアラッドとしては重要問題だった。
「アラッド様、随分と悩ましい顔になっておりますが……大丈夫ですか」
「ん? そんな顔になってたか」
「はい、そうですね。付け加えるなら、ちょっと殺気が漏れていました」
「おっと、それはすまん」
「いえいえ、大丈夫です」
体から零れていた殺気は誰かに向けたものではない。
ただ、いきなりアラッドから殺気が零れ、ガルシアたちは一瞬ビクッと体が震えた。
「何か悩みごとがあるなら、相談に乗りますよ」
「わ、私も……お役に立てるかは分かりませんが」
「ありがとな、ガルシア。シーリア……別に悩んでるって訳じゃないけど、もうちょっと上手く殺せる方法というか……殺し方を上手くならないなと思って」
「「「「えっ」」」」
アラッドの口から出たまさかのセリフに、全員が固まった。
どう考えても、自分たちが相談に乗れる内容ではない……のだが、なんだかんだで一番冷静なダリアがアラッドの言葉を一番先に理解した。
「えっと、もっと糸の使い方を上手くなりたいってことっすか?」
「あぁ、そういうことだ」
正しい内容を聞くことが出来、他三人はホッと胸をなでおろした。
「今回の模擬戦ではうっかりがあったらいけないから、全力は出しても……糸は使わないようにって考えてた」
普段モンスターと戦っている時も、武器や魔法を使って倒す……もしくは糸で倒す。
その三通りで倒すことが多い。
まず……三つの力を全て同時に使って倒すことはない。
だが、バイアードとの戦いでは武器と魔法だけではどうやっても有効打を与えられない……それどころか、内容だけ見れば良い勝負ですらない。
そう思い……糸をフルに使うために意識的に振り切り、本気の全力で挑んだ。
「でも、それじゃバイアード様には良い攻撃を一つも当てられないと思った。だから……大丈夫だろうという思いもあって、糸を使ったんだ。結局ボロ負けだったけどな」
「いや、アラッド様。そんなことないっすよ。バイアード様も言ってたっすけど、新人の騎士ならあそこまで戦えないっすからね」
「魔法専門ですが、ダリアと同意見です。そもそも、新人の騎士と国に仕え始めたばかりの魔法使いが組んだとしても、あそこまでバイアード様と戦えません。アラッド様の力があるからこそ、あそこまで激しい戦いになったのだと思います」
「……褒めてくれるのは嬉しいが、それでも負けは負けだ。本気で殺すつもりで戦って……結局は掠り傷をいくつか与えられただけ。ボロ負けと変わらない」
モニカからすれば、ロングソードを使いながら適所適所で攻撃魔法や妨害魔法を使い、更には糸まで操っていた。
モニカも最近は武器の方も頑張ろうと特訓しているが、武器と魔法を同時に使う。
その難しさが頑張れば頑張るほど身に染みて解る。
それはダリアも同じであり、そこに糸という第三の武器まで加えて……脳が焼き切れないのか心配になる。
「やっぱり糸で殺るには、それなりの動きがあると思うんだ。いや、もっと言えばタイミングも完璧じゃないよな。つっても…………いや、止めとこう」
現段階であれば、バイアードよりも実力が上であるフールに空いた時間に本気の自分と戦ってもらおうかと一瞬思ったが、自分にフールが訓練を付けているとバレると……どう考えてもドラングの怒りと嫉妬心が爆発する。
(……手探りで頑張ってくしかないか)
さすがに糸を使った暗殺の師はいないので、糸だけに関しては自分でなんとかするしかなかった。
バイアードとの模擬戦を終え、それからは日が落ちるまでモンスターを狩り続け、レイ嬢との最後の夕食を食べ……アラッドは部屋の中でちょっと物騒なことを考えていた。
いつもと変わらずポーションを造りながらそんなことを考えているので、かなりヤバい人に思われるかもしれないが……糸を使って大したダメージを与えられなかったアラッドとしては重要問題だった。
「アラッド様、随分と悩ましい顔になっておりますが……大丈夫ですか」
「ん? そんな顔になってたか」
「はい、そうですね。付け加えるなら、ちょっと殺気が漏れていました」
「おっと、それはすまん」
「いえいえ、大丈夫です」
体から零れていた殺気は誰かに向けたものではない。
ただ、いきなりアラッドから殺気が零れ、ガルシアたちは一瞬ビクッと体が震えた。
「何か悩みごとがあるなら、相談に乗りますよ」
「わ、私も……お役に立てるかは分かりませんが」
「ありがとな、ガルシア。シーリア……別に悩んでるって訳じゃないけど、もうちょっと上手く殺せる方法というか……殺し方を上手くならないなと思って」
「「「「えっ」」」」
アラッドの口から出たまさかのセリフに、全員が固まった。
どう考えても、自分たちが相談に乗れる内容ではない……のだが、なんだかんだで一番冷静なダリアがアラッドの言葉を一番先に理解した。
「えっと、もっと糸の使い方を上手くなりたいってことっすか?」
「あぁ、そういうことだ」
正しい内容を聞くことが出来、他三人はホッと胸をなでおろした。
「今回の模擬戦ではうっかりがあったらいけないから、全力は出しても……糸は使わないようにって考えてた」
普段モンスターと戦っている時も、武器や魔法を使って倒す……もしくは糸で倒す。
その三通りで倒すことが多い。
まず……三つの力を全て同時に使って倒すことはない。
だが、バイアードとの戦いでは武器と魔法だけではどうやっても有効打を与えられない……それどころか、内容だけ見れば良い勝負ですらない。
そう思い……糸をフルに使うために意識的に振り切り、本気の全力で挑んだ。
「でも、それじゃバイアード様には良い攻撃を一つも当てられないと思った。だから……大丈夫だろうという思いもあって、糸を使ったんだ。結局ボロ負けだったけどな」
「いや、アラッド様。そんなことないっすよ。バイアード様も言ってたっすけど、新人の騎士ならあそこまで戦えないっすからね」
「魔法専門ですが、ダリアと同意見です。そもそも、新人の騎士と国に仕え始めたばかりの魔法使いが組んだとしても、あそこまでバイアード様と戦えません。アラッド様の力があるからこそ、あそこまで激しい戦いになったのだと思います」
「……褒めてくれるのは嬉しいが、それでも負けは負けだ。本気で殺すつもりで戦って……結局は掠り傷をいくつか与えられただけ。ボロ負けと変わらない」
モニカからすれば、ロングソードを使いながら適所適所で攻撃魔法や妨害魔法を使い、更には糸まで操っていた。
モニカも最近は武器の方も頑張ろうと特訓しているが、武器と魔法を同時に使う。
その難しさが頑張れば頑張るほど身に染みて解る。
それはダリアも同じであり、そこに糸という第三の武器まで加えて……脳が焼き切れないのか心配になる。
「やっぱり糸で殺るには、それなりの動きがあると思うんだ。いや、もっと言えばタイミングも完璧じゃないよな。つっても…………いや、止めとこう」
現段階であれば、バイアードよりも実力が上であるフールに空いた時間に本気の自分と戦ってもらおうかと一瞬思ったが、自分にフールが訓練を付けているとバレると……どう考えてもドラングの怒りと嫉妬心が爆発する。
(……手探りで頑張ってくしかないか)
さすがに糸を使った暗殺の師はいないので、糸だけに関しては自分でなんとかするしかなかった。
372
あなたにおすすめの小説
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約
Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。
腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。
地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。
彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。
「死んで、私の影になれ」
彼女は知っていた。
この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。
そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。
これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。
凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」
「それは良いですわね、勇者様!」
勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。
隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。
毎日の暴行。
さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。
最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。
今までの行いを、後悔させてあげる--
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる